「雪とは何か、寒さとは一体ナンなのか!」 | 銀輪鉄道

「雪とは何か、寒さとは一体ナンなのか!」

大滝秀治さんが亡くなられた。  謹んで御冥福を祈りたい。

ところで

大滝さんが演じた数々の役柄の中で、僕にとって一際印象深い作品がコレだ。

冒頭2分位から始まる師団司令部での会議のシーン・・・
(余談だが・・・好きが昂じて この部分のセリフは僕も暗記してしまっている。)(;^_^A


「第八師団第四旅団参謀長」を演じるのは 御本人だ。


山歩きを 或る程度経験した人ならば判って頂けると思うが、GPS や、携帯などと言うモノの無かった時代
天候や積雪の多寡に拘わらず、山で道を失うという状況は、恐怖以外の何ものでもない。
その時代に「完全」と思われる装備を携行していてさえも、言い知れぬ不安が過ぎり、心が焦り動揺する。
それは2,000や3,000mの超級山岳でしか起きない事ではなく、自分達の直ぐ身近な山でも充分起こり得るのだ。

恥ずかしながら、その 「遭難直前」 を、若い頃 経験した。

$銀輪鉄道   下田から、山中に入り、3日で天城縦走を企図していた。

メンバーは
東大 院生リーダー筆頭に、スカウトは大学生先輩2名、以下 先輩含む高校生の僕ら5名の計8名であった。

伊豆の下田といえば、駅前からして 南国のイメージだが、春休みのシーズン、まだ朝夕の気温は低く
最初の 大鍋越、十郎左工門 辺りからは、残雪も観られ、天城峠に差し掛かる頃には完全に登山道は
雪で覆われていた。大学生スカウトの先輩達数人は、山靴に アイゼンや、スパッツを装着し始めたが 
僕ら高校生は当時そんな物は持っておらず、ひたすら後について登った。
(ここまでの行程で、雪の無い地面で設営し、一泊した気がするが、記憶が定かでない。下田からだと、
一日の山行移動距離としては辻褄が合わぬほど歩いた事になるからだ。)
日も傾き、八丁池の先から猛吹雪になった。 面食らった。 (ココは伊豆じゃなかったのか・・・?)
危険を察して池まで戻ることにしたのだが、どうやらこの時 道を間違えたらしく、完全に迷ってしまい、止む無く
リーダーの判断で林の中でビバークが決まった。最早、国定公園内での野営禁止云々など眼中に無い。
ビバークとは言え、林の中は雪濠を掘る程ではなかったが、分担で僕が背負っていた10テン(10人用テント)を、
初めて雪上に設営した。 周りでは3基のラジュース(灯油コンロ)の独特の燃焼音が、唯一 文明の音を奏で
響き渡り、やっと落ち着きを取り戻しつつあった。ライスにクリームシチュー(レトルトではない)をぶっ掛けて
食べる頃には真っ暗になり、たった1丁のハリケンランプの灯りが異様に明るかった。

テントに入り、熱くて甘い紅茶を啜る頃には、状況とは裏腹に馬鹿話も飛び出すようになった。
中でも話題は数年前に上映された 「八甲田山」 の話だった。
この映画を食い入るように観て、セリフも覚えているのは自分だけではなかった事を知った。

そして一般的には、
「天は、我々を見放したっ!」 が有名なのだが、この時の僕らにとって 共通した名台詞は

「雪とは何か、寒さとは一体ナンなのかっ!」  であった。

翌朝は快晴、雪ではなく、氷の上に敷かれたグラシーの僅かな傾斜で、身体ごと頭を外に出して居る事に
気付くと同時に目が覚めた。
南斜面に位置する事を確認後、撤営、登山道は積雪50センチ以上で完全に埋没の為、斜面に沿って真南に
向けて三点法で一直線に降下して行く事約1時間、河津ループ橋が見えた時には皆で歓声を上げた。



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