『赤毛のアン』のミュージカル。よくよく考えたら、大学4年生の時に四季版(野村玲子さん)を観劇して、舞台照明ってきれいだなぁって、思って、仕事にしたいなぁと思ってしまって・・・結局合わないで辞めてしまったけれど、そんなきっかけの芝居でした。


人工の光や装置なのに、カナダの透明な空気感なんかが、写真で見たプリンスエドワード島そのもので、劇場空間の可能性に心を奪われた作品だったのでした。光で風景が作れるというか、光で空間を塗ることができるんだ・・・とか。


12年ほどの間、再演しても見ていませんでしたが、今回はなんとなく見たほうがいいような気がしてチケットを押さえていましたけど、こういう勘は外れないものです。すばらしい出来でした。


劇団四季『赤毛のアン』@自由劇場 上演時間約3時間

音楽:ノーマン・キャンベル 翻訳:吉田美枝/梶賀千鶴子 訳詩:岩谷時子

アン・シャーリー:笠松はる マシュー・カスバート:日下武史 マリラ・カスバード:木村不時子 ステイシー先生:五島由衣 ギルバート・ブライス:斎藤准一郎 ダイアナ・バリー 山西里奈


そもそも、『赤毛のアン』の原作小説はご多分にもれず、大好きでした。見ていて思い出しました!アンの空想がちだけれども、ちょっとおっちょこちょいでかわいらしいところとか、努力家なところとか、いじっぱりなところとか、自分と重ね合わせて読んだものでした。おいしそうなお菓子とかも出てくるし、外国への憧れの入り口みたいな本だったかも。


作品自体は、CDを聴く限りは、ウエストエンド版とほとんど変わらないと思います。きっと、世界の『赤毛のアン』だし、原作著作権者の厳しいチェックも入るのだろうなぁと思いながら見ていました。

これはオリジナル版CD。
あたしのあしたは あたしらしいあした
日本語舞台版の何がいいかと言うと、やはり岩谷さんの訳詩かなぁ。やっぱり格別です。かわいい歌詞ですね。(美女と野獣も、一度訳詩を直してほしい。もう遅いけど。)


特にグリーンゲイブルズへの道々、マシューと二人で馬車でおしゃべりをする曲

"Gee, I'm glad I'm no one else but me"を

「だから私は、いついつまでも、今の私でいい」と、


抜け感のある詩にしていて、本当にすごいなぁと思います。外人ぽい若干うるさめの「私」テイストを消し去った、孤児のアンに寄り添った歌詞かと。


笠松さんのアンも良かったです。ちょっと『サウンドオブミュージック』のマリアっぽいキャラで、彼女のキャラクターにあっているかと思いました。


あとは、日下さんマシュー。これはすごかった。初演で見たときも彼でしたが、ますます味が出てマシューっぽくなっていました。音程がどうとかは、(四季なのに)もはや問題ではなく、「あぁ、きっとマシューってこういう人だよね」って思わせるリアリティー。


アンへの愛情が滲み出していて、暖かい気持ちになりますね。木村さんのマリラもすばらしかった。今回は、この2人が抜群に作品を引っ張っていたと思います。


作品中、マリラが「女の子なんて、私たちの役に立たない」と、アンを孤児院に帰そうとしますが、マシューは「私たちが、あの女の子の役に立つかもしれないよ」と、ぽつっという場面、ストレートに響きました。

人は、自分のためにいるわけではなく、自分が誰かのために何かできているのかもしれないっていう考え方もあるって忘れてしまいがちだけど、大事だよなぁなどと思ったり。



アンは、自分を大切にしてくれるマシューやマリラ、ダイアナやステイシー先生たちに囲まれて、大きく成長しますが、その小さなエピソードがミュージカルでは、部分部分にせよ丁寧に描かれています。


自分が手にした幸せを行使して、どんどんグリーンゲイブルズに溶け込むアンがまぶしかった!

ステイシー先生の五島さんもかなり贅沢なキャスティングです。奨学金を勝ち取ったアンに「あなただから、誰がいなくてもやりとげた」と歌いかけるところは感動的でもありました。


なんだか、アンに教えてもらうことってこのような大人になっても、まだまだあるよなぁと思いました。