フェイセズ時代のロッド・スチュワート | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。


ロッド・スチュアートというと、大抵の人がイメージするのが、"Sailing "や"今夜きめよう(Tonight The Night )"などの有名なバラード曲とこれらの曲が収録されている『Atlantic Crossing』 『A Night on the Town』 『明日へのキック・オフ(Foot Loose & Fancy Free)』などの70年代中頃のアルバムでしょうか。
やはり私もリアルタイムで聴いているのは、このあたりのアルバムですね。
1978年の『スーパースターはブロンドがお好き(Blondes Have More Fun)』以降は、ロッドには成功した成り金的な匂いが強くなり、あまり聴かなくなりました。

その後、遡ってジェフ・ベック・グループやフェイセズ、初期のソロ・アルバムなどのロッド・スチュアートがリード・ヴォーカルをとっているアルバムを聴きましたが、一番、私が好きなのはフェイセズでのロッド・スチュアートです。
何というか、この頃のロッドには上を目指す若者の勢いのようなものが感じられます。天下獲りの途上にある者が持つ人を惹きつける魅力を発散しています。

フェイセズの代表曲
"Stay With Me"のライブ・ステージをご覧ください。



やはりロッドのマイク・パフォーマンスはカッコいいですね。
西城秀樹もこのマイク・パフォーマンスをステージに取り入れ、矢沢永吉や世良公則もロッドのステージ・パフォーマンスに影響を受けているようです。


日本ではこの当時、ラジオからフェイセズの曲が流れるのを聴いたことはありませんでしたし、私はミュージック・ライフなどのロック雑誌のグラビア記事や広告ページで存在を認識していた程度でしたが、イギリスでは当時、ストーンズと人気を二分していたらしいです。
おそらく、その人気の秘密はライブの良さにあったのだと思います。
今回、YouTubeでライブ動画を集めてみて改めてそう感じましたね。
ダークなイメージのあるストーンズと比べるとフェイセズのライブはアルコールも入った楽しいものだったようです(何となく客層の違いも想像できます)



"Stay With Me"が収録されているのはこの1971年の3rdアルバム。

馬の耳に念仏/フェイセズ

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アルバムの最後に畳み掛けるように続ける"Too Bad"と"That's All You Need"が最高にカッコいい…
やはり、このアルバムが彼らの最高傑作だと思います。


この頃、日本で発売された洋楽ロック・アルバムの邦題にはピンク・フロイドの『原子心母(Atom Heart Mother )』、ユーライア・ヒープの『対自核(Look At Yourself )』など秀逸なものが多かったですが、この『馬の耳に念仏(A Nod is as Good as a Wink... to a Blind Horse)』もその一つかな。


フェイセズのサウンドを70年代当時の言葉で言えば、もう死語になっていますが「ゴキゲンなロックンロール」というのがピッタリきますね。
各アルバムにはミドル・テンポのポップ・チューンやロッドお得意のバラード、ロニー・レーンの歌う自作曲も収録されているのですが、本領を発揮しているのは"Stay With Me"のようなロック・チューンですね。
こうしたフェイセズらしいサウンドが確立してきたのが、1971年のこの2ndアルバム。


Long Player/Faces

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このアルバムのオープニングはロニー・レーンのイカした(これも死語 笑)ベースラインから始まる"Bad 'n' Ruin'"



いったんブレイクしてロン・ウッドのスライド・ギターが入ってくるところがカッコいいですね。
ロン・ウッドはジェフ・ベック・グループにベーシストとして在籍していましたが、ロッド・スチュアートとともにスティーブ・マリオットの抜けたスモール・フェイセスに移籍します。
グループ名もフェイセズと改名してレコーディングしたのが、1970年のこのアルバム。

First Step/Faces

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新入りのくせに、ロン・ウッドはちゃっかり真ん中に座っています(笑)
こういうところはロンらしいですね。
まだ、スモール・フェイセス時代の余韻が残り、フェイセズとしてのサウンドが確立されていないアルバムですが、ロンのスライドギターをフィーチャーしたこの曲"Around The Plynth"が面白いのでどうぞ。
ロッド・スチュアートのヴォーカリストとしての実力もよく分かる曲だと思います。



決して上手いスライドギターとは思いませんが、ロン・ウッドらしい愛嬌のあるスライドですよね。
フェイセスのサウンドの楽しさはロン・ウッドによるところが大きいと思います。
ロッドと旧スモール・フェイセスのメンバーの間を取り持って、グループとしてまとめていたのも気さくで明るい性格のロンだったのだと思いますね。

一方でこの時期、ロッドはソロ・アルバムも精力的に発表します。
これはソロ歌手としてマーキュリー・レコードと、フェイセズとしてワーナー・ブラザーズと2つのレコード会社と契約していたという事情によります。
フェイセズのアルバムと同時並行して発表していた『Gasoline Alley(1970)』やヒット曲 "Maggie May"を収録し全米アルバム・チャートでも1位を獲得した『Every Picture Tell a Story(1971) 』もイイですね。
アコースティック・ギターとテンポのいいドラムスを基調として、曲によってマンドリンやフィドルを加え、ポイントでエレキギターを使うというフェイセズでは取りにくい構成のアルバムになっています。
フォークやブルースの要素のあるロッドのこの時期のソロ作品は最近の私の趣味には合っていますね。

ロッドはソロ・アーティストとしての志向が強いのは、先ほどの"Bad 'n' Ruin' "の動画を観ても、何となく感じられます。他のメンバーの和気あいあいぶりと比べて、一人で前面に立って歌っている姿にメンバーとの間の見えない溝があるようにも感じられます。
特にスティーブ・マリオットと共にスモール・フェイセスを創設したロニー・レーンには「フェイセズは俺のバンド」という意識が強かったのだと思います(とはいえ、毎回のアルバムでロニーが2~3曲、リード・ヴォーカルをとるというのは、楽器を弾かない専任ヴォーカリストのロッドには酷だったと思います)
ロッドのソロ・シンガーとしての成功により、フェイセズはイギリスではともかく、アメリカではロッド・スチュワートのバック・バンドとしてしか認識されていませんでした。
ロニーにとっては我慢ならないことだったでしょうね。


1973年にフェイセズはアルバム『Ooh La La 』を発表。ロッドは音楽誌に同作を非難したコメントを発表、他のメンバーはそれに憤慨。最もロッドとの対立が深かったロニー・レーンはついにバンドを脱退します。
確かに、いつものロッドとロニーのヴォーカル曲だけでなくロン・ウッドがヴォーカルをとっている曲やインスト・ナンバーもあり、ロッドがあまりレコーディングに参加していない様子が伺えますが、私はそんなに悪いアルバムではないと思いますね。
この"Borstal Boys"なんかゴキゲンです。




このアルバム・ジャケット写真の人物の目の部分は閉じたり開いたりする仕掛けになってました。
OOH LA LA/FACES

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ロニー・レーンの後任には元フリーのベーシスト山内テツが加入。
シングル・レコード"玉突きリチャード(Pool Hall Richard)"を発表しますが、これがフェイセズの最期の楽曲となります。
この動画を観るとロッドと山内テツ以外のメンバーは何となく表情が固いようにも見えますね。



ラスト・シングルに漂う一抹の寂しさをまったく感じさせない、ロッドと各メンバーのその後の順風満帆が予感される、勢いのあるナンバーです。

ロッド・スチュアートはロック界のスーパースターになり、ロン・ウッドはご存じのとおりローリング・ストーンズに加入して、現在も活躍中。

ケニー・ジョーンズはモッズ時代、スモール・フェイセスのライバルだったザ・フーにキース・ムーンの後釜として加入します。

イアン・マクレガンはセッション・ミュージシャンとして成功し、ローリング・ストーンズ、チャック・ベリー、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ジャクソン・ブラウン、ジョー・コッカー、レニー・クラヴィッツ他多くのミュージシャンと共演することになります。
このことからも、彼らフェイセズのメンバーは単なるロッドのバックバンドではなく、ロック・ミュージシャンの間ではその腕を認められた名手たちであったことが分かりますね。


ただ一人、ロニー・レーンだけはフェイセズ脱退後、スリム・チャンスというバンドを結成しますが多発性硬化症という難病を発症。病状に苦しめられながらも音楽活動を続け、1997年に他界します。
悲運の人ですね。




"玉突きリチャード(Pool Hall Richard)"が聴けるのは、フェイセズ解散後に発売された、こちらのベスト・アルバム。

スネイクス&ラダーズ/フェイセズ

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文字通り、大西洋を渡りアメリカに乗り込んだロッド・スチュアートがスティーブ・クロッパー、ドナルド・ダン・ダックら豪華なセッション・ミュージシャンを起用してレコーディングした『Atlantic Crossing(1975)』あたりのアルバムは確かに充実したサウンドを聴かせていますが、私はフェイセズ時代のロッドの勢いとバンドとしてのフェイセズを買いますね。


余談ですがこのフェイセズやザ・フー、スモール・フェイセス、ザ・ジャムなどのモッズの流れを汲むバンドは本国イギリスでは絶大な人気があるのに、日本での人気はいまひとつだったのは何故なんでしょうね?