storage of my life story 10 | 龍慈ryuukeiのブログ

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愛一元の世界ここに在り。
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家には、峰子の両親と長坂晃と井上正道がいた。

 

そこに上田と花岡と石本と峰子が加わると、六畳二間の狭い家はギュウギュウになった。

 

 

父親が険しい表情で石本を睨みながら無遠慮に言った。

 

 

「お宅は何処のどちらさんでっか?」

 

「私は石本の息子です。お久しぶりです。」

 

「おお!石本さんとこの馨君か!大きなったなぁ!今は何してるんや?」

 

「警察の交通機動隊で課長してます。」

 

 

父親の表情があからさまに変化して柔らかくなった。

 

 

「ほぉ、頑張ってるんやなぁ。」

 

「いやあ、ぼちぼちですわ。」

 

 

母親も歓迎ムードになっている。

 

 

「馨君、男前になったやん。私が若かったらぁ~、うふふ(笑)」

 

 

花岡以外、皆が歓迎ムードで、和やかに話に花が咲き、無事にカレー会が終わった。

 

 

「ちょっと用事があるから、カオルちゃんと別宅に行ってくる。」

 

 

峰子がそう言うと、両親は石本に愛想よく言った。

 

 

「またいつでもおいでや~。」

 

 

別宅につくと、峰子は炬燵のスイッチを入れた。

 

部屋の中は深々と冷えている。

 

 

マグカップに淹れた熱々のコーヒーを、石本に手渡しながら峰子は言った。

 

 

「ホンマごめんね。気づまりやったでしょ。」

 

「いやいや。峰子のカレー美味しかったし。」

 

「あはは。」

 

「でな、俺らあのぅ・・・」

 

 

石本が続きを言おうとしたその時、部屋のチャイムが鳴った。

 

 

「お姉ちゃ~ん、あ~ちゃんやけどぉ~。いてるぅ~?」

 

 

妹の友達の鈴木あかねだ。

 

峰子は玄関へ行った。

 

 

「あ~ちゃん、どしたん?」

 

「あんな、明日からしばらく泊めて欲しいねん。」

 

「ええけど、何かあったん?」

 

「アンパン辞めたいねん。」

 

「うん?あぁ~シンナーね?」

 

「うん、あ~ちゃんアンパンやってる時の写真友達に撮られてんけど、それ見たらアホみたいな顔しとって、もうこんな事してるの嫌になってん。お姉ちゃんとこなら邪魔されへんから、安心して辞めれる思ってん!」

 

「わかった。明日やね。ほな泊まる用意しておいで。」

 

「ありがと、お姉ちゃん!明日の夜ちょっと遅くなるけど、よろしくお願いします!」

 

 

部屋の中に戻ると、峰子は石本に言った。

 

 

「今のん、聞かへんかったコトにしてな。」

 

「おお。あれ、鈴木あかねやろ?」

 

「知ってるん?」

 

「白バイ乗ってるからな。いつも鬼ごっこしとる仲や。」

 

「なんやぁ。仲良しさんやったのね。」

 

「まぁな。で、俺ら、付き…」

 

 

石本が照れながら言おうとしたその時、また、部屋のチャイムが3回けたたましく鳴った。

 

 

「カオルちゃん、ちょっとごめん。」

 

 

峰子が玄関を開けると、後輩の木下京子がコンビニ袋を見せながら立っていた。

 

 

「峰子ちゃん、はいっ、お土産~!」

 

「京子ちゃん、ごめん!悪いけど今来客中で。。。」

 

 

京子が目ざとく石本の靴を見て、ニヤリと笑いながら親指を立てて見せながら小声で囁いた。

 

 

「峰子ちゃん!これ?ぐふっ、彼氏?彼氏なん?」

 

「いやいや、ちゃうからぁ!」

 

「ぐっふっふっ!ええからええから、ほなまた来るからねんねんねん💖」

 

「誤解してるで!京子ちゃん!」

 

 

京子は手でハートのカタチを作りながら、笑顔で帰って行った。

 

 

「カオルちゃん、外行こう。そろそろ妹がアルバイトから帰ってくる時間やから。」

 

「おお、わかった。ほな、バイクでドライブや。」

 

 

そう決めて外へ出ると、上の方から猫の切羽詰まった鳴き声が聞こえてきた。

 

 

「にゃあーーーっ!にゃあーーーーっ!」

 

 

峰子が鳴き声のする方を見上げると、木の上に隣の家の飼い猫、茶虎のターコがいた。

 

 

「あれ?ターコどしたん?降りられへんのん?」

 

 

ターコが一層大きな声で鳴く。

 

 

「にゃ~~~おぉぉぉ~~~~ん!にゃ~~~おおおお~~~~ん!」

 

 

そして、意を決したようにお尻を振りながら、峰子の肩に狙いを定めた。

 

 

「あっちょっと待って!ターコっ!待ってってっ!」

 

 

次の瞬間、峰子の肩に、10キロ超えの大きな猫さんがど~~~んと降ってきた。

 

 

「ぐほっ!ターコまた大きぃなったんちゃう?」

 

「にゃ~~~~おっ!」

 

 

峰子はターコに言った。

 

 

「はい、おんりしてね。」

 

 

しかしターコは、峰子の肩から降りるつもりはないらしく、すんっとして器用に首に巻き付くようにして座り込んだ。

 

 

「わかりました、お家まで送らせていただきます。」

 

「にゃっ。」

 

 

それを見ていた石本が、ゲラゲラ笑いながら言った、

 

 

「最後には猫にまでデートを阻止されてしも~たwwwww」

 

 

 石本はコントみたいなこの展開に、しばらく笑いが止まらなかった。

 

 

こんなに大爆笑したのは、一年振りだと気付いた石本は、とても幸せな気持ちになっていた。

 

暖かい空気が石本を包んで温め、何かが解けたような感覚を覚えた。

 

 

石本は、峰子が持っている不思議なパワーに、何となく気付きはじめた。