この気持ち なんだか懐かしくて

そわそわと心が揺れている

この瞬間が心地良く 何度でも浸りたい


沸騰した大量の気泡を見て

心がうずく気持ちと

自分より大きい建造物を見て

心がざわつく気持ち

どちらも心を動かす何かがあるが

懐かしさからの気持ちほど心地良くはない


昔を思い出しては 浸るばかり

小さな荘で二人向き合い

何もしないのかと

真っ直ぐな瞳で訴えたことが

今ではもう初々しくも思える


失敗だと思って過ごしていた

あの日々は消されない

ずっと残ったまま変わらない

柱に刻んだ成長記録のように

失くした時に気付くものだから


ここで この場所から見ていたこと

どこで間違えて どこで逃げ出すのか

いないことになっていた自分を

悔やんでも何も変わることはない


何かをしているつもりでも

気に留められるのは一握り

きっと迎えにくる 手を差し伸べられる

そうやって待って時間が過ぎていく

天井にしぼんで浮いた風船のよう


初めてを超えるほどの二度目をしたい

そう願っては過去に居続ける

懐かしさを覚えたのは

現在の日々を思い出しただけなのだろう


冬仕立ての布団にくるまった

ふわふわとした肌触りが心地良い

寂しさが温もりで和らいでいく

一人でも暖かいことに腹が立った


去年の今頃もこの場所で この時間

同じような気持ちになっただろう

そして同じように唄っただろう

繰り返される行事のようなもの


街が橙色の灯りで染まっていく

ゆらゆらと全体を心地良くさせる

寂しさが温もりで和らいでいく

一人でも同じ事だと気付いた


あの頃と違うのは

失くしたものがあることぐらい

今更思い出してももう遅い


張り詰めた空気に

しんと静まり返った空間

またしても一人 月を見上げる

葉の揺れる音はせず

たまに転がる空き缶の音くらい


散歩をしようと言ったのは誰だったか

月明かりの元 暖かい珈琲を飲みながら

行く当てもなく歩幅を合わせた

たわいもないことで笑いながら

煙草の煙を静かな夜空に放った


別れが懐かしいのは当たり前

ずっと共に生きていたから

急に消えた橙色の灯りが

冬の夜空へと馴染んでいく

忘れることはない思い出だろう