結局土曜日は、お隣の猫さんの登場でデートは無しになった。
「明日、付きまといの件について、岩田たちも一緒に作戦会議しょうか。」
石本が提案し、日曜日の午後2時に最寄りの駅前ロータリーに集合する事になった。
峰子は日曜日の午前中、高校時代の先輩である谷川美和に勧められて、彼女の家で弁護士をしている美和の従兄と会う予定があったので、石本たちとの約束を午後2時からにしたのだった。
2月12日、日曜日。
峰子が美和の家に行くと、美和の両親と従兄の柴田祐二がリビングで談笑していた。
美和の家は豪邸だが、品が良くて、隅々まで手の行き届いた、空気が奇麗な感じの家だ。
美和の母は家政婦を雇わず、ひとりでこの家を管理して、居心地の良い空間を作るプロの主婦なのだ。
峰子は高校生の頃、美和の家族と一緒に旅行したので、親しくて心安い関係だった。
家族皆、とても温かくて素敵な人たちなので、峰子は久しぶりに会えるのを楽しみにしていた。
美和の父母、谷川誠一と雅子夫妻が大げさなくらい峰子を歓迎してくれる。
「峰子ちゃん、久しぶりやなあ!立ってんと~早ぅ~座り座り!」
「ありがとうございます。お久しぶりです。これどうぞ。上屋のオカキです。」
峰子は雅子にお土産を渡して、笑顔で座り心地の良いソファーに腰掛けた。
皆が着席すると、柴田祐二が峰子に名刺を渡した。
峰子は名刺を持っていないので、どうしようか?と考えて、名案を思いついた。
数か所、ポケットを探した峰子はそれを見つけた。
「あの、私はこういう者です。あ、後で返してくださいね。」
そう言って峰子は、祐二に学生証を渡した。