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龍慈ryuukeiのブログ

愛一元の世界ここに在り。
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3月10日、土曜日。

 

 

峰子は早朝から新幹線で東京に向かい、港区の出版社でファッション誌の取材を受けた。

 

そこで林沙也加と仲田芳美に再会して、改めてお互いの健闘を称え、喜び合った。

 

 

皆、とてもお喋りなので、話は尽きなかった。

 

 

その後3人は、ミスビューティワールド日本事務局が入る六本木のビルで、世界大会に向けての打ち合わせをして、志事と勉強会のスケジュールを受け取った。

 

 

外国語会話や社交界のマナーやダンス、世界の法律や常識、税理士の講習という固い内容から、フラワーアレンジメントやラッピング講習等、色んな分野を広く網羅した勉強会に、好奇心旺盛な峰子は興味を持ったので、この貴重な機会に感謝して、是非参加したいと思った。

 

 

沙也加と芳美も、勉強会に参加すると言っていた。

 

 

峰子と同様に、二人共それぞれタレント事務所に所属したので、皆忙しく、個々の志事をしているようだ。

 

 

奇麗なエネルギーの循環が在ったので、峰子は、これから一年を通して会う内に、この二人とはもっと仲良くなる予感がした。

 

 

別れ際、三人は連絡先の交換をした。

 

 

帰り道で峰子は、東京への片道4時間弱の移動は長いなと思ったが、新幹線に乗っている時間を有効に使おうと思い直した。

 

 

新幹線の扉から大阪の景色が見えると、峰子はホッとした。

 

 

峰子は、自分は生まれ育った大阪が、一番好きなのだなと、初めて郷土愛を自覚した。

 

 

ただ、何度も通って自分の居場所が出来てくれば、東京にも愛着が湧くのかもしれない。

 

 

峰子は呟いた。

 

 

「今日もお愉しみ様。」

 

 

すると、言霊のパワーで、益々楽しい出来事が現実化されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

3月9日、金曜日。


午前中、峰子は祐二に、昨夜の電話の件と、母親から電話があった件を報告し、親戚の名前と住所を伝えて、適切な対処を頼んだ。


そして、里美と一緒に洗濯や掃除を一気に済ましてから、洋服等を買いに電車で京端にあるショッピングモールへ行った。


二人はお目当てのお店で、春物や夏に向けての洋服を数枚買った。


峰子は、青いスカートと白いブラウス、そして黒に白いドット柄のカットソーを気に入って買った。


里美は、綺麗なピンク色のミニスカートと朱色のGジャンとTシャツ数枚を買った。


次にバックや靴を見に行って、峰子は大きめの書類鞄を買った。


里美はポシェットと旅行鞄を買った。


靴は気に入った物がなかったので、また今度にしようとなった。


丁度お腹が空いてきたので、よく行く洋食屋さんのイツツ屋で、ランチセットを頼む事にした。


峰子はドリア、里美はナポリタンを注文した。


久しぶりの姉妹の会話は、とても弾んで愉しかった。


峰子はその愉しさの中に、里美の寂しさを感じた。


里美はしっかりしているが、まだ高校生なのだ。


一人暮らしのように孤独にしたくない。


求めても仕方がないけれど、暖かい家庭を望んでしまう気持ちは、峰子にもよく判る。


でも、敢えてそんな事は言わずに、笑顔でいる里美を、峰子はとても愛おしく感じた。



これからは在宅でも志事が出来るので、世界大会でアメリカのシカゴへ行くまで、しばらくは出来るだけ家にいれるようにしようと、峰子は思った。



昨夜、一柳の事務所から、週刊誌のコラムやフォトエッセイ等、執筆系の志事を数件引き受けた、と言う連絡が電話とテレパシーの両方で来た。


明日はファッション誌の取材やミスビューティーワールドの志事が入っていたので出掛けるが、その後はしばらく在宅の志事なのだ。


コラムに関しては、もう書籍化の話も出ていて、峰子はやりたかった事が出来ると喜んで感謝した。


里美はこの4月から高校3年生になる。


将来したい事があれば、出来るだけ応援したいと峰子は思っていた。


里美には里美の考えがあるだろうから、それは尊重したい。


やりたい事を自由に出来る環境がある、という余裕が、いまの峰子を強くしていた。


秘密結社から依頼される裏の志事も、増えていきそうだが、これについては誰にも言えないし言わない。


それが一柳との約束だからだ。



最先端技術を教えているのは、きっと地球外の存在たちで、結社の人たちは、その存在と繋がりを持っているのだろうと峰子は思っていた。


一柳は、近い内に、六甲の事務所へ峰子を呼ぶので、その時、結社の代表である『おばば様』を紹介すると言っていた。


『おばば様』と聞いて峰子は、その響きから孤独を感じて心が動いた。


そして、自分の役目を感じて把握したのだった。



その日の夜、一柳からの電話で、峰子は来週の月曜日に六甲の事務所へ行く事になった。


朝10時に迎えの車が来るので、白い服を着て来るようにとだけ言われた。



峰子は、期待と興味と、少しの不安を楽しんで、月曜日を待った。









毎朝新聞社での打ち合わせが終わり、峰子は五十嵐の手配したハイヤーで有難く帰宅した。

 

 

家には里美と一緒にあかねも居たので、皆で夕食の準備をしながら話していると、デート帰りの近藤と洋子が、お土産のタコ焼きを持って遊びに来た。

 

 

熱々カップルの幸せな二人の惚気話に、高校生コンビがキャピキャピして、夕食は賑やかで幸せな席になった。

 

 

帰宅してから、沢山の電話が掛かって来て、峰子は色んな知り合いからミスビューティワールド日本になった事を祝福された。

 

 

その中には、親戚からのお節介な電話があり、親に感謝して仲直りしろという内容だったので、峰子はその親戚たちに言った。

 

 

「私の代理人からそちらに内容証明郵便が届きますので、お受け取り頂いて御覧下さった上で、ご意見があれば伺いますが、その際は法的な対処も念頭に入れますので、よろしくお願いいたします。」

 

 

そう峰子が言うと、親戚たちはすぐに電話を切った。

 

 

峰子はこの電話で、両親が親戚中に格好をつけていい加減な事を吹聴しているのが判ったので、明日祐二に報告して、適切な対応をしてもらおうと決めた。

 

 

電話の様子を見ていた里美が言った。

 

 

「お姉ちゃんが優勝した次の日、お母さんから電話あってん。」

 

「何言うとった?」

 

「賞金幾ら?ってさ。」

 

「また自分の手柄みたいに、自慢しまくってるんやろな。」

 

「そやで、きっと。」

 

「先生に言うて、もっかいキッチリ締めてもらっとこ。」

 

「うんうん。」

 

「そや、明日、春物の洋服買いに行こな。」

 

「やった!行く行く!」

 

 

峰子は明日する事をメモした。

 

 

こうしてノンビリしていると、何も変わっていないように感じる峰子だったが、自分を取り巻く環境は、これからに向かって大きく変わっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

峰子のコラムとして、第一回目に掲載される事になったのは、12番目の被害者となった峰子の先輩の話だ。

 

 

コラムより

 

 

 

はじめまして。長田峰子です。

 

週に一回、金曜日に、こうして皆さんと文章でお会いできる事を感謝します。

 

第一回目は、私がどうしても皆さんにお伝えしたいお話を、お届けいたします。

 

 

私がアルバイトしていた病院に、一学年上の先輩がいた。

 

先輩は岡山県出身で、高校卒業と共に大阪の病院に就職して寮に住み、そこから看護学校に通う勤労学生だった。

 

彼女は朝から病院で働き、昼から夕方まで看護学校で勉強し、その後、また病院で働いて、進級の為に欠かせない試験勉強をするという、とても忙しい毎日を過ごしていらした。

 

だから一日が終わるとクタクタで、お風呂から上がると、もう何もしたくなくなるそうだ。

 

 

勤務の合間の休憩時間に、お茶を飲みながら先輩が私に言った。

 

 

「毎日の繰り返しがイヤになる事もあるけどさ、でも頑張れるのは、秘密があるからなんよ。」

 

「えっ?どんな秘密なんですか?」

 

 

問う私に、先輩は嬉しそうに微笑んで言った。

 

 

「背徳のタコ焼きよ。」

 

「背徳のタコ焼き?」

 

 

頷きながら先輩が続ける。

 

 

「明日の準備が終わって、もう寝るだけってなった時に、冷凍のタコ焼きを3つチンして食べるのよ。」

 

「冷凍のタコ焼き、結構イケるんですよね。」

 

「そうそう!美味しいよね。でも、寝る前に3つもタコ焼き食べてしまうなんて、太ってしまうやんって思いながら食べると、明日もまた頑張ろうって思うんよ。」

 

 

そう言って笑った色白の先輩の横顔は、幸せそうだった。

 

 

先輩は、この4月から4回生になる予定だった。

 

だから、看護学校も後一年で卒業のはずだった。

 

 

看護婦の国家資格が取れたら、将来の夢や希望が、きっと沢山あっただろう。

 

 

好きな人と結婚して、素敵な家庭も作れたかもしれない。

 

 

なのに、想い半ばで、尊い命を奪われてしまった。

 

 

私が生きている今は、先輩が生きていたかった今なのだ。

 

 

私はこれからも、タコ焼きを見るたび『背徳のタコ焼き』を思い出すだろう。

 

 

 

犠牲になられた12人の方々に、合掌

 

 

 

 

 

 

 

 

森川と一緒に毎朝新聞社の中に入ると、峰子は社員からの視線を感じた。

 

 

好意的なエネルギーに混じって、そうではないエネルギーも感じて、峰子は気を引き締めた。

 

 

森川に案内されたのは、5階の会議室だった。

 

峰子が部屋に入ると、ニコニコ笑顔の井坂にテンション高く迎えられた。

 

 

「長田ちゃ~ん!初めまして、井坂です!いやあ~今朝の朝刊も完売したよ~!ありがと!」

 

 

井坂は立ち上がって、峰子に握手を求めた。

 

峰子が握手に応えながら言った。

 

 

「初めまして、長田峰子です。どうぞよろしくお願いいたします。」

 

 

森川が言った。

 

 

「完売ですか!すごいですね!あ、デスク、これ見てくださいよ!峰子さんが書いたコラムです。」

 

 

原稿を受け取った井坂の眼が光って、一瞬でプロの鋭い表情になった。

 

 

先程までの軽い印象は消え、真剣に原稿を読む井坂を見て、峰子は緊張して注目した。

 

 

 

井坂が驚いた顔で言った。

 

 

「峰子ちゃん、OKだよ!全部このままイケる!文才すごいね!」

 

「ありがとうございます。ホッとしました!」

 

「じゃあこれ、来週の金曜日の朝刊から載せるからね。」

 

 

そこに五十嵐が現れた。

 

 

「峰子ちゃんが来てるって聞いて~、やあ、こんにちは。」

 

「五十嵐社長、こんにちは。お会いできて嬉しいです。昨日もお世話になりまして、ありがとうございました。」

 

 

井坂が五十嵐に峰子の原稿を渡して言った。

 

 

「社長が推薦されるだけありますね。驚きましたよ。良いコラムです。」

 

 

五十嵐は原稿を一気に読んだ。

 

そして、少し涙を浮かべながら言った。

 

 

「あぁ、タコ焼きが食べたくなっちゃった(´;ω;`)ウゥゥ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正午。

 


義之の提案で、事務所に蕎麦の出前を取り、皆で愉しく話しながら昼食会をした。

 

 

一柳は峰子に、今から他人からは見えない『波動SP』を付けるので、普通に行動しても大丈夫だと言った。

 

峰子はその瞬間から、自分を守護するチカラを二つ感じた。

 

 

峰子がそれを言うと、一柳は笑って言った。

 

 

「貴女は自分で厄を避けれる最強運の持ち主だから、これで大体の事はカバーできますよ。」

 

「ありがとうございます。これって、安心感がすごいですね。」

 

 

峰子は自由に行動できるようになって、一柳と関係者全員にとても感謝した。

 

 

すると、峰子の感謝のエネルギーが届いた一柳と関係者全員が、ハートの至高体験をした。

 

 

一柳が言った。

 

 

「これはすごいわ。」

 

 

峰子は一柳に微笑んで一礼した。

 

 

感動しながら一柳が帰って行くと、峰子は昨夜書いて来た10回分のコラムを、祐二に確認してもらい、掲載の了解を得た。

 

峰子はこの後、森川と待ち合わせて毎朝新聞社に行き、デスクの井坂由伸に会う事になっていたので、その為に用意したのだ。

 

 

 

午後1時。

 

 

事務所に森川が来て、祐二と3人で打ち合わせをした。

 

その後、峰子は柴田弁護士法律事務所の人たちにお礼を言って、森川と毎朝新聞社へ向かった。

 

 

森川が峰子に言った。

 

 

「驚きました。本当に文才がありますね。それに、一晩でこれだけ書きあげたんですよね。」

 

「これ、文章とか校正とか大丈夫ですか?」

 

「大丈夫。デスクも唸ると思いますよ(笑)」

 

「ありがとうございます。記者さんにそう言ってもらえると安心します。」

 

 

話しながら10分程歩くと、すぐに毎朝新聞社に着いた。

 

峰子は森川に案内されて、井坂の待つ会議室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月8日、木曜日。

 

午前11時。

 

 

柴田弁護士法律事務所で義之と祐二の同席の下、峰子は、芸能事務所を経営する一柳華子と面談していた。

 

 

一柳はとても品が良く美しい上に、気さくで楽しい人だが、その振る舞いや言葉には、一切隙がなかった。

 

彼女は、義之の同級生だと言っていたが、年齢不詳で、若くも見えるし、見様によっては、年配にも見えた。

 

 

何というか、人間離れした不思議な雰囲気を放っているのだ。

 

 

峰子は一柳の存在感の完璧性を、全ての空間を把握している悟り人のように感じたのだ。

 

峰子は、こういう人に初めて会ったので、とにかく驚きつつ興味を持った。

 

 

 

一通りタレント契約についての説明を聞き、納得した峰子は、その場で正式な契約をして、一柳の事務所に所属してマネジメントをしてもらう事になった。

 

 

契約を交わした後、一柳は峰子に、もう一つ話をした。

 

 

どちらかと言うと、こちらの方が本題だった。

 

 

一柳華子は、裏天皇に通じる秘密結社の幹部『龍朱』という別の顏を持っていて、正彦の依頼で、峰子の能力を保護するように頼まれていると言った。

 

 

そして、その秘密結社が峰子を調査した所、峰子の能力値は無限大だと判定されていた。

 

 

心身の癒しである、再生・修復・復元・蘇生・延命に加え、人を幸せにする能力・透視能力・現実化等の本人の能力以外に、一緒に居る人の能力を向上させる能力も、検知されたのだった。

 

 

ミスビューティワールド日本代表として、これから世界大会に出場するに当たり、峰子の能力に気付いた各国の専門機関が、峰子に接触してくる事が考えられるのだという。

 

 

国家の為に働く集団に属する彼らは、皆が個性的な能力を持っていて、その中には能力者を識別する能力を持っている者もいる。

 

そして、最先端技術で造った機器を使って、遠隔で脳波を計ったり、波動測定もできるという事だった。

 

 

大国はどこも、そういう機関を持っているとの事だった。

 

 

最先端技術を提供している集団は、今の所世間には秘密にされているらしい。

 

 

峰子には、その日、そこまでが明かされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方、テレビ各局のニュース番組で、峰子の会見の様子が放送されて話題になった。

 

 

どの番組でも、好意的な意見と共に取り上げられ、ミス日本の衝撃的な告白と決意が、センセーショナルに報じられた。

 

同時に、ストーキング行為・ストーカーについての解説もされて、その問題点も語られ、多くの視聴者の知る処となって行った。

 

欧米の事情に詳しい評論家たちが、ストーカーの危険性などを強調して語ったりしていた。

 

国会議員たちが党派を超えて、今、ストーカーを規制する法案作りや、世界でどんな対応がされているか等の勉強会をしている事も、話題に上がった。

 

 

 

会見が終わると峰子は、一旦、祐二と森川と共に新聞社のハイヤーで、柴田弁護士法律事務所に行き、今後の打ち合わせをした。

 

 

そこに、柴田正彦から峰子に電話が掛かってきた。

 

法務大臣からの電話に驚いて、森川が言った。

 

 

「えっ!強っ!」

 

 

正彦は予め、会見後に峰子がそこに寄ると、義之から聞いていたのだ。

 

 

「峰子ちゃん、記者会見感動したよ。お疲れさん。」

 

「ありがとうございます。お蔭様で無事に終える事が出来ました。」

 

「良かったよ。それで義之とも相談したんだが、今後、峰子ちゃんへ志事の依頼がどんどん来ると予想される。その規模になると、もう個人での対応は難しいんだよ。そこで今後は峰子ちゃんをマネジメントする所が必要だと思うんだ。私の知り合いで芸能人や講演家の所属する事務所があって、紹介したいのだが、どうだろう?」

 

「えっ!いいんですか?それはとても有難いお話です。」

 

「そこの社長は義之の同級生じゃから、そこで会って話をするといい。」

 

「それでは申し訳ないので、私の方から伺いますよ。」

 

「いやいや、峰子ちゃん。今は一人で行動しちゃ駄目だよ。」

 

 

電話はハンズフリーにしてあり、皆で会話を共有していたので、義之が笑いながら言った。

 

 

「峰子さん、そんなに遠慮しないでくださいよ。ここで祐二が同席した方が、話が早いんですから。」

 

「本当にありがとうございます。代理人契約の枠を超えてるな~って、最近、気になっていて。」

 

 

祐二が笑いながら言った。

 

 

「では特別手当をいただきましょうか?(笑)」

 

 

皆が笑って、啓一が言った。

 

 

「祐二、お前もそんな冗談が言えるようになったんだ(笑)」

 

「ええ!兄さん、酷いなぁ(笑)」

 

 

皆が笑っていると、今度は誠一から電話が掛かってきた。

 

 

「皆揃っとるのか。」

 

 

誠一の問い掛けに、義之が応える。

 

 

「ええ、揃ってますよ。正彦兄さんとも、いま電話が繋がってますよ。」

 

「よう、ま~ちゃん!法案の件もニュースになっとったぞ。」

 

「そうなんじゃ(笑)で、どうしたんじゃ?」

 

「そやそや、凶悪犯罪者の逮捕に協力したっちゅう事で、警察庁から峰子ちゃんに感謝状が贈られる事になったよ。表彰式は今度の日曜日午後1時からで、午前11時頃には迎えの車が行くから、よろしく頼むよ。」

 

「ありがとうございます。うわぁ~何か恥ずかしいです。」

 

 

美和が言った。

 

 

「背負い投げしたのんバレルやんね(笑)」

 

「それは恥ずかしい、けど皆に、護身術習って背負い投げできるようになろう!って呼びかけます。」

 

 

森川は、祐二の人脈を前もって知っていたのだが、法務大臣に続いて警察庁長官から、実際に電話が掛って来た事で、唯々驚いていた。

 

 

啓一が笑いながら、峰子に言った。

 

 

「そうしたらストーカーも、簡単に付きまとえなくなるね(笑)」

 

 

森川が祐二に言った。

 

 

「あ、先生、表彰式の件、警察庁からもマスコミ各社に通達があると思いますが、マスコミへの連絡はうちからもしますのでお任せください。」

 

「助かります。よろしくお願いいたします。」

 

峰子も森川に言った。

 

「ありがとうございます。お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

「峰子さん、その分、良い原稿をお待ちしてますよ。」

 

「はい、楽しく、頑張り過ぎずに頑張ります。」

 

 

また皆が笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後1時。

 

 

五十嵐を先頭に峰子たちが入場し、記者会見が始まった。

 

 

マスコミ関係者は、五十嵐が先導して峰子たちが入って来たのを見て、水を打ったように静まり返った。

 

 

今朝の大スクープを見て、なぜ毎朝新聞社で記者会見が行われる事になったのかを、誰もが理解していた。

 

 

穏やかなお行儀の良い態度で、順番に各社から質問が出され、峰子本人や祐二が応えていく。

 

 

森川が明日の朝刊に、スクープ第二弾が載ると告げると、あちらこちらから溜息が漏れた。

 

 

そして、五十嵐が言った。

 

 

「長田峰子君は今後、毎週金曜日に、うちの朝刊にコラムを寄稿する事になりました。彼女が言いたい事を、ご自身の手でどんな風に発表してくださるのか、僕はとても楽しみにしてます。」

 

 

それを聞いたマスコミ各社がざわついて、数社から声が上がった。

 

 

フライデイモーニングに掲載された峰子の過去記事を覚えていた者が、そこには以外と多くいたのだ。

 

 

「ずるいなあ~!」

 

「長田さん!うちにも書いてくださいよ!」

 

「うちにも書いてください!」

 

 

一気に声が上がり、祐二が応えた。

 

 

「お志事のお話は、個々にまた改めてさせてください。」

 

 

そこで峰子が、エネルギーを言葉に乗せながら言った。

 

 

「私は皆さんに言える事なら、堂々と公平にお伝えしていきます。今回は先にご縁があり、またタイミングが合ったので、毎朝新聞さんにお話いたしましたが、私の声を世間の皆さんに正しく届けてくださるなら、私は出来るだけ沢山お応えしたいと思っています。これは五十嵐社長にもご賛成頂いてます。社会の制度として、今苦しんでいる人たちが少しでも救われるシステムが出来て、安心して過ごせる世の中になる様に、私、頑張ります。」

 

 

その部屋中に癒しのエネルギーが立ち込めて、そこに居た全員をシアワセな気分にした。

 

 

記者会見は、こうして無事に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時30分。

 

 

毎朝新聞の大会議室には、会見の30分前から大手メディアが集まって、場所取りをしていた。

 

大所帯の各テレビ局・大手新聞各社・週刊誌や月刊誌・ファッション誌等、毎朝新聞の厳正なセキュリティをパスできる者だけが集まったのだが、その数は350人以上は居た。

 

 

いつもとは違った活気が、毎朝新聞の社内に溢れている。

 

 

集まったマスコミ関係者たちは、初めてのライバル会社への訪問なので、少し緊張しつつも興味深そうに社屋内を観察していた。

 

 

 

12時45分。

 

 

五十嵐が、身支度を終えた峰子の待合室にやって来た。

 

祐二と森川も、五十嵐からそこに呼ばれて加わった。

 

 

五十嵐は皆に、にこやかに言った。

 

 

「皆さん、こんにちは。昨夜はよく眠れましたか?」

 

 

峰子は満面の笑みで言った。

 

 

「はい、お陰様でとてもぐっすり休めました。沢山のお心遣いを頂いて感謝しております。ありがとうございます。」

 

 

森川は頷いて一礼をした。

 

続いて祐二もお礼を言った。

 

 

「本当に、何から何までお世話になり、ありがとうございました。」

 

 

お礼の言葉を受けて、機嫌良く五十嵐が言った。

 

 

「イイんですよ。すごいスクープで今朝の朝刊、売り切れちゃったんだから(笑)」

 

 

森川が大喜びで言った。

 

 

「本当ですか!」

 

「ああ、君たちのお陰だよ。そこでだ。峰子ちゃん、うちの新聞の朝刊に週一回の連載でコラムを書いてみないかい?」

 

 

祐二が言った。

 

 

「峰子さん、書いたコラムを出す前に、一度確認させてもらえるなら、僕は構いませんよ。」

 

 

峰子は目を輝かせながら言った。

 

 

「うれしいっ!ありがとうございます!ぜひ、やりたいです!」

 

 

森川が言った。

 

 

「すごいじゃないですか!峰子さん!それも併せてこの後発表しましょう!」

 

 

五十嵐が笑いながら言った。

 

 

「自らいっぱい語る人には、余程じゃなければ誰も付きまとわないでしょう?」

 

 

そこに居た全員が笑った。

 

当に、五十嵐の言う通りだったからだ。

 

 

五十嵐が言った。

 

 

「峰子ちゃんのコラムを設けるのは、話題性は勿論だけど、君の文才を知ってるからだよ。あのフライデイモーニングの記事、今でも思い出すと笑えるんだ。中々居ないよこんな人。」

 

 

峰子は喜びで赤くなった。

 

 

 

スタッフが時間を知らせに来て、全員を記者会見の会場へと誘導した。