storage of my life story 35 | 龍慈ryuukeiのブログ

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愛一元の世界ここに在り。
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スーツの男性たちは峰子に、鉄道公安官だと名乗った。

 

 

坂本朝治が線路に落ちた件は、最初、只の転落事故扱いだったが、ホームでの一部始終を目撃していたリュックサックの男性が、見た事を証言したので、殺人未遂事件だと判明して、坂本朝治は現行犯で逮捕されたのだった。

 

 

年配の鉄道公安官から事件の経緯を聞かされた峰子は、少なからずショックを受けたが、冷静になろうと繰り返し深呼吸をして、動揺している自分を落ち着かせた。

 

少し落ち着いた峰子は、視野を広げて物事を捉えて、何をするべきかシンプルに判断して行動しようと考えた。

 

 

 

峰子は、その年配の鉄道公安官に言った。

 

 

「これから事情聴取とかありますよね。」

 

「はい、お願いします。」

 

「じゃあ先に、この方にお礼を言わせてください。」

 

「いいですよ、どうぞどうぞ。」

 

 

峰子は、自分の時間を使って証言をしてくれたリュックサックの男性に、心からお礼を言った。

 

 

「あの、貴重なお時間を使ってご証言頂いて、ありがとうございました。」

 

「いえいえ、当然の事です。それより大丈夫ですか?顔色が良くないですよ。」

 

「ええ、ちょっとショックで、でも私、めっちゃラッキーでした。目撃してくださった方がいて、しかも証言までしてもらえて感謝です。あ、後、うどんとお稲荷さんにも感謝です。」

 

 

その場にいた全員が、それを聞いて思わず笑った。

 

 

リュックサックの男性も笑いながら、ポケットから名刺を出し峰子に渡した。

 

 

「僕はこういう者です。何かお役に立てる事があるかもしれません。」

 

「頂戴します。あ、私は学生なので名刺持ってないんですよ。すみません。」

 

「大丈夫ですよ。よろしければ連絡先を教えて頂けますか?」

 

「はい。書きますね。」

 

 

峰子は、持っていたメモに電話番号と名前を書いて、一礼をして渡した。

 

リュックサックの男性も、一礼して峰子からメモを受け取った

 

 

「長田峰子さんですね、ありがとうございます。落ち着いた頃に連絡しますので、よろしくお願いします。」

 

「はい、わかりました。」

 

 

名刺には、毎朝新聞、報道部記者、森川祐樹、とあった。

 

 

 

マスコミ関係の森川と、このタイミングで出会ったのは、偶然ではなく必然なのだろうな、と峰子は思った。

 

 

森川にお礼を言った後、祐二との約束がずっと気になっていた峰子は、駅の時計を見た。

 

時刻はもう午後1時になろうとしていた。

 

 

これから行われる事情聴取では、どれくらい時間が掛かるか判らないので、1時半に祐二の待つ事務所へ行くのは到底無理だろう。

 

だから、早く祐二に連絡して、行けなくなったと伝えなければならない。

 

そう思った峰子はこの伝言を、一番話しやすそうな若い鉄道公安官に頼む事にした。

 

彼に事情を説明した峰子は、柴田弁護士法律事務所の電話番号と、相談相手である柴田祐二の名前を書いて渡した。

 

 

連絡先を見た鉄道公安官は、少し目を見開いて峰子に聞いた。

 

 

「ここへ行こうとしてたんですか?」

 

「はい、1時半に予約をしています。」

 

「それは早く連絡しないと。いま電話してくるから、安心して。」

 

「ありがとうございます。助かります。よろしくお願いいたします。」

 

 

峰子はこういう時、いつも思う事を、小さく呟いた。

 

 

「起きる事は最善なんや。だから大丈夫。全部うまく行く。」