2月21日、火曜日の午後。
看護学校を後にした峰子は別宅に戻った。
片付けの続きをしようと思っていたのだが、物凄い眠気がやって来て、峰子は随分と疲労が溜まっていた事に気付いた。
取り合えず、家事も済ませているし、今できる事は全て終えたので、峰子は眠る事にしてベッドに潜り込んだ。
峰子は珍しく、久しぶりに夢も見ず、ぐっすり深く眠った。
自然に目が覚めたのは、夜中の11時だった。
「すごい!10時間も眠ってたんや!」
そう言って峰子は、コップ一杯のお茶を飲んでから、再びベッドへ潜り込んだ。
2月22日水曜日。
朝8時に目覚めた峰子は、熱いコーヒーを飲みながら、最近ハマっているオールレーズンを2枚食べて、銀行からの書留郵便が届くのを待っていた。
今日、書留郵便は2通来るはずなのだ。
第一産業銀行のキャッシュカードと、大判銀行のキャッシュカードだ。
峰子は19日の日曜日、別宅の片付けが一段落した後、夕方本宅に鞄を置いて掃除をしていた間に、財布からキャッシュカードが消えている事に気付いた。
きっと母親の仕業だろうと峰子は確信した。
その時家に居たのは母親だけだったからだ。
幸いその日は日曜日だったので、お金を引き出すのは月曜日以降だと判断した峰子は、すぐ銀行の休日窓口へ電話を入れ、キャッシュカードの盗難紛失の届けをしてカードを一旦止め、翌日、キャッシュカードの再発行及び暗証番号と印鑑の変更手続きをしたのだ。
そして、不正にキャッシュカードを使う者がいたら、誰であろうと警察に届けてくださいとお願いした。
盗まれたキャッシュカードは、今の所まだ使われていないが、明日峰子が大判銀行に振り込まれた金額を記帳するので、それを見た母親は必ず動くだろう。
峰子は極力感情を入れないように努力して、これを行ったのである。
午前10時に部屋のチャイムが鳴り、2通の書留郵便が届いた。
二つのキャッシュカードと口座について変更が完了した事を知らせる関係書類を、一旦、見つからない所に隠した峰子は、自分を覆っている硬い殻を破る為に、戦う準備を整えた。