あの時、何を考えていたのか?思い出してみた。
水温5℃の冷たい水の中で身体を動かす力が急速に無くなる事は感じていたけど、不思議と絶望はしなかった。
立ち泳ぎしながら叫んだら身体が水中に引き込まれたので、肺に空気をためてライジャケの浮力だけで仰向けに浮かんで体力の消耗を最小限にしようと考えながら、短く大声で助けを呼び続けた。
浮袋に使用できる防水リュックは手の届かない所に浮いていた。エレキもサオも魚探も全て失って、もう釣りはできないと、とても悲しい気持ちになったのを覚えてる。現実はそれどころじゃないのに。
無人の岬の岸まで30mくらい、最悪そこまで辿り着きスマホで助けを呼べば何とかなると思った。
だから絶望しなかったのだろう。現実的にはそれでは助からなかったと今は理解している。
暫くして近くで釣りをしていた人が救助に来てくれたがボートに掴まるのが精一杯で、別の救助用のボートが着くまでは何度も手が離れそうになり体力の限界との戦いだった。
救助ボートが到着しても体力が残っておらず、マグロの用に引きずり上げてもらった。80キロの体重に水を吸った服で軽く100キロは超えていたにも関わらず、この瞬間心から感謝した。
ここからは低体温症との戦いだった。
陸に着いても歩けない、動けない、喋れない、身体が震えて服も脱げない。寒い以外何も考えられなかった。
今考えると、ここで安心して意識を失っていたらアウトだったのだろう。
最後の力を振り絞って宿まで歩き、濡れた服を脱いだ時、救急車が到着。
住所、名前、電話番号を聞かれても声が出ない。頭では分かっているのに、言葉にならない。脱いだズボンのポケットの財布の位置を指差し、免許証で身元証明し自宅の電話番号だけは何とか伝えられた。
そこから救急搬送される車内で体温27℃って聞こえて、風呂に入れてくれれば回復するのにと考えていた。
病院に到着後、低体温症と不整脈、心細動が認められると説明、要するに心臓麻痺の手前。電気毛布と体温を上げる点滴で治療。やはり風呂に入った方が早いのにと考えていた。
2時間くらいで体温は33℃まで回復、身体のあちこちが冷えからくる関節の痛みで身体の置き場が無い状態。そこに担当医から心細動により血栓ができ、脳梗塞のリスクが高い不整脈であると説明され、入院治療することになった。
冬の釣りではライフジャケットだけでは確実に生命を守る事はできない。というか、沖で落水したら救助される以外、助かる方法は無い。ただ救助されるまでの時間はライフジャケットで稼ぐ事はできるので、浮力を維持しながら短く大きな声で繰り返し助けを呼び続ける。できる事も多分これしかない。
ウエットスーツ着て釣りするくらいの事も検討するべき。
全ての釣り人の教訓にしてもらえたらと思い書いてみました。
先日、真冬の湖で自分が乗ったボートが転覆しました。
エレキとバッテリーと自分の体重で後傾した所に、雨で水が船尾に溜っていた事に対処できず、後ろから波をかぶって一瞬で船尾から転覆しました。
水温は5℃救命胴衣は着用していましたが、1〜2分で泳ぐ体力は無くなり、仰向けで浮いてるのが精一杯でした。声を出すと肺の空気が減り身体が沈みますが、短く大声で助けを呼び続けました。
その結果、奇跡的に気づいてくれた釣り人がボートを寄せて掴まり救助を呼んでくれて助かりました。
と言ってもその後、低体温症で救急搬送された時には心不全になりかけた危険な状態だったそうです。
真冬のボート釣りは救命胴衣だけでは確実に助かる装備とは言えません。
低水温では数秒から数分で泳ぐ体力は奪われます。
仮に自力で陸に上がれても、歩く事はおろか話をする事もできないほど衰弱してしまいますので、救助される以外助かる方法はありませ ん。
私も泳ぎには自信があったのですが、低水温ではなんの役にも立ちませんでした。
ボート釣りをする皆様へ、真冬の落水は生死に直結します。近くに釣り人のいる範囲で楽しんで下さい。
あの時助けていただいた方々本当にありがとうございました。

