ボニー・レイット『Takin My Time』 | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。

以前にボニー・レイットの『Give It Up』をブログで紹介しましたが、

2014/11/07
女性スライド・ギタリストの第一人者

http://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-11949513086.html

TSUTAYA川崎駅前店の「ホ」のコーナーに、もう1枚ボニー・レイットのアルバムを発見。


『Give It Up』を発表した翌年、1973年にリリースされたサード・アルバム
Takin My Time/Bonnie Raitt

¥1,534
Amazon.co.jp

知人から「ルーツ系を聴くならボニー・レイットもいいよ」と勧められた時、「ボニー・レイット… あのロック姉ちゃんが?」と思ったのですが、今回、このアルバムの隣りに「ボニー・タイラー」が並んでいたので、この人と混同していたことに気づきました(笑)


Bonnie Raitt(vocal/acoustic guitar)

この作品は前作のそのまま延長線上にあるという訳ではないですね。
『Give It Up』はボニー・レイットとジョン・ホールらのウッドストックのギタリストのアコースティック・ギターが存分に楽しめるアルバムでした。
『Takin My Time』ではボニーがギターを弾いているのは全10曲中4曲のみ。
これはボーカリストとしてのボニー・レイットを前面に押し出したアルバムですね。
プロデュースは前作でギタリストとして参加していたオーリアンズのジョン・ホール



『Give It Up』はアメリカの片田舎で古き良き時代に演奏されていたような雰囲気の曲が数多く収録されたアルバムでしたが、『Takin My Time』には、前作の雰囲気を遺したナンバーに加えて都会的なムードの漂う曲も現れているのが注目されるところです。

こちらは、そんな都会的でジャージーな "Everybody's Cryin' Mercy”
ベン・シドランに大きな影響を与えたと言われるジャズ・ピアノ奏者モーズ・アリソンの作品



ブルース・ハープは前作でのポール・バターフィールドに代わりタジ・マハールの演奏タジ・マハールは3曲のレコーディングに参加しています。

ベースはボニー・レイット・バンドのベーシストとして、この後もボニーを支えていくことになるフリーボ。フェンダーのフレットレス・ベースを使用して、ウッドベースのような味のある演奏を聴かせてくれます。


大きく変わったのは、バックを務めるミュージシャン。
前作では「ウッドストック人脈」のミュージシャンでしたが、本作で中心になるのは当時、新編成で『Dixie Chicken 』をレコーディングしたリトルフィートのメンバー。
ベースのケニー・グラットニー、ドラムスのリッチー・ヘイワード以外のメンバーがすべて参加しています。

これは、ボニーがアコースティック・ギターを弾いてはいますが、全体的に、かなりリトルフィートっぽい "I Feel The Same"



コンプレッサーをかけたサウンドは、明らかにローウェル・ジョージのスライドギターとしか言いようがないですね。
ビル・ペインのエレキ・ピアノもフィートの時とほぼ変わらない演奏です。



Lowell George(electric slide guitar)


Bill Payne(electric & acoustic piano)


前作の雰囲気を残した、黒人ブルースマンのミシシッピ・フレッド・マクダウェル直伝のアコースティックのスライドギターが聴けるナンバーも聴いてみましょうか。
個人的には、やはり、こういうのが欲しいですね。



このアルバムではドラムスは主にアール・パーマーという人が担当していますが、この曲はジム・ケルトナーがドラムを叩いてます。こういうトラディショナル・ソングには彼のドラムが合いますねえ。ライ・クーダーのアルバムでの彼のドラミングが思い起こされます。

曲の中盤からエレクトリックのスライドも入ってきますが、これは、おそらくボニー・レイットとしては初のエレキ・スライドギターでのレコーディングではないでしょうか。
ローウェル・ジョージ直伝で、彼から学んだスタイルのスライドギターを身につけたボニーは以降のライブやレコーディングでエレキのスライド・プレイを聴かせています。
後にフィートがドラッグ中毒でスタジオに来ないローウェルの代わりにボニーを呼んだという逸話も残っています。

余談ですが、はっぴいえんどがラストアルバム『Happy End 』をLAでレコーディングした時にもローウェル・ジョージが参加しています。この時にローウェルが手取り足取り教えてくれたかどうかは判りませんが、鈴木茂が彼のプレイを穴のあくほど見ていたことは間違いありませんね。それほど鈴木茂のスライドギターにはローウェル・ジョージの影響が感じられます。




同時代の優れたソングライターの曲を歌っているのも、この時期のボニーのアルバムの特徴です。
前作でも取り上げた二人のソングライターの曲が本作でも収録されています。

エリック・カズ
"Cry Like A Rainstorm"
ジャクソン・ブラウン
"I Thought I Was A Child"

この2曲ではデラニー&ボニーからリトルフィートに加入したばかりのサム・クレイトンのコンガを聴くことができます。

『 Give It Up』のブログではエリック・カズの"Love Has No Pride"で締めましたが、今回はランディ・ニューマン"Guilty"で締めます。


"女性ブルース・ギタリスト"としてデビューしたボニーですが、"シンガー" ボニー・レイットがここに完成しています。



この曲とオープニングナンバー"You've Been In Love Too Long"ではリトルフィートに新加入したばかりのポール・バレアがリズムギターで参加しています。



個人的な趣味としては1920~30年代のグッド・ミュージック的な曲の多い『 Give It Up』の方が私好みですが、このアルバムも悪くないね。