この匂いを嗅ぐために

いつまで待っていたのだろう

この感覚を思い出すために

何回勘違いしたのだろう

そんなに長くはない時は

知らぬ間に幾歳も過ぎている


そうだこの歩き方だった

誰の癖かも忘れて

自分のものとして過ごしていた

そうだこの目線だった

腰を落として話すのは

もしかするとそのせいかもしれない

何となく ゆっくりとものにする


なぜだったのか その理由は

忘れかけていたものが今鮮明に


寝ている間に髪を触っていたね

その後は望んでいない

ただ少し 心地良かったんだ

動く度に体が強張るのを感じた

そうやって懐かしさを取り戻す

なんだそうか そうだったのか


今日は何が食べたいのだろう

きっとあの服を着ているのだろう

靴下は今日も履いていないだろう

今でもこうして考えてしまう

何の意味も持たないのに

でもきっと当たっているでしょう

少しくらい当てにいっても良いじゃない


そうだ いつも通りだ

分かっているから あの時と同じで


テレビから流れるニュースの音と

珈琲とパンの焼けた香り

懐かしい音と匂いで目が覚めた

おはよう 今日は早かったね

ありがとう 送っていくよ

さよならの時間が迫っている


空港で手を振る後ろ姿に

何か込み上げるものが生まれた

帰り道は思い出の曲を選んだ

一人きりの部屋に戻り

残り香を感じ周りを見渡す

濡れたバスタオル 卵の殻が二つ

痕跡を見つけてはため息をつく


そうか まだあったのか

今はっきりと分かってしまった


側から見れば分かりきったこと

まだ身体中に染み付いているのでしょう

次に踏み込めないのは

これが理由なのでしょう

信じたくなかった

何故か言い出せなかった


思い出が先に歩いて

綺麗な過去を描いていく

これもあれも あの時でさえ

良い思い出だけを映し出していく

そう考えては踏み留まり

一昨日と同じ自分に戻っている

懐かしい友との思い出と化す


なんだ 変わらないじゃないか

明日になればいつもの自分がいるのだろう