女性三人ですき焼きの準備をすると、あっという間に支度が終わった。
柴田祐二との相談が途中だった峰子は、リビングにいる祐二に声をかけた。
「先生、随分お待たせしてしまって。すみません。」
「いやいや、大丈夫ですからお気遣いなく。」
峰子が笑顔になって頭を下げる。
祐二もつられて笑顔で頭を下げた。
続けて祐二が言った。
「先ほど峰子さんから伺った内容によると、犯罪性が非常に高いですね。」
「はい、そうみたいです。」
「とは言え、今の段階で峰子さんにはまだ被害という被害は出ていないので、こちらからは文書で注意を促すくらいしかできません。本当なら未然に防ぐ方が大切なんですけどね。」
「そうですね。こういう問題について法的な整備が為されれば、未然に被害を防ぐ為の対処が、もっと迅速に出来ますよね。」
「僕もそう思うよ。正彦伯父さんたちも法案を作ろうと頑張ってるみたいだし。」
「それにめっちゃ期待してます。あ、それと真剣に相談出来る所も欲しいです。で、相談した後にキチンと必要な対応もしてもらえるネットワークがあったら、病院の先輩も行方不明にならずに済んだかもです。」
「なるほど、そうだね。うん。」
「これは付きまとい問題だけじゃなくて、イジメや虐待なんかで辛い思いしてる人達にも、被害者だけでなく加害者側にも、同じ様にシステムが出来て、もっと周りが積極的に動けたら、自殺率も多少は下がって沢山の人の命が助かるのに!……な~んて…あはは(〃ノωノ)」
一気に言うと、峰子は顔が赤くなってしまった。
思わず力が入って熱く語ってしまい、照れ臭くなったのだ。
しかし祐二は、峰子のエネルギーと共に発せられた言葉が、心に共鳴して感動していた。
「峰子さん!これは、ただのツブヤキで終わっては勿体ないです!是非テレビの全国放送でスピーチしましょう!」
「え?テレビ?」
「僕にアイデアがあります!貴女ならきっと大丈夫ですよ!」
祐二が興奮気味に言うと、そこに席を外していた誠一が戻って来た。
誠一の肩には、立派なタイハクオウムの太郎が乗っていた。
太郎は峰子を見ると、頭の冠羽を立てて首を上下した後、踊りだした。
「太郎~久しぶり~。元気してた?」
太郎が言った。
「ゲ~ンキ~ゲンキッ!ゲンキナタロ~イ~イコッ!」
サービス精神旺盛な太郎のおしゃべりで、部屋の空気が和んだ。
太郎は自分のおしゃべりがウケて、ご満悦なお顔になった。
そこにインターホンが鳴った。
外の様子を監視カメラで映した画面に、四人の男性が映っていた。
石本たちが到着したのだ。
誠一がインターホンで応対した。
「ガレージのシャッター上げるから、車入れてから玄関に来てくれるか。」
「はいっ、わかりましたっ!」
四人がものすごく緊張している様子なのを見て、峰子は誠一に聞いた。
「おっちゃん、あの人たち、何て言うてここに呼んだん?」
「彼らの上司に『警察庁長官命令で特殊任務に就いてもらう呼び出せっ!』て言うたった(笑)」