暖かいお湯に浸かる
外は雪景色
冷たい雪があたり
寒いような暖かいような
不思議な感覚
湯気のお陰で
あなたの顔が見えない
積もる雪の小さな音が
流れるお湯の音と
重なりながらも聞こえる
内と外を繋ぐ扉の
古めかしい音に気を取られ
あなたがわたしに少し
近付いたことに気付かなかった
誰かがお湯から出る音と
遠くの鳥の声が合わさり
時の流れと自然の流れ
二つの流れを感じ
心を落ち着かせてくれる
何を語ろうこともなく
時間だけがゆっくり過ぎる
静かな音
音がない音
風の匂いと雪の匂い
お湯の中で嚙みしめる
生きているって素晴らしい
あなたが隣にいることを忘れ
目を閉じ
自然を感じる
耳まで浸かり
一切の音を遮断する
お湯の流れる音が
身体に直に伝わってくる
手に何かが触れた
ゆっくり目を開けると
真っ直ぐどこかを見つめるあなた
下から見たあなたが
なんだかとても格好良い
その時に気づく
手を握られていた
触れていたかったんだ
二人でこの時を感じたかったんだ
恥ずかしそうなあなたの顔
のぼせた赤さなのか
照れた赤さなのか
よくわからなかったが
握る手が少しだけ強くなった
前者でもあり後者でもあった
また二人でここに来て
湯気のたつ このお湯に浸かろう
そう約束して一年が経った今日
今も相変わらずな二人でここにいる
何も語らなくていい
何も動かないでいい
ただあなたとこうして
同じ時をゆっくりと過ごしている今が
わたしにとって一番の幸福
握っていた手が自然と離され
もうそろそろ上がろうの合図
二人 お湯から出て
個々の道を進む