うちの親父は阪神ファンだったらしい。
「らしい」というのは、葬儀の際に親父の同僚の人に聞いて初めて知ったから。
後で確認したら当然お袋は知っていたが。
ひとりでに巨人ファンになっていた小学生時代の俺を連れて行ってくれたのは後楽園の巨人戦。
しかし今思うと対阪神戦は一度もなかった。
当然親父も巨人ファンだと思いこんでいたのだが・・・
中学くらいからは殆ど親父と会話していなかったので、ずっとそう思い込んでいた。
野球を好きになりだした俺のために時間を割き、自分は我慢して巨人戦ばかり見せてくれたんだな。
お袋によると定年したら一度甲子園に阪神戦を見に行くのが夢だったらしいがそんなささやかな夢さえ叶わず逝ってしまった。
たったそれだけのことなんだけど、何故か無性に
「この親父を超えるのは並大抵なことじゃできない」と思った。