今回の旅の目的の一つは師匠である島田晴夫先生にお会いすることだった。
じつは一週間ほとんど単独行動で島田先生とランチなどをしていた。
世界の島田、といっても日本で考える以上に世界での知名度は圧倒的だ。
マジックキャッスルの歴史さえも島田先生は作り上げた一人であり、日本人マジシャンとしては唯一の終生会員だろう。
島田先生にキャッスルの中を案内してもらう。昼間にもかかわらず大勢の人が「シマダ!」「シマダ!」とよってくる。びくっくりしたのはジョナサン・ペンドラゴン氏までいたことだ。あとになってアイリーン・ラーセンさんがシマダはどこだ?とわざわざ探していたのも印象的だ。
このマジックキャッスルには図書館もある。図書館長のビル・グッドウィン氏にご挨拶をし、話を伺うとシマダの貴重な映像がある、とのこと。八ミリで撮ったであろうその映像は1972年ごろである。まだ島田先生がトレードマークの長髪(総髪)ではなく短髪だった頃だ。演技内容もオーストラリアの頃の名残でサイレントだけで15分ほどの演技。鳩とカードだけではなく、シンブル、シガレット、そしてコインマニピュレーション。島田先生のコインは初めて見た。美しいコインロールからのプロダクションは今見ても驚異的だ。そして競演はチャーリー・ミラー氏。八ミリであるがゆえに声や音楽が入っていないのが残念だが、これも初めて全盛期ともいえるミラー氏のステージ演技を見た。もちろんトークマジックであるが客あしらいのうまさと一つ一つの手の動きの美しさは驚嘆する。自分が知っているミラー氏の映像はやっぱり引退してからの衰えたものだったのだ、ということを確認した。シルク一枚の手順からウォンドと指輪、これらがこんなにも美しいとは…。あ~再現したい。
そうした映像を全部見る間はもちろんなく、島田先生には地下のミュージアムに連れて行ってもらった。ミュージアムといっても特に何かというわけではない。客席が25席ほどのサロン的な部屋だ。ところが、じつはマジックキャッスルが大きく増築される前は、このミュージアムこそが今のパレス、すなわちステージを演じる場所との事。え~こんなに狭いの!と驚きを隠せない。まあ、うちの店サプライズの広さとそんなに違いがない。
このような場所で先ほど図書館で見た当時の島田先生はあれだけの演技をしていたのだ。正直自分だったらトランプ一組程度で済ましてしまうだろう…。
そしてこの場所で島田先生は1000回以上もあの鳩の演技をやり続け、完成させたのだ。こうした場所だからこそ、島田先生の鳩の演技は至近距離でも通じるのだろう。ふと目頭が熱くなる。

続く$RYUSEIブログ