裏宇宙会議で宣言をした瞬間から、峰子は人類へプレアデス製のメドベッドを転送し始めた。
プレアデスのメドベッドには、効果や形態の違いで、数種類のタイプがあった。
プレアデスの社会で主に使われているのは、カプセルの形をした回復と復元と若返り機能を持つベッドだった。
これを地球で使うとなると、運搬や設置に時間が掛かる上、オペレーターも大勢必要になる。
それに、地球人にはまだ宇宙種族の存在がディスクローズされていない、という問題があった。
会議の末、今回の計画に選ばれたのは、エネルギー転送をして使うタイプになった。
峰子はそれを託されたのだった。
転送する順番は自然に現れたので、淡々と転送すれば良かった。
何かの法則によって、適格に決まっているようだった。
本人の魂の選択によってメドベッドを拒否する者は、初めから除外され、受け取る準備のある者にのみ届けられた。
まずは準備のできた、日本に存在する生命体へ。
そして同様に、日本の周辺国の生命体へ。
それから世界各国の生命体へ。
峰子は、生命体だけでなく無機質の物体にも、平たく必要に応じて転送を行った。
今の人類の波動そのままだと、このメドベッドを使えない場合が多かった。
周波数が違い過ぎると、振動そのものが害になるからだ。
峰子は沢山の人がメドベッドを使える周波数になるように、転送と並行して個人の波動アップを施した。
色んな可能性を考えて、峰子は丁寧に工夫していったのである。
個人の波動に合わせて完全チューニングしたメドベッドを、寝具だけでなくイスや車両等に転送していく。
すると、あっという間に転送は終わった。
しかし、この転送タイプのメドベッドには、頻繁なアップデートがあって、峰子の志事に終わりはなく、忙しさに変化はないのであった。
転送した結果を見守る内に、峰子はある重大な事に気付いた。
ある程度の症状や運気には、確かにメドベッドは有効だが、その効果は一過性である事が多く、決して万全ではなかったのである。
鉄製の物が壊れたら、鉄を使って溶接し修繕する。
同じ素材で修繕するのが、最も適しているのだ。
それと同じように、生命体を治すのは、やはり生命体なのだ。
意識が変わらなければ、結局、問題は解決していないので、悪性腫瘍などの症状は再発する。
だが、痛みなどが無くなれば、余裕をもって特技が受けられるのは利点だ。
その点では、人類をはじめあらゆる生命体や無機物にメドベッドが行き渡る事の恩恵は大きい。
「結局、私の志事はなくならへんのね。」
人類が本当の感謝を知って、それぞれがそれを発信できるようになるまで、後どれほどの年月が必要なのだろう。
多分、40年は必要だろう、と峰子は直感した。
だが、その日は遠くても、必ず来ると決まっている。
そうなった時、その境地に居る人は、愛一元という次元のない世界で、本当の感謝により自他を幸せにするのだ。
だから流通の返礼としては、感謝が金銭の代わりに成り得る。
本当の感謝を伝えられるなら、生活の為の労働は必要でなくなり、天職という生き甲斐や楽しみの為の働きで、人々は充実して日々を過ごすだろう。
しかし、同じ地球に生きながら、三次元の境地のままで生きる人もいるのだ。
それは、その人の好みや選択によるもので、現実を摩擦の多いものにする。
隣にいても、生きる世界は違ってくる。
依存心で楽を求めていたり、生活が困窮する不安を持ち続けるなら、他人軸の意識で自分本位になるので、比較・競争・利用・被害を感じながら、不平不満を抱いて生きる毎日になる。
そうなると「ありがとう」は感謝ではなく、利用したお礼になる。
いつでもすべてが平等に、自分次第で現実化するのだ。
波動が上がれば、現実化のスピードも上がる。
峰子は呟いた。
「平等って自由やけど、ある意味、めっちゃ不自由も呼べるやんな。」
それを聞いていたクラークさんが言った。
「だから楽しいのだよ。人間らしくていいじゃないか。」
そう言って笑ったクラークさんの嘴の上には、イェロヒンと交流してエネルギー交換した証の、見事な小鼻が二つづつ並んでいた。
そして、一緒に笑う峰子の小鼻も、ふたつになっていた。
