先日SNS上で見つけた「Suicide Tango」の文字と動画。
「自殺の聖歌」は映画になったくらい有名な曲なので知っていましたが「自殺のタンゴ」は初耳でした。
でも聴いてみれば知っている曲。
以前もブログに書いた事のあるロシアの監督ニキータ・ミハルコフ氏が製作・監督・脚本・主演をした「太陽に灼かれて」(原題Утомлённые солнцем 1994年露/仏)で 主題歌として使われていたタンゴでした。
動画冒頭で流れるタンゴがそれです。
タイトルなど意識していませんでしたが 手持ちのサウンドトラックCD(仏版)だと「Outomlionne Solntce(Tango)」と書いてあり「自殺」の文字らしき言葉は無し。
で Wikipediaへ。
この作品はもともとポーランドの作品で「最後の日曜日」(ポーランド語To ostatnia niedziela)というタイトルの曲だそうです。イェジィ・ペテルスブルスキ(1895-1979)が作曲し ゼノン・フリードヴァルト(1906-1976)がテキストを書き 1935年に発表されたタンゴなんだとか。
若者が恋人の心変わりを知り「最後にもう1度会いたい」と懇願するという内容で 自殺を示唆する所から「自殺のタンゴ」という通称が付けられ大ヒットとなったそうです。
タンゴと言えばピアソラ(タンゴをあまり知らないので「ピアソラは~云々」は言わないで下さいませ^^;)とかアルゼンチンというイメージだったので ポーリッシュ・タンゴなる分野を初めて知りました。
ヨーロッパでは1930~1940年代にタンゴが流行していたらしく この曲もちょうどその頃の作品で戦間期最大のヒット曲の1つだそうです。
ソ連でも人気が上がり訳詞版が出されますが 歌詞が退廃的との事でロシア語の新しい歌詞が付けられ3種類の作品が発表されました。そのうちのヨシフ・アルヴェク版「別れ」が特に人気で 歌詞の一節から「疲れた太陽」(Утомлённое солнце)という呼び名で広く知り渡る事となります。
現在に至るまでたくさんのアーティストに演奏され続けている「最後の日曜日」。
私が最近聴いているのは…原作からちょっと離れてる!?(笑)
所で 作曲をしたイェジィ・ペテルスブルスキはポーランドで初めてダンスオーケストラ「Orkiestra Artura Golda i Jerzego Petersburskiego」をArtur Gold(1897-1943 ポーランドのヴァイオリニスト・作曲家)と共に作ったそうです。きっと「最後の日曜日」も何度も演奏されたのでしょうね。。。
このArtur Goldですが ユダヤ人だった為にワルシャワゲットーへ入り後にトレブリンカ強制収容所に収容されています。
彼は収容所で演奏活動をしていました。その為に優遇を受け囚人たちの間ではよく思われていなかった様ですが 結局は彼も他の囚人と同様に殺されてしまいます。"アウシュヴィッツのオーケストラ"については本やTV番組などで見聞きした事はありましたが 何だかちょっとリアルに感じてしまいました
当時 収容所には音楽がよく流れていたそうですが そういう場所で演奏される曲は勇ましい曲が多いと思いきや流行歌などが多数演奏されたそう…。
もしかしたらユダヤ人の血をひく2人のアーティストから生れた「最後の日曜日」も ユダヤ人故に捕らえられたArtur Goldを始めとするアーティストたちによって ドイツ人を楽しませる為に演奏されたかもしれないと思うととっても複雑。
映画「シンドラーのリスト」でも使われているらしいので(シンドラーの誕生日パーティーのシーンだそうです) 近いうちにDVDを引っ張り出そうと思っています。
この映画では「自殺の聖歌」こと「暗い日曜日」も使用されています。
1935年にレコーディングされたハンガリー発のヤーヴォル・ラースロー(1903-?)が作詞 シェレシュ・レジェー(1899-1968)が作曲した曲「暗い日曜日」。こちらは恋人を亡くした女性が嘆き 自殺すると言う内容だった…かな。でも その内容から「自殺の聖歌」となったのでは無く この曲の陰鬱さに引きずられて自殺者が増えたからだそうです。これに関しては 当時の深刻な貧困やナチスの台頭などからくる不安に耐えかねての自殺率が上がった事によるものとし「都市伝説」との見方もありますが イギリスBBCは歌詞付きの演奏は禁止しています。
映画「暗い日曜日」(原題Ein Lied von Liebe und Tod 1999年 ドイツ/ハンガリ)も作られ 多数の日本人アーティストもカバーしているこの曲は 日本でも知られた存在だと思います。映画は映画館でツボに入りDVDが出た時は即買いしちゃいました
話はそれましたが・・・
タンゴとすら意識せずに 何となくロシア映画なのでロシアの楽曲と思い込んでいた曲はポーリッシュ・タンゴでした。この曲の歴史や携わった方々の人生を見て来ると ミハルコフ監督の映画に流れるタンゴにも重みが加わる気がしてきます。
ちなみに映画の邦題は「太陽に灼かれて」ですが 原題の「Утомлённые солнцем」
は 「最後の日曜日」のロシア語歌詞の中でも最も人気があった「別れ」の歌詞の一部であり通称でもある「Утомлённое солнце」(疲れた太陽)から取っているそうです。
ところで 本物(?)のロシアン・タンゴってあったっけ?と考えた時に思い浮かんだのは…。
アルフレート・シュニトケ(1934-1998)のタンゴ。
シュニトケはソ連のドイツ・ユダヤ系作曲家です。この方もソ連→ロシアの大きな変化の時に翻弄された方の様で…。
都市伝説的な繋がりのエピソードもお持ちです。「第九の呪い」の犠牲者。クラシックの作曲家に「交響曲第9番を作曲すると死ぬ」というジンクスがあるのですが シュニトケも絶筆が交響曲第9番でした。
そんなシュニトケは 原爆を投下された長崎を題材に《オラトリオ「長崎」》も書いています。そこには藤村や米田栄作の詩をロシア語に訳したものも使われているそうな。学校卒業制作で作られた曲は評価を得られず実演はだいぶ後の事 舞台である日本での初演は2009年ともっと後の事でしたが 読響の演奏を聴かれた方もいらっしゃるのではないかしら。私は聴いていません。お得意の(?)動画サイトで聴いています
シュニトケのタンゴは チェレスタ(・・・かな?)のどこかミステリアスな始まりが魅力的 思わず手でリズムを取ってしまいます。 ん~、、、ミステリアスと感じるのは「ハリーポッター」のせいかな
聴いていると曲に気を取られて何も出来ない(笑)
確か 浅田真央ちゃんも演技で使っていたと記憶しています。フィギュアファンの方にもお馴染みのタンゴかも。
国が変わればタンゴも変わる。イメージがだいぶ違うのが面白いです。
そして 家が変われば食べ方も変わる?
我が家では 育てた豆苗はnoelleの食べ物になります。
なぜか大好きなんです。買って来てすぐのは嫌いで 育てた新芽(?)は大好き
丸坊主にされる前に 補充しないとね