記憶の片隅にあるのが
あなたの声
深く そしてゆっくりな
あなたとの恋
何年も昔のあなたと私のお話
あなたとはどうやって知り合ったのか
どのようにして出会ったのか
今ではもう思い出せない
若い小さな恋の始まり
迎えに来てもらったの
あなたの車で
集合場所は確かあのお店
きっとそうだよね
印象は上々 あなたもそうだったの?
明るく忙しい街並みを抜けると
静かに拡がる田んぼ道へと変わった
その後はどんな道かも覚えていない
何の話をしたのかさえもあまり記憶にない
そしてあなたの家に着いた
横開きのカタカタと音が鳴る玄関
外には日に焼けた青い紐をつけた犬がいた
ここであなたは育ったのだと悟った
あなたの部屋は二階に上がった場所だった
なぜか懐かしさを感じたのを覚えている
まだ昼間なのに布団に入り
あなたと一つになった
記憶の片隅にあるのが
あなたの匂い
甘く どこか切ない
あなたの表情
何年も昔のあなたと私のお話
夜はまたあなたの運転で出掛けた
どの道を通ったか
何の話をしたのか
それもまた記憶がない
雪が外の松につもった温泉へ行った
四角い大きな露天風呂だった
そこであなたが歌ったんだ
記憶の片隅にあったのは歌声だった
良い声だと
内湯に浸かったおじさんが一言
なぜかそれをはっきりと覚えている
私の知らない歌だったことも
記憶の片隅にあるあなたは
今どこにいる
あの連絡を最期に
消えてしまった
何年も昔のあなたと私のお話