連載小説(36) | 情熱派日本夕景

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「…失礼…します…。」

あまりの厳格さに、恐る恐る入る一行。

「あの…すみません。
葵カジオさんというのは…。」

声はすでにガクガクだった。

「…。
リュウさんからの使者やな。
そう堅くなるんやない。
無理に堅くなって、声が震えとるで。」
「は、はい。」

と、葵さんは作業の手を止める。

「葵カジオはワイや。
リュウさんに『天然物のクレイシンオが捕れた』という情報が入ったんやけど…もしかしたら、オヌシらかいな。」
「はい。
宝珠と、牙、鱗…あと、骨です。」

と言って、それらを差し出す。
すると葵さん。

「ほぉ…。
いい仕事してんやな。
こりゃ、屑の養殖クレイシンオなんか、へでもないわ!!」
「へっ!?」

アスカが驚く。
と、葵さんは何かをアスカに向かって投げた。
…随分小さな珠だ。

「そいつは養殖クレイシンオの宝珠や。
見て分かるやろ。
養殖の奴はな、天然物の中に見える核ぐらいの大きさしかないんや。
それどころか、魔力を吸収して再結晶化するための核もない。」

この話を聞いて、シルビアはハッとした。

クレイシンオと戦った際、シルビアは術を使用していたからである。

しかし、アスカが手に取った時は拡散していたが…。

「魔力を吸収して…再結晶化するんですか…。」
「そうや、お嬢ちゃん。
ただ、こいつは魔力を貯めて置けないんや。
余った魔力はガイアエナジーに変化されてしまうんや。」
「…故に、術が効かないんですか。」
「ああ、そうや。
…ただ、こいつはそのガイアエナジーを再結晶化の原料にしとるようやな。
魔力の心配せなんでよかったわ。
ただ、キルボ大学の学生さんが一か月前…街に来てな、『ガイアエナジーがここ一年でかなり薄くなっている』って言ってたのが気掛かりなんやけど…。」
「えっ…。
本当ですか!?」
「まあ、そうらしいな。
でも、ワイらはほとんど影響ないみたいやし。

とにかく、原料の蘊蓄を聞く為にきた訳でもないんやろ。
長い蘊蓄聞かせた詫びに、ワイがとっておきのアイテムを作ってやる!!」

葵さんの男粋に

「…本当ですか!?」

なぜか感動するアスカ。

「ああ。
クレイシンオの交易品すべてと引き換えにな。
原料がないと何もできへんし。」

さすがに全部タダとまではいかなかったが、手数料がタダになるだけでもかなりおいしい。

「もちろんです。」

アスカはクレイシンオの交易品すべてを葵さんに手渡した。

「おおきに!!
いいもん作るもんで、一晩待っててーな!!」
「はい。
では、また明日。」

という訳で、とりあえず明日まで待つことになった。