祐二の事務所に連絡をしてもらって安心した峰子は、集中して事情聴取に臨んだ。
坂本朝治の息子に先月から迷惑行為をされていた事、その息子が月曜日に逮捕された事、大変な事件になると判った事、火曜日に看護学校で起きた事等、峰子は順番に経緯を説明した。
そして最後に、それが警察庁案件である事を伝えた。
逮捕された後、鉄道公安官の部屋で取り調べを受けていた坂本朝治は、その後連絡した警察庁の刑事たちに引き渡され、大人しく連行されて行った。
鉄道公安官の計らいで、峰子は、坂本朝治と顔を合わせずに済んだ。
坂本朝治の動機が、どれほど理に適わない幼稚な逆恨みであっても、峰子にとっては恐怖だったのだ。
事情聴取が済むと峰子は、親切で優しい対応をしてくれた鉄道公安官と駅員の皆さんに、お世話になったお礼と挨拶をして駅長室を出た。
峰子は公衆電話から柴田弁護士法律事務所へ連絡を入れた。
やはり、直接、祐二に謝罪しておきたかったのである。