おかえりとただいまを思い浮かべて
玄関を開けると換気扇の音がして
今日は餃子かなんて呟いたりして
知っていた?
僕らは同じ時を過ごしている事を
バイクの後ろから腰に手を回して
信号待ちでポケットに手を入れて
背中の匂いを思い切り嗅いだりして
知っていた?
僕らが出会ってもう10年な事を
Tシャツから伸びた逞しい前腕
肩から肘にかけてはあまり見せないから
たまにちらりと見えるだけで
心が躍っているのをバレないようにして
ほら こうやってするの
手を握って顔を寄せて
ほら やってみせるから
体に沿ってゆっくりと下へ
荒い息もいい 鼓動が全身から伝わるのも
少し高い椅子から足をぶら下げて
両手を擦りながらこちらに来て
まっすぐな薄い瞳でものを言ったりして
知っていた?
僕らはもう出来上がってしまった事を
なぜか切なくなってしまって
気を緩めたら涙が出てしまって
何気なく袖で拭いてくれたりして
知っていた?
自分の首を自ら絞めている事を
出会う前のように
存在すらも知らなかった頃のように
そう考えたら楽になると信じていた
後悔に似た願望に仕立てあげたりして
会えなくてもいいよね
体を合わせなくてもいいよね
寂しくなんかないよね
苦しくなんかないよね
言い聞かせはもう聴き飽きてきたのに
今週末は何をしているのって
来月こそは旅行に行こうかって
昨日旅行先へ仕事が入ったって
もう気付いた?
誰との約束を思い浮かべているかを
自分では思い描けないけれど
案じている様な薄い先が見えた時
言わなくても良いのなら
これを終わりにするくらいなら
そっと見えないふりをするのも良い事か
あれからまた長い日が過ぎて
これも思い出だと一人笑うのだろう
そこにいない姿をいつまで思い出せるだろう
写真でないと分からなくなるまで
先が見えたのなら今日こそは諦めて床に着こう