その日の夕方、テレビ各局のニュース番組で、峰子の会見の様子が放送されて話題になった。
どの番組でも、好意的な意見と共に取り上げられ、ミス日本の衝撃的な告白と決意が、センセーショナルに報じられた。
同時に、ストーキング行為・ストーカーについての解説もされて、その問題点も語られ、多くの視聴者の知る処となって行った。
欧米の事情に詳しい評論家たちが、ストーカーの危険性などを強調して語ったりしていた。
国会議員たちが党派を超えて、今、ストーカーを規制する法案作りや、世界でどんな対応がされているか等の勉強会をしている事も、話題に上がった。
会見が終わると峰子は、一旦、祐二と森川と共に新聞社のハイヤーで、柴田弁護士法律事務所に行き、今後の打ち合わせをした。
そこに、柴田正彦から峰子に電話が掛かってきた。
法務大臣からの電話に驚いて、森川が言った。
「えっ!強っ!」
正彦は予め、会見後に峰子がそこに寄ると、義之から聞いていたのだ。
「峰子ちゃん、記者会見感動したよ。お疲れさん。」
「ありがとうございます。お蔭様で無事に終える事が出来ました。」
「良かったよ。それで義之とも相談したんだが、今後、峰子ちゃんへ志事の依頼がどんどん来ると予想される。その規模になると、もう個人での対応は難しいんだよ。そこで今後は峰子ちゃんをマネジメントする所が必要だと思うんだ。私の知り合いで芸能人や講演家の所属する事務所があって、紹介したいのだが、どうだろう?」
「えっ!いいんですか?それはとても有難いお話です。」
「そこの社長は義之の同級生じゃから、そこで会って話をするといい。」
「それでは申し訳ないので、私の方から伺いますよ。」
「いやいや、峰子ちゃん。今は一人で行動しちゃ駄目だよ。」
電話はハンズフリーにしてあり、皆で会話を共有していたので、義之が笑いながら言った。
「峰子さん、そんなに遠慮しないでくださいよ。ここで祐二が同席した方が、話が早いんですから。」
「本当にありがとうございます。代理人契約の枠を超えてるな~って、最近、気になっていて。」
祐二が笑いながら言った。
「では特別手当をいただきましょうか?(笑)」
皆が笑って、啓一が言った。
「祐二、お前もそんな冗談が言えるようになったんだ(笑)」
「ええ!兄さん、酷いなぁ(笑)」
皆が笑っていると、今度は誠一から電話が掛かってきた。
「皆揃っとるのか。」
誠一の問い掛けに、義之が応える。
「ええ、揃ってますよ。正彦兄さんとも、いま電話が繋がってますよ。」
「よう、ま~ちゃん!法案の件もニュースになっとったぞ。」
「そうなんじゃ(笑)で、どうしたんじゃ?」
「そやそや、凶悪犯罪者の逮捕に協力したっちゅう事で、警察庁から峰子ちゃんに感謝状が贈られる事になったよ。表彰式は今度の日曜日午後1時からで、午前11時頃には迎えの車が行くから、よろしく頼むよ。」
「ありがとうございます。うわぁ~何か恥ずかしいです。」
美和が言った。
「背負い投げしたのんバレルやんね(笑)」
「それは恥ずかしい、けど皆に、護身術習って背負い投げできるようになろう!って呼びかけます。」
森川は、祐二の人脈を前もって知っていたのだが、法務大臣に続いて警察庁長官から、実際に電話が掛って来た事で、唯々驚いていた。
啓一が笑いながら、峰子に言った。
「そうしたらストーカーも、簡単に付きまとえなくなるね(笑)」
森川が祐二に言った。
「あ、先生、表彰式の件、警察庁からもマスコミ各社に通達があると思いますが、マスコミへの連絡はうちからもしますのでお任せください。」
「助かります。よろしくお願いいたします。」
峰子も森川に言った。
「ありがとうございます。お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。」
「峰子さん、その分、良い原稿をお待ちしてますよ。」
「はい、楽しく、頑張り過ぎずに頑張ります。」
また皆が笑った。