ちゃんと歩けよ
そんなとこ掴まなくていいから
もっと強かっただろう
そうやって 泣くなよな
鯉がいたあの池が
埋め立てられたって
電車を見ていた歩道橋が
取り壊されたって
もう一度見たかったな
うぶな気持ちを取り戻したいな
あと一度くらい
思い出してくれてもいいんじゃないか
ちゃんと話せよ
最後まで聞いてやるから
もっと考えてただろう
そうやって 馬鹿になるなよな
このトンネルを抜ければ
自転車で走った田んぼ道だ
道を覚えるのが得意なのは
毎週末のおかげなんだよな
もう一度見たかったな
前を歩く真っ直ぐな背中を
あと一度くらい
呼んでくれてもいいんじゃないか
夕方の空を見つめる横顔に
綺麗という表情はなかった
帰りのドアを閉めるまで
暗くなった窓を見つめていた
もっとあっただろう
やり残したことが
それも全部
忘れてしまったのか
小さくなった手を握り
最後のありがとうを聞いた
ありがとうと返したが
もう聞こえていないのだろう