クロージング。
初めがあって、真ん中があって、終わりがある。
その終わりのことだ。
終わりの演目は、なんと言っても”終わった感”がなければならない。
その為には”オーソドックスではない”ものが適している。
カードマジックの場合は、例えば、サインさせるカードマジック。
アンビシャスカード、財布に通うカード、折りたたまれて現れるカード…etc.
自分はカップスウォレットを使って終わりにするのが好きだ。
そのまま、私のサインをしてお土産に渡して終わり。
なんだ、それ、定番じゃないの? オーソドックスじゃないですか、って思われる。
実は、マジシャンにとっては定番であっても一般の人にとっては異様なことだ。
一般の人からすれば、まずトランプにサインをする、その行為が異常だ。
さらに、財布にトランプを入れている、それらの行為そのものが概念にない異様なことなのだ。
つまり、一般人からしてみると、それは決してオーソドックスではないのだ。
そのように考えてみると、ダイ・バーノンの傑作『トライアンフ』は、まさにクロージングに相応しい。
マジシャンにとっては見慣れた、誰でも知っている古典のオーソドックスなカードマジックである。
が、しかし、一般の人の目から見たら、トランプの裏半分と表半分をシャッフルしてしまう行為は異様だ。
ポール・カリーの『アウトオブディスワールド』もそうだ。
とかくマジシャンは、『トライアンフ』も『アウトオブディスワールド』もオープニングでやりがちだが、じつは、クロージングにこそ適している。