ボクタビ第1部[プロローグ3] | 情熱派日本夕景

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結局、都と遊びに行く話は都の体調の不安により、中止になった。
しかし、チョーカーの紐はないと困る。

「…どうしよう((((-_-;)))」

結城はすっかり悩んでしまった。

コソッ…コソッ…。

「…紗香、ごめんよm(_ _)m」

コソッ…コソッ。

翌日の西小坂井駅…いきなり紗香がつっからんできた。

「結兄!!
お金で済ませるって、どういう事よ!!( ゜Д゜)
これ、去年の修学旅行で行った原宿の竹下通りで買った、すごくお気に入りのチョーカーだったのに!!」

そう、あのコソコソ音…実は結城が1000円(結城の自腹)入りの封筒を紗香の机に置いた音なのだ。
とりあえず、買い取りっていう意味なんだろうか…。
そりゃ怒るわ…。

「…まあ、紐代ならいいわ。
私は飾りさえよけりゃいいから。」

そういって、兄の側から離れていった…。
どうやらそれでよかったらしい。
うん、微妙…。

電車に乗って、豊橋に向かう。
そして、豊鉄で柳生橋…。
私立の高校なのだが、意外と距離がある。
しかし、都が当初志望していた蒲郡の山中の高校に比べりゃ、数段マシ。
あそこは上り下りがしんどいのだ。

「(そういや、都の奴…どうしたんだろう…。
もしかしたら寝てるのか?)」

承知のとおり、都はそこに落ち、結城と同じ高校に通っている…というオチになるのだ。

ちなみに結城の場合は、ダーツ部があるからそこに入っただけだが。

と、突然…。

バサバサッ!!

大鷲が蒼空を舞ってきた。

いや、イヌワシか?
大鷹か、ファルコンか!?

とにかく、こんな都会には絶対いなさそうな鳥であった。
「!?」

さすがの結城でものけ反った。

が、この鳥…やっぱり普通じゃなかった。

…道路に着地すると、突然姿が変わりだし、みるみる人間の姿に変化していったのだ。

質量的にも有り得ない。

「(何!?
半獣!?)」

結城もこんなリアクションを取らざるを得なかった。
が…。

「おはよっ!!
どうしたんだ?そんな馬鹿面して…。」

都だった。
制服もきっちり着ている。

結城はただ、ぽかーんとしていた。

「…。」

都は着地時についた埃を払いながら言う。

「驚いちゃったか…(゜∇゜;)ゞ
スマン、悪気はないから。」

一応、フォロー。
しかし、

「都…(-.-;)」

かなり引き気味の結城。

「引いちゃったか…(;´▽`A``
一応、訳を話しとこう。
実はな、電車に乗り遅れちまって…大変だったんだよ。」

そういう訳らしい…。
しかし、結城は心配そうである。

「…都、大丈夫なのか?
昨日、それが原因でブッ倒れてたのに…。」

昨日の事が引っ掛かっている為らしい。
確かに…。

と、都はさらりと答えた。

「フフフ。
今朝は平気だったんだわ。

今は平気だよ。

…って、どうした!?」

結城は恥ずかしかった。
怖くて未だに眼鏡がとれない自分がそこにいたから。


しばらくして、学校に到着。
荷物を下ろし、ボケッとすること数分…。

「!?」

都がハッとした表情を浮かべた。
そして一言、

「…やられた_| ̄|○」

と言い、一気に苦い表情になった。

机の中には、大量の剣山が入っていたのである。

都の指からは、僅かに血が…。
以前から、都の机に鋭利な物(酷い時にはクラス男子全員分の包丁を入れられた事も)を入れられてはいるのだが、今回もやはりあったようだ。

「(都っ!!)」

親友の一大事に、結城は急いで駆け寄ろうとする。
すると…

「うりゃっ!!」

ゴツッ!!

と、太極拳部OBの奴がいきなり小突いてきたのだ。

「うっ!!」

モロに受けた結城は倒れた。
そして、眼鏡は真っ逆様に落下する。

彼もまた、苦い顔をしていた。

「(ううっ、都…。)」

普通にみたらわからないのだが、虹彩は真紅に染まっていた。
しかし、昨日の1件から、眼鏡がすっかり手放せない結城は、全く抵抗できないのだ。

結城は慌てて眼鏡を拾いに行く。
さらに太極拳部OBは、隙だらけになった結城にヘッドロックをかけてくるのである。
結城は身動きがとれない。

「(畜生!!
放せっ!!)」

苦しむ結城を見た都に、男どもはさらに攻撃を仕掛けてくる。

「よし田崎!!
都をシメてやれ!!」

と、大男が都の両腕を掴み、そして締め付けた。

「畜生!!放せっ!!」

抵抗する都。

グループのリーダー格はそんな都に対し、ビンタをかます。
そして、蹴りを連発。

「グフッ!!グフッ!!」

血を流し、徹底的に締め上げられ、都はすっかり弱っていた。

「くうっ…。」

そんな彼への攻撃はさらにエスカレートしてきた。

「高村、パイの準備が出来たぜ!!」

パイ投げのパイが大量に用意された。

「はいどうも。

じゃ、パーティーを始めっか!!」

とのリーダー格の掛け声とともに、

「オーッ!!」

と、都目掛けてひたすらパイを投げる男子たち。

「グフッ!!
グフッ!!」

滅多打ちを食らった都の顔は、クリームでいっぱいだった。

その衝撃で、意識が戻ってきた都は、変わった物を目にした。
それは、都も一緒だった。


リーダー格の男子は、かなり変わった色のパイを構えだすのだ。

結城は眼鏡が取れた眼で、その光景を流し目で見ていた。
「(あれは…タバスコ!!)」

そう、そのパイには大量のタバスコが仕込まれていたのだ。

目に当たったら焼けてしまう。

絶体絶命の状況に陥った都。
「行くぜ?」

と、リーダー格の男子がパイを投げ付ける。

すると…

「いってーっ!!」

と男の声がこだました…

が、その声は、なんと都を押え込んでいた大男だった!!

「ひぃっ…目が熱いッス!!」

大男はただ、目を押さえていた。
都はいなくなっていた。

「いったい…都はどうやって脱出したんだ!!」
「都を探せ!!」

と、男子たちがパニックになった直後である。

「いってーっ!!」

太極拳部OBが脚から血を流し、蹲っていた。

何かに引っ掛かれたような感じである。

ヘッドロックをかけられた結城はこの隙に抜けだし、なんとか脱出。

慌てて眼鏡を拾い、いそいそと掛けた。

「ふーっ。」

と、結城は一息をついた。

「…それにしても、あいつ…どうしたんだろ…。」

と、キョロキョロしだした結城の肩に、1匹の白ネズミが乗っかった。

「チュー。」

明らかに実験用マウスっぽいが、どこから沸いたんだろうか…。

と、結城はネズミに対し小声でいきなり…

「おい都!!」

と話しかけるのである。

すると、ネズミはこれまた小声で、

「…よくわかったな…。
なぜオレだと言うのが。」

と、都の声で話すのだ。

「だって、実験用マウスがどうしてこんなとこにいるんだ。
しかもクリームベタベタで。」

そういえばそうだ。
結城の肩にはクリームが少し付いていた。

「あ、いけねっ!!」

と、都ネズミは慌てるが、結城はうまく…

「大丈夫。」

とフォローするのである。

しかし、これだけは疑問だったようだ。

「…第一、お前…いつからその姿で声出せるんだよ…。」
そう。
話せる事である。
確かに今朝は人間の姿になるまで、話していなかった。

「今朝から。
本当なら猫にでも化けてさ、いきなり喋ろうかと思ってた。
そうしたらよ、7時45分になってて…。」

早い話、寝坊で予定が狂ったようである。

「…。
お前な…。」
「…起きたのは7時00分だぞ。」
「…。
後、もう1つ。
俺をシメてた太極拳野郎…お前がやったのか?」
「…ご名答。
前足を一瞬だけ鷲にしてな。」
「…。
まあいいや、ありがとな。」
「どういたしまして。」

こんなひそひそ話が展開していた時、入口から1人の男が…。

「おはよう。
朝から何やってるんだい?」

クラス1考えが読めない男・柳玲旻(ユ・レイミン)である。

「あ、レイミン…。」

ちなみに結城とレイミンは何気に仲がいいのだ。
もちろん高校時代からだが。

「おっ、結城か。
…どうしたんだい、このザマは…。」

レイミンは、グチャグチャな教室に、ちょっとイライラしていた。

「…また都だよ。」

と、結城が一言。

するとレイミン、

「…そうか。」

と、頷いたあと、手から軽い稲光を放った。
何かを出しているようだ。

そして手からは棒状のものが現れた。

「…おいっ!!」

何か凶器でも出すのか!?と、一同かなり焦る。

でも、先端が変…。

「…タバスコ臭いんだよ!!」

モップだった。
そういえば、レイミンはかなりの綺麗好きだった。

そして、床についたクリームを拭き始めた。

と、レイミンは先程都を押えていた男子の前に立った。


そして…。

バチンッ!!

と、ビンタをかます。

そして…。

「何してるんだ!!( ゜Д゜)
お前ら、卒業したくないのか!!」

かなり怒っていた。
そりゃそうだ。
下手したら謹慎だの退学だの…かなりの処分になる。

彼は、クラスの為に怒ったのだ。

しかし…。

「…レイミンめ…。」

レイミンにビンタされた男子の頬には、くっきりと痕が…。
そう、レイミンはかなりの怪力なのだ。
故に不良どもも手は出さない。

そして、争いを好まない性格…。

争いを好まない点で、結城とは馬があっていたようだ。
そのつながりで、都とも仲がいい。


その帰り。

「なあレイミン。
その…モップ、どこから出したん?」

結城はモップの出所が気になるようだ。
確かに、マジックとしか言い様がない…。

その質問をした結城に、レイミンは答えた。

「…。
君達、僕が気付かないと思ったかい?

…胸元の宝珠にね。」

…と、目をつけたのは、結城と都の宝珠…。
やはり、狙っていたのか!?(それ以前に、なぜに気付いた!?)と、結城と都は焦りの表情を浮かべた。

「!?
まさか!!」

結城はかなり焦った表情である。
もしかしたら…。

「そう。
そのまさかさ。

僕も持ってるんだよ。
黄色の宝珠を。」

やはりそうだった。
レイミンもまた、宝珠に導かれた者だったのだ。
黄色は武器を精製できる力。
ならば、何もないところからモップを作り出すなんていうのは容易なんだろう。

「…本当、宝珠持ちが君達でよかった。
あの不良どもだったら大変だった…。」

と、結城。

「お前…宝珠に付いて知っとるのか?」

そういえばそうだ。
なぜにレイミンがこんな事を…。

「…宝珠に教えて貰った。

僕のは人体に影響しないみたいだから、いろいろ聞き出した。

この類いの宝珠は5つあること、それらは微かに共鳴していること、人体に影響を及ぼすのは赤と白と緑であること、それらを取り扱えるのは純な人間のみであること…とかな。」


そして3月1日12時00分。

3年生全員、卒業を迎えた。


結城とレイミンは豊橋の大学、都は親戚の経営している店にそれぞれ進んだ。