龍慈ryuukeiのブログ

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裏宇宙会議で宣言をした瞬間から、峰子は人類へプレアデス製のメドベッドを転送し始めた。

 

 

プレアデスのメドベッドには、効果や形態の違いで、数種類のタイプがあった。

 

 

プレアデスの社会で主に使われているのは、カプセルの形をした回復と復元と若返り機能を持つベッドだった。

 

これを地球で使うとなると、運搬や設置に時間が掛かる上、オペレーターも大勢必要になる。

 

それに、地球人にはまだ宇宙種族の存在がディスクローズされていない、という問題があった。

 

 

会議の末、今回の計画に選ばれたのは、エネルギー転送をして使うタイプになった。

 

 

峰子はそれを託されたのだった。

 

 

転送する順番は自然に現れたので、淡々と転送すれば良かった。

何かの法則によって、適格に決まっているようだった。

 

 

本人の魂の選択によってメドベッドを拒否する者は、初めから除外され、受け取る準備のある者にのみ届けられた。

 

 

まずは準備のできた、日本に存在する生命体へ。

 

そして同様に、日本の周辺国の生命体へ。

 

それから世界各国の生命体へ。

 

 

峰子は、生命体だけでなく無機質の物体にも、平たく必要に応じて転送を行った。

 

 

今の人類の波動そのままだと、このメドベッドを使えない場合が多かった。

 

周波数が違い過ぎると、振動そのものが害になるからだ。

 

 

 

 

峰子は沢山の人がメドベッドを使える周波数になるように、転送と並行して個人の波動アップを施した。

 

 

 

色んな可能性を考えて、峰子は丁寧に工夫していったのである。

 

 

個人の波動に合わせて完全チューニングしたメドベッドを、寝具だけでなくイスや車両等に転送していく。

 

 

 

すると、あっという間に転送は終わった。

 

 

 

 

しかし、この転送タイプのメドベッドには、頻繁なアップデートがあって、峰子の志事に終わりはなく、忙しさに変化はないのであった。

 

 

転送した結果を見守る内に、峰子はある重大な事に気付いた。

 

 

 

ある程度の症状や運気には、確かにメドベッドは有効だが、その効果は一過性である事が多く、決して万全ではなかったのである。

 

 

鉄製の物が壊れたら、鉄を使って溶接し修繕する。

 

同じ素材で修繕するのが、最も適しているのだ。

 

それと同じように、生命体を治すのは、やはり生命体なのだ。

 

 

意識が変わらなければ、結局、問題は解決していないので、悪性腫瘍などの症状は再発する。

 

 

だが、痛みなどが無くなれば、余裕をもって特技が受けられるのは利点だ。

 

 

その点では、人類をはじめあらゆる生命体や無機物にメドベッドが行き渡る事の恩恵は大きい。

 

 

 

「結局、私の志事はなくならへんのね。」

 

 

 

人類が本当の感謝を知って、それぞれがそれを発信できるようになるまで、後どれほどの年月が必要なのだろう。

 

 

多分、40年は必要だろう、と峰子は直感した。

 

 

だが、その日は遠くても、必ず来ると決まっている。

 

 

そうなった時、その境地に居る人は、愛一元という次元のない世界で、本当の感謝により自他を幸せにするのだ。

 

 

だから流通の返礼としては、感謝が金銭の代わりに成り得る。

 

 

本当の感謝を伝えられるなら、生活の為の労働は必要でなくなり、天職という生き甲斐や楽しみの為の働きで、人々は充実して日々を過ごすだろう。

 

 

しかし、同じ地球に生きながら、三次元の境地のままで生きる人もいるのだ。

 

それは、その人の好みや選択によるもので、現実を摩擦の多いものにする。

 

 

隣にいても、生きる世界は違ってくる。

 

 

依存心で楽を求めていたり、生活が困窮する不安を持ち続けるなら、他人軸の意識で自分本位になるので、比較・競争・利用・被害を感じながら、不平不満を抱いて生きる毎日になる。

 

 

そうなると「ありがとう」は感謝ではなく、利用したお礼になる。

 

 

いつでもすべてが平等に、自分次第で現実化するのだ。

 

 

波動が上がれば、現実化のスピードも上がる。

 

 

 

峰子は呟いた。

 

 

「平等って自由やけど、ある意味、めっちゃ不自由も呼べるやんな。」

 

 

それを聞いていたクラークさんが言った。

 

 

「だから楽しいのだよ。人間らしくていいじゃないか。」

 

 

そう言って笑ったクラークさんの嘴の上には、イェロヒンと交流してエネルギー交換した証の、見事な小鼻が二つづつ並んでいた。

 

 

 

そして、一緒に笑う峰子の小鼻も、ふたつになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬で髪の毛が銀髪になった峰子を見て、宇宙人さんたちは驚嘆の声を上げて祝福した。

 

 

クラークさんが言った。

 

 

「峰子に頼んだのは正解だったようだ。」

 

 

皆が頷いて、口々に喜びを表した。

 

 

うをーーーー!と叫ぶ者。

 

ぱやぱやーーー!とはしゃぐ者。

 

 

各々の種族の個性的な方法で、峰子は沢山の祝福を受けた。

 

 

峰子は議長に促されて、前に出て、誓いの言葉を宣言した。

 

 

「すべての宇宙種族が平和的にシフトアップする為に、人類の波動を上げて、最適な形で人類にプレアデスのメドベッドを転送する事を、お引き受けいたします。」

 

 

宣言した途端、峰子は光に包まれた。

 

 

峰子を見ていた皆は、反射的に目を覆った。

 

しかし、目を閉じても光は脳の視神経に共鳴していたので、眩しいままだった。

 

 

 

ピッコラが言った。

 

 

「峰子、少しエネルギー抑えて。。。」

 

「あ、ごめんなさい。えへへ(笑)」

 

 

峰子の身体が普通のオーラ光に戻り、皆はホッと安堵した。

 

 

クラークさんが言った。

 

 

「お手柔らかにな。」

 

 

 

こうして人類へのメドベッド転送計画が、まずは日本から実行される事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと数日で年が変わろうとしていた晴れた冬の日。

 

 

里美は正式に一柳の養子となり、その旨が事務所の社員や結社のメンバーへ通達された。

 

一柳には子供がいなかった為、そのニュースはとても好意的に受け取られた。

 

 

いつもは何にでも文句を言う結社の老人までも、里美の笑顔に釣られて破顔していた。

 

 

一柳の言う通り里美の特技は、皆を納得させた。

 

そして、いつの間にか皆が里美に好意を持ち、大切に思ったのだった。

 

 

里美はすぐに新しい環境に馴染んだ。

 

結社についてもすぐに受け入れた。

 

 

海外から来た結社のメンバーも、これで結社が安泰になったと喜んだ。

 

 

 

 

 

その頃、峰子自身にも大きな変化が訪れていた。

 

 

ブルーエイビアンズのクラークさんから誘われて、最近参加するようになった「裏宇宙会議」での事だ。

 

 

その日の議題は、

 

①人類が地球性のメドベッドを作ろうとしている事について。

 

②プレアデス製のメドベッドを人類に提供する事について。

 

この二つで、早急に決める必要がある、との事だった。

 

 

それに付随する細かい決め事については、次回に決めるのだという。

 

 

①については、お金儲けの道具として使われる事への嫌悪感や、中途半端な効果しかない物が横行する危険性や詐欺被害等について、沢山の発言が成され、早急にプレアデス製のメドベッドを提供しようという事で、意見が一致した。

 

②については、人類一人一人の周波数が大きく違う為、プレアデス製のメドベッドを使用できる者と、使用はできても一部の効果だけに限られる者、そして周波数が違い過ぎて使用できない者がいると、研究者によって明らかにされた。

 

それらの問題は、人間メドベッドの特技を持つ者に転送させて、各人に合うように調整を行えば解決するとの事だった。

 

 

 

実際、これから地球人類にプレアデス製のメドベッドをエネルギー転送するにあたって、その役目を人類の誰かが担う必要がある。

 

 

結果から言えば、それを峰子が任せられる事になったのだ。

 

 

 

参加者たちの全員一致で峰子が選ばれた理由は、太陽族からの推薦があったという事実が大きく影響した。

 

太陽族をはじめ、龍族も峰子に任せる事に賛成した。

 

 

クラークさん等、峰子に近しい宇宙人たちは、意見を言わずに中立するよう議長に言われ、事の成り行きを見守っていた。

 

 

活発な質疑応答が繰り返され、冷静にそして厳正に話し合いは進んだ。

 

 

 

メドベッドを転送できる能力を持つ者は、この地球にも沢山居た。

 

しかしその中で、峰子が一番権威に興味がなく、その成果を誇り自己承認欲求を満たしたりしないだろう、という結論に至ったのであった。

 

 

「なんか、おもしろそう🎶」

 

 

峰子はそう言って、その役目を引き受けた。

 

 

峰子がその役目を引き受けた途端、峰子の髪が銀髪になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葬儀を終えて帰阪した峰子と里美は、一柳の計らいで長めの忌引き休暇をもらっていた。

 

 

 

その日数は、二人が自分のペースで、自然に気持ちを切り替えていくのに最適なものだった。

 

 

それ以上長ければ間延びしてしまうし、それより短ければ消化できずに残る物があったはずだ。

 

どちらにしても何かが過不足したであろうと思われた。

 

 

その間、姉妹のどちらにも、マスコミからの取材はなかった。

 

 

 

 

一柳が穏やかに言った。

 

 

「この期間はお二人にとって大切な脱皮の時期として、静かに過ごしてもらいます。でも、脱皮が終わって羽化したら、記者会見してもらいますからね。」

 

 

この事からも、一柳の影響力の凄さと心遣いの深さが窺えた。

 

姉妹は、一柳にとても感謝した。

 

 

 

 

休み明け、峰子と里美は六甲にある一柳の事務所で記者会見をした。

 

 

沢山の記者が集まった。

 

会見での質問は、温かく思いやりに満ちたものばかりだった。

 

心が緩んだ二人は、熱い涙を流しながら素直に答えた。

 

 

この時、姉妹を包んでいる周りの世界には、ハッキリと愛が満ち溢れていた。

 

 

きっとこれからも、この波動を維持しながら進んでいけば、いつでも愛に包まれる世界で過ごしていける。

 

 

峰子と里美は理由もなく、唯、そう確信していた。

 

 

会見が終わると峰子と里美は、集まってくれた記者の方々と、準備をしてくれたスタッフの方々、そしてそれぞれのマネージャーと一柳に、心から感謝を伝えて控室に戻った。

 

 

しばらくすると、そこに一柳がやってきた。

 

 

姉妹が立ち上がり再び感謝を伝えると、一柳は笑顔になって言った。

 

 

「お二人に大切なお話があるのよ。この後一緒にお食事、いいかしら?」

 


里美が答えた。

 

 

「もちろんです。お腹ペコペコ!」

 

 

里美の言葉に、一柳と峰子が声をあげて笑った。

 

 

峰子も答えた。

 

 

「はい、ご一緒させていただきます。」

 

 

 

三人は神野の運転で、一柳が気に入っている老舗ホテルのレストランへ向かった。

 

 

そこに、後片付けで残っていた里美のマネージャーも合流して、食事会は5人となった。

 

 

食事がひと段落すると、マネージャー二人が席を外し、一柳と峰子と里美の三人が残った。

 

 

一柳が神妙な顔で口を開いた。

 

 

「里美ちゃん、私の養女になってくださらない?」

 

 

里美が驚いて声を上げた。

 

 

「ええっ?私ですか?」

 

「そうよ。里美ちゃんが嫌でなければ、だけど。峰子さんはどう思う?」

 

 

峰子が答える。

 

 

「素敵なお話ですね。里美が良ければ、幸せなら、私は構いません。」

 

「お姉ちゃん、私、長田里美より一柳里美の方が、今はもうシックリくるかも。」

 

「芸名、一柳里美やもんね。」

 

 

一柳が柔らかく笑って言った。

 

 

「峰子さんに特技があるように、里美ちゃんには、愛され大事にされる特技があるのよ。」

 

 

峰子が頷きながら言った。

 

 

「わかります。それってとっても強い特技ですよね。だから毒親でも搾取されなかった。辛くなかった訳じゃないだろうけど。」

 

 

里美が言った。

 

 

「お姉ちゃんよりはマシだった。」

 

「だよね~(笑)」

 

 

笑い終えると、里美が一柳に言った。

 

 

「社長、そのお話、有難くお受けいたします。」

 

 

峰子も一柳に言った。

 

 

「妹を、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

 

二人の言葉を受け、一柳は安堵して言った。

 

 

「こちらこそ、お二人共ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。」

 

 

 

峰子は、収まる所に納まった、という感じがして、満ち足りた感覚になった。

 

 

 

里美の事は里美自身が決める。

 

彼女にはその聡明さがある。

 

里美の特技は、変化していく結社の今後にとって、必要な能力なのだ。

 

 

 

峰子は、今、周りにある総てを祝福した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美味しいサラダバーを頂いて心身共に充実した峰子は、神野に自宅近くまで送ってもらった。

 

車から降りた峰子は、笑顔で神野にお礼を告げた。

 

 

「神野さん、ありがとうございました。ご馳走様でした。」

 

「お疲れさまでした。また明日迎えに来るから、よろしくお願いします。あったかくしてね、おやすみ。」

 

「はい、おやすみなさい。あ、でも明日はお休みを頂く事になると思います。」

 

 

峰子は神野に、詳細を伝えた。

 

 

神野は真顔になって頷いた。

 

 

「わかった。対応しておくからね。」

 

「すみません、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

 

神野の車を見送ると、峰子は細い路地を入ってすぐの自宅に着いた。

 

 

家は喜んで、留守番の労に感謝しつつ帰宅の挨拶をする峰子を優しく迎えた。

 

まだ暖房器具を点けていないのに、部屋の中は太陽光が当たっているように心地よく温かい。

 

 

峰子は、家が気を利かせてくれた事に気付き、感謝を伝えた。

 

 

そしてお風呂掃除をして、湯を張る準備をした後、部屋着に着替えて化粧を落とし、歯磨きを終えた。

 

 

ヤル事をやり終えると、峰子は出しっ放しの炬燵に潜り込んだ。

 

 

引っ越した当初は、夏になる前に炬燵布団を片付けて、夏仕様にしようと思っていたはずだった。

 

なのに、いつの間にか、また冬になってしまう。

 

 

電源をオフにしたままで炬燵布団は、夏の点けっ放しの冷房から峰子を守ってくれた。

 

 

「さすがに、炬燵布団は一回干そう。お天気のいい日に。」

 

 

タイマーがピピーピピーと鳴り、お風呂が沸いたと知らせた。

 

峰子は炬燵を出ると、タイマーを労って止めた。

 

 

最近はシャワーで済ませていたので、疲労回復の為にも、今日はお湯を張ってゆっくりお風呂に入るのだ。

 

 

好きな精油を入れて自作したソープで全身を洗う。

 

髪の毛も身体も、これ一つでOKだ。

 

 

隅々まで奇麗になったら、お湯がゆるゆるたゆとう湯船に浸かる。

 

 

古い浴槽は、肩までしっかり浸かれる深さがあって、峰子はとても気に入っていた。

 

 

いつもと違って今日は少し熱めにした。

 

冷えていた手先と足先が少しチリチリした後、ほわあ~っと解けてお湯と同化していく感覚になった。

 

 

峰子は軽く目を閉じて、昼前から届いて来ているビジョンを確認した。

 

 

さっき神野に伝えたのは、このビジョンの内容だった。

 

 

 

 

 

きっと明日、母方の祖父から連絡が来て、悪い知らせがあるのだ。

 

 

起きる事は必然だから、淡々と受け止めよう、と、峰子は思った。

 

 

 

 

 

 

そして翌早朝に、母方の祖父からの電話が鳴り、母の訃報がもたらされた。

 

 

享年49歳。

 

 

早過ぎるその死の責任を、親戚たちはこれから峰子に押し付けるのだ。

 

そうする事で、村八分にした自分たちの罪悪感を和らげようとするのである。

 

 

 

 

実際、駆け付けた母の葬儀で、峰子は親戚全員から冷たい視線を浴びた。

 

 

 

 

骨上げが終わると、母の弟が、場にそぐわない話をわざわざ峰子にしてきた。

 

 

「あんたのお母さんに借りてたもんは全部返した。ほんで、これからは峰子とは付き合いを遠慮させてもらう。」

 

 

峰子は右の眉を少し上げて、皆に聞こえる大きな声で言った。

 

 

「死人に口無し?卑怯やね、おっちゃん。私のお金250万も借りといて、5千円を10回現金書留で送って来ただけやん?返してもらったの5万円だけやで?245万円まだ返って来てないねんけど?」

 

 

母の弟は顔を真っ赤にして、その場から去っていった。

 

周囲にいた親戚たちは、視線を合わせないようにしながら、コソコソと話していた。

 

目の焦点が合っていない父は、何も言わなかった、というか、言えなかった。

 

この時、彼の身体には脳梗塞と同時に、心筋梗塞の兆候が現れ始めていたのだ。

 

 

そしてその夜、妻の後を追うように、父はこの世を卒業して逝ったのだった。

 

 

 

その流れを見ていた里美は、親戚たちにとても怒っていた。

 

そして、里美は人間に疲れ切ってしまった。

 

 

「あんな人ら、こっちからお付き合いお断りやっ!」

 

 

里美はそう言うと泣いた。

 

 

 

そこから峰子と里美は忙しく動き、沢山の事を行って、母に続いて父の葬式を終えた。

 

峰子と里美にとって、非常に過酷な数日間が終わり、二人は疲れ切って大阪に帰った。

 

 

だが、峰子と里美の中で、その記憶に絡みついていた感情が薄れ、記憶自体もハッキリしないボヤけたものになっていた。

 

 

それは、一柳がサイキック能力を使い、関係者全員の記憶をぼやかしていたからだった。

 

 

親戚たちは、葬式や事実については覚えていたが、そこで起きた事等は覚えていなかった。

 

そして、何を忘れたのか思い出せなくなっていた。

 

 

同時に弁護士の柴田祐二も、憶測で峰子や里美について誹謗中傷を言えば、法に訴えて徹底的に追求する、と釘を刺した。

 

 

面倒事に関わりたくない親戚たちは、皆黙った。

 

 

 

 

こうして、ここから、峰子と里美の新たな人生が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一気に肌寒くなって、樹々が紅葉する前に、空気は冬の気配を連れてきた。

 

峰子はダウンジャケットを羽織り、大阪城公園でファッション雑誌の撮影をしていた。

 

冬物のコート特集の撮影だった。

 

まだ10月なのに、厚手のコートを着ていても丁度良かった。

 

 

撮影が終わり、峰子はコートを一点買い取った。

 

古着のような柄で、大きめのザックリした着心地が気に入ったのである。

 

 

 

 

着替えを終えた峰子は、ご機嫌で神野の車に乗り込んだ。

 

 

神野は笑顔で、温かい缶の紅茶を後部座席の峰子に渡した。

 

 

「お疲れさん。寒かったね。」

 

「お疲れさまでした。わあ嬉しい!ありがとうございます🎶」

 

「何かあったでしょ?」

 

「え?あは、わかっちゃいます?」

 

「マネージャーだからね(笑)」

 

「さすがですねっ(笑)」

 

「そういうのはさ、貯めないように小出しにしておいてよ。」

 

「素敵なコートが手に入って、気分一新ですよ。」

 

「なら良いけど。君の大きなエネルギーで爆発されたら、僕は逃げるからね(笑)」

 

「あら、私、そういうの他人にはぶつけませんよ。環境に配慮して愛にリサイクルするので。」

 

 

峰子は、わざとらしく神野を睨んだ。

 

 

峰子の作った「怒った顔」は人間らしくて、ちょっと可愛らしい。

 

神野は笑って言った。

 

 

「それは失礼いたしました。お詫びに美味しいサラダバーをご馳走しますよ(笑)」

 

「やった!ありがとうございます🎶」

 

 

 

峰子は神野の、こういう気遣いの仕方に感謝した。

 

 

峰子は、自分から誰かに悪意を向けたり、意地悪をしたり、利用しようとする事はない。

 

しかし、勝手に悪意を向けて来られる事は偶にあって、その都度、丁寧に、向かってきた悪意を相手にお返しするのだった。

 

 

昨日もそういう面倒な出来事があった。

 

 

他人軸で自分本位で生きる人にとって、峰子は攻撃対象になりやすいようだ。

 

 

峰子は言った。

 

 

「私、とっても短気で欠点も多くて出来た人間じゃないけど、一生懸命だし可愛らしい所も一杯あるんです。でも、私の事が嫌いな人、増えてくんです。だから、サラダバーいっぱい食べますっ!」

 

「うんうん、サラダバーは正義だ!たらふく食べな🎶」

 

 

峰子は味方のいる心強さを感じて、柄にもなく涙ぐんだ。

 

 

神野は知らないふりをして、カーステレオのスイッチを入れた。

 

 

車の中に、最近峰子のお気に入りになった「インストゥルメンタル」の曲が流れる。

 

峰子が曲に合わせてハミングする。

 

 

「赤い鳥逃げた、いいですね。」

 

 

少し寂しいサンバの曲調に、峰子は程よく癒されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝夕は少し肌寒く感じるようになり、季節は秋を通り越して冬へと向かっていた。

 

 

 

峰子の日常は、表のタレント活動、結社の志事、裏宇宙会議という、三つの志事によってドンドン忙しくなっていたが、疲労の回復が早くなったので、体調はとても良かった。

 

裏宇宙会議への出席で、定期的に波動の高い宇宙人さん達との交流が増えたお陰で、峰子の能力は増々上がっていた。

 

 

こうして峰子は、毎日を楽しく過ごしていた。

 

 

楽しいと日々はあっという間に過ぎていく。

 

 

生まれてから辛く苦しい日々を過ごしてきた峰子にとって、今の充実した日々は、まるで奇跡のように有難いモノだった。

 

 

 

そして、峰子の周りでも嬉しい事が起きていた。

 

 

美和と石本の結婚式と披露宴が、先週の日曜日に行われたのだ。
 

 

美和の父親である谷川誠一は、美和の手紙で盛大に号泣して、会場中をもらい泣きの渦に巻き込んだ。

 

母親である雅子は、うっすら涙を滲ませながら優しく微笑んで、美和と石本を祝福していたのが印象的だった。

 

 

石本の家族や親戚は満面の笑顔で、美和たちを大歓迎していた。

 

 

両家家族の相性も良さそうで、父親同士の意気投合ぶりも、微笑ましかった。

 

 

 

温かい空気が参列者全員を包んで、幸せを感じる本当に素敵な結婚披露宴であった。

 

 

 

この経験から、結婚式と披露宴に対して、峰子の感覚が大きく変わった。

 

 

「お式というのは良いものだな。」

 

 

両親と絶縁した自分は結婚式や結婚披露宴をしないだろうが、祝う側として参列できる事を、峰子はとても光栄に思うのだった。

 

 

笑顔が笑顔を呼んで、皆に幸せがお裾分けされていく。

 

 

そして、美味しいお料理でお腹も満たされていく。

 

 

 

幸せは次々に連鎖する。

 

 

綾子と笹本、そして博美と岩田の結婚も、来年の春に決まった。

 

 

近藤は洋子と別れてしまったが、モテ期が来ていて、すぐに新しい彼女ができたと、律儀に連絡がきた。

 

 

峰子の周りにいる人達それぞれが、できる事をしながら一生懸命生きていた。

 

 

小さな頃の峰子は、人間が苦手だった。

 

 

「人間って、ズルいから嫌いだ。」

 

 

そう思っていた時もあった。

 

 

しかし、ズルくなる時もあるけれど、基本的には愛しい生き物だなと、峰子は最近思うようになった。

 

 

 

 

そんな峰子の隣で、ご機嫌さんの龍君が歌う。

 

 

「い~い~な~い~い~な~に~んげんってい~い~な~🎶」

 

 

峰子が言った。

 

 

「コロッケ、沢山あるよ。食べよう。」

 

「食べよ食べよ🎶」

 

 

この美味しいコロッケを作ったのも人間なのだ。

 

 

峰子は大人になった自分を誇らしく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親の件で柴田弁護士法律事務所へ訪れた峰子は、柴田祐二が用意した数枚の書類に目を通してサインをした。

 

 

今回の件で懲りた峰子の両親は、柴田が持参した新たな示談書に、これ以上の金銭要求をしないと署名捺印したのだ。

 

 

峰子が祐二に頭を下げてから言った。

 

 

「先生、松山までご足労くださり、ありがとうございました。お手数をおかけしました。」

 

 

柴田祐二が笑顔で言った。

 

 

「いえいえ、松山って良い所ですね。これでご両親も、さすがに懲りたと思いますよ。」

 

「はい、叔母から電話で聞きましたが、あの人たち孤立して、大人しくなったみたいです。」

 

「峰子さん、貴女は本当に強いですね。」

 

 

複雑そうな表情で言った祐二に、峰子は微笑んで言った。

 

 

「私があの人たちを親に選んで生れて来たので、今こうなってる事も含めて、私にとって貴重な経験が出来ました。最善の選択だったんだと思ってます。小さい頃は大変でしたけどね。」

 

「そうか。なるほど。そういう考え方もあるんですね。」

 

「はい。先生のお子さんたちも、先生と由美子さんを両親として選んでるんですよ。」

 

「それは光栄だな。」

 

 

祐二が柔らかく笑った。

 

 

峰子は由美子の体調を祐二に尋ねた。

 

 

祐二によると、由美子は悪阻が酷かったので早めの産休に入ったらしい。

 

 

祐二と由美子は先月入籍を済ませて、両家家族の食事会を開いて顔合わせをした。

 

由美子の体調を考慮しての事だった。

 

 

結婚式と披露宴は出産後、育児が落ち着いてから行う、という事になった。

 

 

祐二と由美子は、これから初産で双子の出産をするという事で、産前産後の大切な時間を、万全な体調で快適に過ごす事を最優先にしたのだ。

 

 

両家の両親も、祐二と由美子の意見に大賛成して、新居の手配や必要な物等を揃えたりする二人をサポートしてくれたのだった。

 

 

 

峰子が祐二から由美子との話を聞いていると、谷川美和が暖かいお茶を持って来た。

 

 

峰子が美和に笑顔で言った。

 

 

「先輩、ありがとうございます。」

 

「大変やったね峰子。大丈夫?」

 

「はい、大丈ブイ!です(笑)」

 

 

峰子は美和に向かって、右手でピースサインをした。

 

 

祐二と美和が朗らかに笑った。

 

 

場が和むと、美和が言った。

 

 

「峰子に報告があるのよ。」

 

「え?もしかして♡」

 

「うふふ。結婚決まってん。秋に式するわ。峰子来てくれる?」

 

「もちろんですよ!うわぁ~!おめでとうございます!」

 

「ありがとうございます。」

 

 

幸せそうに笑う美和を見て、峰子も幸せな空気に包まれた。

 

 

大好きな先輩の幸せな笑顔を見て、峰子のハートから愛のエネルギーが滾々と溢れて、事務所中を満たした。

 

 

祐二が峰子の愛に触れ、根源的な幸せを感じて号泣していた。

 

 

峰子が言った。

 

 

「皆がずっと幸せでありますように。」

 

 

 

 

 

 

 

長田茂雄と妻の登紀子は、つい先日まで、長女の峰子に金銭援助を頼む事が、自分たちの当然の権利だと思っていた。

 

峰子が連れて来た弁護士に言われて、峰子のお金で田舎に引っ越し、弁護士の紹介で就職して、新しい生活を始めたが、日に日に不満は膨らんで、大きくなっていった。

 

 

峰子は自分たちが生んで育てたお陰で成功したのに、親を親とも思わないのか!と怒りが湧くのだった。

 

茂雄と登紀子は、怒りに任せて峰子に何回も電話した。

 

しかし、峰子は忙しいのか、いつも留守番電話に繋がるだけなのだった。

 

 

しかたなく、登紀子が留守番電話に、毎日伝言を残した。

 

 

「毎月30万円振り込んでや。ぎょうさん稼いどるんやろ。」

 

 

それを聞いた峰子は、サクッと柴田祐二に対応を依頼した。

 

 

そして、柴田弁護士から連絡が来て、重大な約束違反なのでペナルティとして、両親が峰子に対して日常的にしていた事を、毎朝新聞のコラムで公開する、と告げられたのだった。

 

 

自分たちの所業について罪悪感はないが、世間に公開されるのはまずいという自覚がある二人は、焦ったが手遅れだった。

 

 

新聞のコラムを読んだ親戚たちに、茂雄と登紀子は責められて、孤立した。

 

 

柴田祐二は茂雄と登紀子に、峰子の最後通牒を伝えた。

 

 

「今度接触してきたら、私から盗ったお金の事を詳しく公開します。そして刑事告訴します。」

 

 

茂雄と登紀子は、柴田祐二に言った。

 

 

「もうこっちから縁を切ったる!恩知らず!」

 

「暴言を吐かれるなら告訴しますよ?」

 

 

沈黙の後に、乱暴に電話が切れた。

 

 

 

柴田祐二は、もうすぐ双子の女の子の父親になる。

 

彼は少し複雑な気持ちになったが、気持ちの新陳代謝を活発にして、気分を転換した。

 

 

そして、人を愛せる自分である事に、そういう風に育ててくれた親に、心底感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

セミの声がミンミンゼミからツクツクボウシに代わった。

 

 

見上げた空は高く、アキアカネが飛んでいる。

 

 

そろそろ秋が近づいて来たようだが、まだまだ日差しは強く暑かった。

 

 

とある火曜日の午前10時。

 

 

 

一通りの家事を終え家を出た峰子は、足取り重く商店街を歩いていた。

 

 

峰子が敢えてゆっくり向かう先は、商店街の入口にある行きつけの歯医者だ。

 

峰子は月に一度、必ず口腔内のお掃除に通っているのだが、歯石取りに慣れる事はなかった。

 

 

とは言え、40分程の丁寧な処置が終われば、お口の中がとてもスッキリする。

 

口腔内の衛生が健康に与える影響は、本当に大きい。

 

 

それだけではなく、歯にも愛を向けて奇麗にケアしている事で、人生までが変わるのだ。

 

 

判っていても、やはり歯医者さんは苦手な峰子だった。

 

 

しかし峰子は、趣味と言えるほど歯磨きが好きだった。

 

 

 

夜寝る前に、何本もの歯ブラシを使い分けながら、丁寧に時間をかけて水だけで磨き上げると、峰子のその日のストレスも奇麗に解消されていく。

 

 

主に水磨きで十分奇麗になるのだが、最後の全体磨きで、ほんの少しだけ歯磨き粉を使う。

 

 

 

磨き終わると、峰子はいつも秘密の呪文を呟く。

 

ここまでが峰子の決まり事なのだ。

 

 

その秘密の呪文の言葉とは。

 

 

『プラークコントロール完了』

 

 

この呪文の効果は、やってみると判る。

 

 

ただ丁寧に磨いただけの時と、最後に呪文を呟いた時とでは、明らかな違いが出るのだ。

 

 

これだけではなく、生活の中で使う言霊を、峰子は大切にしていた。

 

 

 

歯医者から帰る峰子の足取りは、夏休みの宿題が終わった時のように、とても軽やかだった。

 

 

峰子は歯医者さんと歯科衛生士さんに感謝しながら思った。

 

 

喩え人に嫌がられても、その人に必要で大切な事が出来る人で在りたいな。