1972年の作品
Discover America/Van Dyke Parks
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ジャケット・カバー左のバスはトリニダード行き。 右はハリウッド行き。
当時、ワーナー・ブラザースに所属していたヴァン・ダイク・パークスはカリブ海のトリニダード・トバゴへの旅によって触発され、このアルバムを制作します。
こちら裏ジャケ
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Van Dyke Parks(1943~)
素のヴァン・ダイク・パークスはインテリっぽい風貌の人なので、これは今で言うコスプレですね(笑)
さて、私がヴァン・ダイク・パークスの作る音に初めて触れたのは、中学生の頃、 はっぴいえんど の"さよならアメリカ さよならニッポン"でした。
1973年、L.A.でレコーディングされた、はっぴいえんどのラスト・アルバム『Happy End』の収録曲です。
突然スタジオに現れたヴァン・ダイク・パークスは大瀧 詠一が弾いていた曲に、その場でリズム・アレンジを始めて、このサウンドが出来上がったそうです。
この時は「他のはっぴいえんどの曲とは明らかに違う音だなぁ」と感じたものの、何やらカッコいいアメリカンなサウンドを作る人としてヴァン・ダイク・パークスの名前を意識したにとどまりました。
このアルバムを初めて聴いたのは20代になってから。
会社の先輩から譲り受けたレゲエのレコードの中にこのアルバムと次作の『The Clang of the Yankee Reaper(1975)』が混ざっていました。
現在、聴いているのはディスク・ユニオンで購入した中古CDという訳です。
彼はフィル・スペクターからブライアン・ウィルソンに連なるポップスの系譜に属している人なので、私はあまり得意ではないジャンルの人ですが、この2枚のアルバムについてはアメリカン・ルーツ・ミュージックやワールド・ミュージック的な捉え方で聴いていましたね。
タイトルは『アメリカ発見』ですが大半の曲が1930年代頃からアメリカでも一般大衆に聴かれるようになったカリプソのナンバーです。
カリブ海で生まれて世界中に広まった音楽としてはレゲエの先輩格に当たるようなものでしょうか。
最も知られているカリプソの曲は1956年のハリー・ベラフォンテの"バナナ・ボート"ですね。
1943年生まれのヴァン・ダイクも幼少の頃からカリプソに親しんでいたようです。
おそらく、彼がこのアルバムで作り上げたかったのは、ラジオからカリプソが流れてくる、古きアメリカの空気感のようなものだと思います。
アルバムのオープニングの部分を聴いてみましょう。
タイムスリップ感がいきなり半端ないです。
冒頭の"Jack Palance"は1956年にデビューしたカリプソ歌手マイティ・スパロウ。これは何と本人が歌っているようです。
当時のレコード音源をサンプリングしたのか、ヴァン・ダイクが新たにレトロな音を作り出したのかは判りませんが、古いレコードのパチパチいうノイズが入っています。
続く "Bing Crosby"も1930~40年代に活躍したカリプソ歌手、ロアリング・ライオンの曲。カリプソにはアメリカの有名人を諷刺した楽曲が多いようです。
ルーズベルト大統領を諷刺した"FDR In Trinidad"は前回、紹介したライ・クーダーのアルバムにも収録されていましたが、このヴァン・ダイク・パークスのバージョンもいいので貼ろうと思ったのですが、残念ながらレコード音源の動画なし。
1930年代に活躍したカリプソ歌手、アッティラ・ザ・フン(この時代のカリプソ歌手の芸名は派手なものが多かったようです 笑 )の原曲を発見したので貼っておきます。
今回は貼った動画数が多いので、「カリプソというのは、こんな感じか」というくらいでお聴きください。
う~ん、かなりネイキッドな音ですよね。ライ・クーダーの方が、この原曲に近い感じですね。
これをヴァン・ダイク・パークスが料理すると、エレキギター2本を使ったサザン・テイストのあるロック風味が加えられており、これが実にカッコいい。
ライ・クーダーは現地感のある本物の演奏を目指している部分がありますが、ヴァン・ダイクの場合はカリブの音楽を吸収してもアメリカの音楽として消化しきっている感じがあります。
さて、次の曲"Be Carefull"は1930年代のティン・パン・アレイのスタンダードのような曲だということです。
ティン・パン・アレイとは、元々はマンハッタンのブロードウェイと6番街に挟まれた一角の呼称なんですが、この辺りは、1890年代後半頃からブロードウェイ・ミュージカルの音楽に関係する会社が集まっていました。
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ティン・パン・アレイにあった楽譜出版社
それぞれの会社で当時は普及していなかったレコードの代わりに楽曲の試演(ジョージ・ガーシュウィンもこの仕事をしていたそうです)を行っており、たいそう賑わっていたそうです。
確かにこのストリングス、ブロードウェイのミュージカルで使われている音楽のような佇まいが感じられます。
スティールパン(スティール・ドラム)の音も入っています。
第二次大戦後、トリニダード・トバゴで発明された楽器なので、1930年代には無いはずなのですが、不思議と違和感がありません。アレンジの妙ですね。
はっぴいえんど解散後、 細野晴臣 が松任谷正隆らと結成したバンドにもティン・パン・アレイの名が使われてましたね。細野さんも好きだったそうです。
こういうのもアメリカン・ルーツ・ミュージックのひとつなんでしょうね。
古いカリプソの曲以外にも、同時代のソングライターの曲も収録されています。
同じワーナー所属のアラン・トゥーサンが2曲 。このアルバムのレコーディングにメンバーが参加しているリトルフィートのローウェル・ジョージが1曲 入っています。
こちらはアラン・トゥーサンの曲で"Occapella"
このニューオリンズなホーン・アレンジはアラン・トゥーサン本人によるものなのかはクレジットを読んだ限りでは判りませんでしたが、彼の作る曲はどれもいいですね。
このアルバムの随所で使われているスティールパンという楽器、ドラム缶で作られた音階のある打楽器なのですが、実にトロピカルで迫力のあるサウンドを奏でます。
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Steelpan
以前、NHKのドキュメンタリーで観たのですが、トリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインで毎年開催されるカーニバルの期間中に行われるスティールバンド(スティールパンを演奏する音楽グループ)のコンテスト「パノラマ 」は凄いですね。
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大小100組以上ものバンドが参加しており、大規模なバンドでは100名ものスティールパン奏者が参加し、大迫力の演奏を披露します。
いちど生で聴いてみたいもんですね。
このアルバムのラスト・ナンバーは、ヴァン・ダイクのプロデュースでアルバムをリリースしたエッソ・トリニダード・スティールバンドによる"星条旗よ永遠なれ"
次作 『The Clang of the Yankee Reaper』 は、このアルバムよりも格段にダンサブルなスティール・ドラムがフィーチャーされますが、アルバムの最後に付け足されたように短めにフェードアウトする、このスティールバンドのインスト曲、何だか次のアルバムの予告編のように聴こえてしまいます。
この時、すでにヴァン・ダイク・パークスの頭の中に次作の構想があったのかどうか…
ヤンキー・リーパー<紙ジャケットCD>/ヴァン・ダイク・パークス
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これは80年代のワールド・ミュージック・ムーブメントを先取りしたアルバムですねえ。
2枚とも、これからの季節のレトロ・サマーなBGMとしてオススメ。。。