PVで観るニール・ヤングのグランジ | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。


ニール・ヤングの動画をYouTubeで検索していたら面白いものを見つけました。

彼がグランジ・ロックを演っていた頃の代表的なスタジオ・アルバム、1990年の『Ragged Glory』

Ragged Glory/Neil Young

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私もリアルタイムで"Heart Of Gold"を聴いてニール・ヤングのファンになったのでストレイ・ゲイターズと演っているハーヴェスト・シリーズが基本的には好きなんですが、私の中ではこのアルバムもニールの好きな作品の上位にランクインしています。
この『Ragged Glory』の収録曲の中から、なんと4曲について当時のPV(プロモーション・ビデオ)を発見!
このPVが何とも興味深いので、ブログにUPすることにしました。
どう興味深いか一言でいえば、
「こんなニール・ヤング、見たことない!」です。。。


さて、グランジというのは1990年代前半、80年代の商業主義ロックに反抗するオルタナティヴ・ロックの潮流の一つとしてシアトルを中心に勃興したロックのムーブメント。
パンクのシンプルなビートとハード・ロックのリフ主体の楽曲構造が融合しているのが特徴でニルヴァーナ、パールジャム、サウンドガーデンなどが代表的なバンドですね。
そして彼等から絶対的なリスペクトを受けていたのがニール・ヤング。
自殺したカート・コバーン(ニルヴァーナ)の遺書にはニール・ヤングの"Hey Hey, My My "の歌詞の一部「It's better to burn out than to fade away(錆びつくより今燃え尽きる方がいい)」が引用されていたというのは有名な話 。

まずは、この"F!#*in Up"のPVから、
伏せ字になっていますが"Fuckin' Up"なんです(バンクなタイトルですなあ)



素朴で荒削りなニールのこんなロッカー然としたカッコいい姿は初めて見ました。
それにしても凄いのが歪みまくったギター・ソロ。こんなギターは他の誰にも弾けませんよ。


『Ragged Glory 』がリリースされた1990年にニール・ヤングは既に45歳。バッファロー・スプリングフィールド時代から数えても四半世紀近いキャリアを持つベテランです。
ところが、このPVのニールは当時は20歳代前半だったグランジ世代のロック・アーティスト達と見た目もステージ上で発散するエネルギーもまったく遜色がないですね。
グランジの先人として神棚に祀られていた訳ではなくシーンの最先端で活躍していたグランジ・バンドだったというのがニール・ヤング&クレイジー・ホースの凄いところ。
この頃、30歳過ぎだった私はロックの最先端を追っかけるのはやめにして、ブラジル音楽なんぞ、まったりと聴いていたからねえ…

グランジという言葉には「汚れた」とか「薄汚い」という意味がありますが、グランジ・ロックとともに当時、流行したグランジ・ファッションは着古したネルシャツにカーディガン、穴の開いたジーンズといった普段着のようなスタイルでした。
ニール・ヤングも昔からステージ上でも派手でロッカー的な衣装を着ることはなく、チェックのネルシャツにジーンズといった普段着的なスタイルが多かったです。
ただ、このPVのニールのTシャツに穴の開いたジーンズ、後ろ向きに被ったキャップとサングラスという出で立ちは同じカジュアルでもニール本来のカントリー系の普段着とは違い、ストリート系のファッションという感じがします。
レイバンのウェイファーラーが顔からズレていることからみても、自前ではなくスタイリストが撮影用に調達してきたアイテムによるスタイリングだと私は推測しています。
オヤジの若作りと言ってしまえばそれまでですが、あまり無理をしている感じはしないですね。



次の曲はカッティングのギターを多用したパンク、ニューウェーブの波を潜り抜けてきた後のポスト・パンク的な感覚のある"Farmer John"



ポスト・パンク的感覚はグランジ世代のロッカーなら当たり前に身につけているセンスですが、40代半ばのニールが同じ感覚を持っているのは、セックス・ピストルズのジョニー・ロットンに捧げる"Hey Hey, My My "を書いたり、『Trans (1982)』でテクノにアプローチしたりと、常に時代と共振してきたニールだからでしょう。
しかし、セクシー美女と絡みながら歌うニール・ヤングというのも初めて見ましたね。クワを持った「百姓のジョン」 とも絡んでましたが(笑)




続いてこちらはニール・ヤング&クレイジー・ホースの人気ナンバーのひとつ"Powder Finger"と同系統のメロディー・ラインのキャッチーなナンバー "Over And Over"



このPVだけ他の3本と監督が違ってそうですね。
送風機を使って髪をなびかせるというのはPVではよく使われている撮影手法。
男女の痴話喧嘩の寸劇もベタですなあ。
でも、この曲はアルバムの中では"Country Home"と並んで好きなナンバーです。




4本目はいかにもPVらしい小芝居の多いヴィデオで、ニールは牧師やGSの店員の役までやっています。彼もこんな事をやるんですね(笑)
曲自体は昔ながらのニール・ヤング節かな。安心して聴けますね。
"Mansion On The Hill"をどうぞ



最初、これらのPVを観ていると、ステージ上のニールの様子があまりに若々しいので役者がニール・ヤングに扮しているのかと疑いました(音自体は『Ragged Glory 』のスタジオ録音そのままなので)が、このPVを観ると、確かにニールですね。
というのが、この時期のニール・ヤングには「いかついオヤジ」というイメージを持っていたもので…


私がそう思ったのは、『Ragged Glory』の前年にリリースされた、このアルバムのジャケ写真のせいですね。

Freedom/Neil Young

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パールジャムがライブでよく演奏する"Rockin' In The Free World"が収録されているのがこのアルバム。
パールジャムのメンバーはグランジ・バンドの中でも特にニール・ヤングを敬愛していて、ニールの1995年のアルバム『Mirror Ball』にメンバー全員がサポートとして参加したほどです。


以上が『Ragged Glory 』からのPVですが、総評するとニール・ヤングのような飾りっ気のない人でも、彼のような背が高くて彫りの深い顔立の素材のいい人はちゃんとスタイリングして演出すればかなりカッコよく撮れるということですね。
こういう商業的なアプローチはニールのスタンスからは程遠いようには思われますが、常に自己を革新し続ける姿勢こそがニール・ヤングの真骨頂だと思います。


さて、最後にこのアルバムの翌年、1991年にリリースされ、『Ragged Glory 』とともにニールのグランジ時代を象徴するライブ・アルバム『Weld 』からも1曲いっときましょう。


1979年のライブ・アルバム『Live Rust』のようなアコースティック・セットはなし、全篇エレクトリック・セットの爆音ライブ・アルバムの傑作。

WELD -LIVE-/NEIL YOUNG & CRAZY HORSE

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爆音ギターの弾き語りによるボブ・ディランの"Blowin'in The Wind"
これも間違いなくノーベル平和賞級だね。