森川と一緒に毎朝新聞社の中に入ると、峰子は社員からの視線を感じた。
好意的なエネルギーに混じって、そうではないエネルギーも感じて、峰子は気を引き締めた。
森川に案内されたのは、5階の会議室だった。
峰子が部屋に入ると、ニコニコ笑顔の井坂にテンション高く迎えられた。
「長田ちゃ~ん!初めまして、井坂です!いやあ~今朝の朝刊も完売したよ~!ありがと!」
井坂は立ち上がって、峰子に握手を求めた。
峰子が握手に応えながら言った。
「初めまして、長田峰子です。どうぞよろしくお願いいたします。」
森川が言った。
「完売ですか!すごいですね!あ、デスク、これ見てくださいよ!峰子さんが書いたコラムです。」
原稿を受け取った井坂の眼が光って、一瞬でプロの鋭い表情になった。
先程までの軽い印象は消え、真剣に原稿を読む井坂を見て、峰子は緊張して注目した。
井坂が驚いた顔で言った。
「峰子ちゃん、OKだよ!全部このままイケる!文才すごいね!」
「ありがとうございます。ホッとしました!」
「じゃあこれ、来週の金曜日の朝刊から載せるからね。」
そこに五十嵐が現れた。
「峰子ちゃんが来てるって聞いて~、やあ、こんにちは。」
「五十嵐社長、こんにちは。お会いできて嬉しいです。昨日もお世話になりまして、ありがとうございました。」
井坂が五十嵐に峰子の原稿を渡して言った。
「社長が推薦されるだけありますね。驚きましたよ。良いコラムです。」
五十嵐は原稿を一気に読んだ。
そして、少し涙を浮かべながら言った。
「あぁ、タコ焼きが食べたくなっちゃった(´;ω;`)ウゥゥ」