川で泳いでいる。大河だ。流れに沿って泳いでいるらしい。
長い時間泳いでいた。
こんなに泳いでいては、やがて河口だろうと思っていた。
だが、川の流れは河口には行かず、勢いを増して、大きな穴に吸いこまれて行く。
バリンジャー隕石孔もあろうかと思える大きさだが、穴の縁からは幾筋の流れが白糸の滝のように注いでいる。
川の流れは穴に落ち込むところで、勢いを増していたが、いざ落ちるところで、消えてしまい、霧か雲か知らぬフワフワとした物体に溶け込んでしまった。
エンジェル・フォールかよ。
と思ってみたが、空中に投げ出されるわけでもなく、しばらく水とも蒸気とも知れぬ物の中で揺らめいていた。
やがて、花のおしべのような物がたくさん並んでいるのが見えた。
それは人が収まることができるほどの大きさのカプセルのような形をしていた。
他にも人が数人泳いでいた。すると、みなそのカプセルに吸い寄せられるように入っていった。
フタが閉じられると、重みを増したためか、人間が収まったカプセルは、稲穂が垂れるように静かに沈んでいった。
自分もそのカプセルに身を滑り込ませると、同じように、ゆっくりと底の方に運ばれていった。
底まで下りて行くと、辺りは水が無く、乾いていた。
見上げると、水面のように天井が揺らめいていた。
不思議だ。水が上にある。
しばらく、離れて見てみると、大きな透明のドームがあって、その内側は水があるが、外側にはないのが分かった。
たくさんの人が見上げている。
観光地なのか?
壁伝いに階段があったので、登ってみた。
すると、穴の周りには避暑地か何かのように、デッキチェアが置かれ、無数の人びとが日光浴をしている。
陽光が燦々と降り注いでいる。
しばらく歩いて行くと、スキー場のリフトのような施設が見えてきた。
実際にはリフトではなく、輪タクのようなものだったが、リフトのように上からアームがあって輪タクを固定している。
輪タクの兄ちゃんは何故かみな中国人の若者だった。ユニフォームは黄色のTシャツと短パンだった。
中国語でどこに行くのかと尋ねると、「成田市内か、成田空港かのどちらかだ」と答えた。
輪タクには乗らず、ウロウロしていたら、背後から
「ここはシンガポールよ」
という女の声が聞こえた。