リトルフィート『ファースト(1971)』 | Apple Music音楽生活

Apple Music音楽生活

レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。

前回、紹介したボニー・レイットのアルバムでバックを務めていたのがリトルフィート
今回はこの流れで彼等のファースト・アルバムを紹介してみようと思います。
さすがにこれはレンタルCDではありません。約10年前ぐらいに中古CDをディスクユニオン神保町店で購入しました。フィートでレンタル店に置いてあるのは『Dixie Chicken』とライブ・アルバム『Waiting For Columbus』(こちらhttp://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-11884687297.html)というところです。

1971年の作品
リトル・フィート・ファースト/リトル・フィート

¥1,800
Amazon.co.jp

次作以降はネオン・パークのイラストをジャケットに使用し、これがフィートのトレードマークのようになってますが、このアルバムのジャケット写真もいいですね。
何もない、真っ青な空だけがある場所に立てられた、書割りに描かれた街並み。
アメリカの町の成り立ちは、すべからく、こんなもんだということを表現しているのでしょうか。
いや、「アメリカという国」の成り立ちかな。

オリジナル・メンバーは次のとおり

ローウェル・ジョージ(guitar/vocal/harp )
ロイ・エストラダ(bass)
ビル・ペイン(keyboard/vocal )
リッチー・ヘイワード(drums )


Little Feat (Original Member )

さて、どの曲をブログに上げようかた考えて、思い浮かんだのは、名曲 "Willin' "は必須として次の3曲。

"Snakes On Everything"
アルバム・ジャケットのようなアメリカの青い空に突き抜けていくようなスライドギターが心地よいキャッチーなオープニングナンバー。
この曲、めちゃカッコいいです。

"Hamburger Midnight "
ローウェル・ジョージの振り絞るようなボーカルと強烈なギターリッチー・ヘイワードの重量感溢れるドラミング。
フィートのアルバムの中では最もロック色が強く人気の高い次作『Sailin' Shoes』に直接、繋がる音です。
後のフィートを思わせるものとしては『Dixie Chicken』の音に繋がるニューオリンズR&B のリズムを取り入れた"Crack In Your Door "という曲もこのファーストで既にレコーディングされています。

"Forty Four Blues / How Many More Years "
ブルース・ナンバー・メドレー。
最初の曲はルーズヴェルト・サイクスという1920年代から活動していたブルース・ピアノ奏者のナンバーですが、次の曲は判りませんでした。
ローウェル・ジョージが初期ストーンズのミック・ジャガー、 ゼム時代のヴァン・モリソンのように黒人的歌唱法をコピーしています。
ライ・クーダーもエレクトリックのスライドで参加しています。

と、このアルバムの中で目立った曲の紹介をしてみましたが、実はこれらの曲はYouTube上に使える動画を発見出来なかったんです。
これはもうブログUPは断念かと思いました…
ところが、このアルバムに収録されている他の曲で拾えるものを拾い集めて聴いてみると何だかいい感じなんです。
ザ・バンドの"Music From Big Pink" "The Band "、 グレイトフル・デッドの"American Beauty" "Workingman's Dead"あたりのアルバムに流れている空気感と同じものが流れてくるではないですか‼︎
もちろん、バンドとしての個性、楽器編成は違うのですが、非常にまとも曲を、肩の力を抜いて演奏し、自然に歌っているという、あの感じです。
うん、これはこれでいいかも。



The Band 


Grateful Dead






では、まずはこの曲から聴いてみましょうか。ほんとに何の変哲もない曲です。
ビル・ペインとローウェル・ジョージの共作"Truck Stop Girl"



この曲はバーズがクラレンス・ホワイトのボーカルでカバーしています。
クラレンス・ホワイトは自作の曲を作ることはありませんでしたが、非常に良い選曲眼を持った人で、彼が選んで歌った曲は、"Jamaica Say You Will " "Bugler" など何気ないけど、しみじみとした良さのあるものでした。この曲もそういう感じがしますね。


ローウェル・ジョージとロイ・エストラダはフランク・ザッパのマザーズに在籍していました。
ドラッグに頼ることを嫌うザッパは、ドラッグ漬けになっていたローウェル・ジョージに対し、ドラッグを止めないなら、バンドを辞めるよう宣告します。
それじゃあ、ということでローウェルはマザーズを脱退します。同じようにロイ・エストラダもマザーズを脱退。
この二人がビル・ペインとリッチー・ヘイワードを誘って1969年に結成したのがリトルフィートです。


難解なアーティストの代名詞のように言われるフランク・ザッパですが、意外にまともなしっかりした人なんですね。



フランク・ザッパ、どう見ても
やってそうなんですが…





ソングライターとしても評価の高いローウェル・ジョージ作品の中でも屈指の名曲"Willin'"は一般的には『Sailin' Shoes 』のバージョンの方が知られていると思いますが、これがオリジナル・バージョンです。
この曲はリンダ・ロンシュタットをはじめとした数多くのアーティストにカバーされています。



スライドギターはライ・クーダー
スライド・ギタリストとしてライやデュアン・オールマンと並ぶ存在になるローウェル・ジョージですが、この時はライにスライドを譲っています。こういう枯れた味のあるスライドギターはやはり、ライ・クーダーに勝る人はいませんね。




こちらもビル・ペインとローウェル・ジョージの共作"Strawberry Flats"
この動画ではネオン・パークのイラストによるフィートのアルバム・ジャケットも年代順に登場しますので、こちらもお楽しみください。



ビル・ペインはファーストから既にかなりの曲数をフィートに提供しています。
演奏面でも彼の素晴らしい演奏が目立っているアルバムです。
この曲でも彼のピアノが効いていますね。


最後は、当時のカントリー・ロックの流れを汲んだローウェル・ジョージの作品 "I've Been The One"
1997年にリリースされた、ローウェル・ジョージのトリビュート・アルバムではジャクソン・ブラウンがこの曲を歌っています。これも聴いてみましたが、堪らなくいいです。



ペダルスチールはカントリー・ロックの雄、フライング・ブリトウ・ブラザースの"スニーキー"ピート・クレイナウ
デッドならジェリー・ガルシアがペダルスチールを弾くところですね。

こうやって聴いてみるとバンドやデッド以上にシンプルな演奏です。
この時のフィートはギター1本、ベース、ドラムス、キーボードの4人編成ですものね。
バンドにはガース・ハドソンというマルチ・プレイヤーがいましたし、デッドは6人編成。
また、バンドとデッドには3人のボーカリストがいて、坦々とした曲が続く中にも変化がありましたが、このアルバムでは、ほとんどの曲でローウェルがリードボーカルをとっています(後のアルバムになるほど、ビル・ペインのボーカルが増えていくのですが)
そのため、アルバム全体としてアクセントをつけるために、最初にあげたようなキャッチーな曲、インパクトのある曲が必要だったのだと思います。

このブログを書くために聴き直してみて分かりましたが、このアルバムの本質は今回取り上げて紹介した、何でもないようなシンプルな曲にありますね。
洗練されたファンキーなグルーヴ感のある『Dixie Chicken』以降のフィートもいいけど、このファースト・アルバム、私は好きですね。