storage of my life story 2-29 | 龍慈ryuukeiのブログ

龍慈ryuukeiのブログ

愛一元の世界ここに在り。
https://market.orilab.jp/user/632c1a54eb613 

葬儀を終えて帰阪した峰子と里美は、一柳の計らいで長めの忌引き休暇をもらっていた。

 

 

 

その日数は、二人が自分のペースで、自然に気持ちを切り替えていくのに最適なものだった。

 

 

それ以上長ければ間延びしてしまうし、それより短ければ消化できずに残る物があったはずだ。

 

どちらにしても何かが過不足したであろうと思われた。

 

 

その間、姉妹のどちらにも、マスコミからの取材はなかった。

 

 

 

 

一柳が穏やかに言った。

 

 

「この期間はお二人にとって大切な脱皮の時期として、静かに過ごしてもらいます。でも、脱皮が終わって羽化したら、記者会見してもらいますからね。」

 

 

この事からも、一柳の影響力の凄さと心遣いの深さが窺えた。

 

姉妹は、一柳にとても感謝した。

 

 

 

 

休み明け、峰子と里美は六甲にある一柳の事務所で記者会見をした。

 

 

沢山の記者が集まった。

 

会見での質問は、温かく思いやりに満ちたものばかりだった。

 

心が緩んだ二人は、熱い涙を流しながら素直に答えた。

 

 

この時、姉妹を包んでいる周りの世界には、ハッキリと愛が満ち溢れていた。

 

 

きっとこれからも、この波動を維持しながら進んでいけば、いつでも愛に包まれる世界で過ごしていける。

 

 

峰子と里美は理由もなく、唯、そう確信していた。

 

 

会見が終わると峰子と里美は、集まってくれた記者の方々と、準備をしてくれたスタッフの方々、そしてそれぞれのマネージャーと一柳に、心から感謝を伝えて控室に戻った。

 

 

しばらくすると、そこに一柳がやってきた。

 

 

姉妹が立ち上がり再び感謝を伝えると、一柳は笑顔になって言った。

 

 

「お二人に大切なお話があるのよ。この後一緒にお食事、いいかしら?」

 


里美が答えた。

 

 

「もちろんです。お腹ペコペコ!」

 

 

里美の言葉に、一柳と峰子が声をあげて笑った。

 

 

峰子も答えた。

 

 

「はい、ご一緒させていただきます。」

 

 

 

三人は神野の運転で、一柳が気に入っている老舗ホテルのレストランへ向かった。

 

 

そこに、後片付けで残っていた里美のマネージャーも合流して、食事会は5人となった。

 

 

食事がひと段落すると、マネージャー二人が席を外し、一柳と峰子と里美の三人が残った。

 

 

一柳が神妙な顔で口を開いた。

 

 

「里美ちゃん、私の養女になってくださらない?」

 

 

里美が驚いて声を上げた。

 

 

「ええっ?私ですか?」

 

「そうよ。里美ちゃんが嫌でなければ、だけど。峰子さんはどう思う?」

 

 

峰子が答える。

 

 

「素敵なお話ですね。里美が良ければ、幸せなら、私は構いません。」

 

「お姉ちゃん、私、長田里美より一柳里美の方が、今はもうシックリくるかも。」

 

「芸名、一柳里美やもんね。」

 

 

一柳が柔らかく笑って言った。

 

 

「峰子さんに特技があるように、里美ちゃんには、愛され大事にされる特技があるのよ。」

 

 

峰子が頷きながら言った。

 

 

「わかります。それってとっても強い特技ですよね。だから毒親でも搾取されなかった。辛くなかった訳じゃないだろうけど。」

 

 

里美が言った。

 

 

「お姉ちゃんよりはマシだった。」

 

「だよね~(笑)」

 

 

笑い終えると、里美が一柳に言った。

 

 

「社長、そのお話、有難くお受けいたします。」

 

 

峰子も一柳に言った。

 

 

「妹を、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

 

二人の言葉を受け、一柳は安堵して言った。

 

 

「こちらこそ、お二人共ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。」

 

 

 

峰子は、収まる所に納まった、という感じがして、満ち足りた感覚になった。

 

 

 

里美の事は里美自身が決める。

 

彼女にはその聡明さがある。

 

里美の特技は、変化していく結社の今後にとって、必要な能力なのだ。

 

 

 

峰子は、今、周りにある総てを祝福した。