皆さんこんにちは。
理学療法士・鍼灸師の李成浩です。
…春はどこに行ってしまったんでしょうか…
ここ数日ものすごく暑い日が続きますね?
桜は咲きましたが、春を通り越して夏のような陽気が続きますが、今週末からは天気は下り坂になり、換気が入ってくるようですので、服装や体調には気を付けてくださいね?
さて今回の整形疾患ブログですが、前回に引き続き上腕部に起こる骨折を取り上げます。
これも転倒や外傷によって起こる骨折ですので、頭に入れておいて損はないと思います。
どんな疾患でしょうか。
それでは一緒にみていきましょう。
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上腕骨には上端(骨頭部)、骨体(骨幹部)、下端と3つの部位に分けることが出来ます。
前回は骨頭部の骨折ですが、今回は骨幹部の骨折です。
この骨折の多くは上腕骨中央辺りで起きることが多いとのことです。
他に上腕骨の骨頭に近い部位では、がんの転移(骨メタ)や良性骨腫瘍などの病的骨折の好発部位とされています。
転倒時に手や肘をついたり、直達外力を受けることで骨折し、直達外力による骨折では横骨折(真横に骨折線が入るもの)や粉砕骨折の形態をとりやすいです。
また、自分の筋力によって起きることもあり、投球動作や腕相撲をしている時に起きると言います。
その際に起きた骨折は、螺旋骨折になりやすいです。(捻じる動作が入るため)
骨折した際の部位によって骨折片の転位方向が変わります。
その前に上腕骨に付着する筋肉を一つ挙げます。
この筋肉の働きにより転位方向が変わると言ってもいいでしょう。
三角筋(前・中・後部に分かれる)
起始:肩甲棘・肩峰・鎖骨の外側1/3
停止:上腕骨三角筋粗面
運動:肩関節を外転、前部は屈曲、後部は伸展
この筋肉を覚えておいてください。
この骨折が起きた場所が、三角筋の付着する場所である三角筋粗面より手前か遠い場所かで変わってきます。
下の図を見てください。
左は三角筋粗面の手前、右は粗面より遠い場所で起きたと仮定しています。
左は三角筋の働きで上腕骨を外に引っ張り上げる(肩関節外転)ので、上部骨片は内転して、下部骨片は上外側方向に転位します。
右は上部骨片に三角筋粗面が存在しているので、上部骨片を外側に、下部骨片は上腕二頭筋や三頭筋によって上方に引き上げられてしまいます。
このように骨折部の位置によって転位方向が変わる骨折は他にもありますので、覚えておきましょう(あまり起きてほしいものではありませんが…)。
さて 、この骨折によって起きる合併症もあります。
この図は上腕骨の後面を表しています。
中央付近に橈骨神経溝が有るのがわかりますでしょうか?
骨折が起きることでここを通る橈骨神経を損傷する可能性が有ります。
それによって橈骨神経麻痺を引き起こすことが有りますが、一過性のことが多く保存療法で2~3か月観察することになります。
治療に関してですが、原則として保存療法が適用になります。
厳密な整復は必要でなく、変形も成人で15°・小児で20°以内に留めることが出来れば、肩関節の動きで代償が出来て、支障なく日常生活は過ごせるとのことです。
真横に骨折するよりも、斜骨折(斜めに骨折線が入る)や螺旋骨折のように骨折片同士の接触面が多い骨折ほど、骨の癒合性は良いと言われています。
hanging cast法の最も良い適応であり、ギプス包帯の重量により骨折部の軽度の変形矯正が期待できますが、過剰な牽引にならないように注意します。
引っ張りすぎると、うまく癒合できなくなる可能性が出てしまいますね。
装着当日から振り子運動を開始して、6~8週でギプスを除去したのち、自動運動を行います。
横骨折や粉砕骨折は骨癒合に長い時間(3ヶ月程度)を要するので、長期間固定すると肘関節の硬縮が問題となるので、肘関節がフリーになるfunctional brace(下図)を使用することが推奨されます(functional:機能的な 、brace:装具、補強)。
手術療法の適応はまれであり、
①開放骨折
②病的骨折
③固定性の極めて悪い骨折
④橈骨神経麻痺の回復徴候のない場合
に適応となります。
手術は髄内釘が望ましく、キュンチャー釘、Rushピン、キルシュナー鋼線などが用いられます。
術後の理学療法は、前回の上腕骨近位端骨折の理学療法に準じて行われ、骨が癒合するまでは上腕に回旋力がかからないように注意しながら行われます。
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いかがでしたでしょうか。
腕相撲なんてしばらくやっていませんが、力比べでよくやっていましたし、動画で腕相撲中に腕が有り得ない方向に曲がっていくのを見ると、こうやって骨折してしまうのかと衝撃を感じました。
力自慢もほどほどにしないとですね?
(^▽^;)
さて、前回問題を出したのを覚えているでしょうか。
「長距離走者と短距離走者。同じ『走る』スポーツをする人ですが、身体の使い方で明らかに違う部分が有ります。そこはどこでしょう?」
でしたね。
自分も専門としているわけではありませんが、ここだけは明らかに違うのではという場所が有ります。
正解は…
足趾~足関節(足首)です。
長距離走者はショックを吸収しながらも、足底部全体を使い、足首を柔軟に使いながら、なるべくスタミナを温存しながら走ります。
しかし、短距離走者はいかに早くゴールに向かうかを競う競技であるので、足趾~足関節を柔軟に使ってしまうと、身体を前に押し出す力が分散してしまうため、結果スピードが出なくなってしまいます。
ヒントに出した用具を見てみましょう。
左はマラソンやランニングに使われるシューズで、右はスプリントシューズ(短距離ランナーが使うシューズ)です。
下の図はそれぞれ床にシューズを置いたと仮定した図です。
マラソンシューズは全体が接地しているのに対しスプリントシューズは足趾からよくて土踏まず辺りまでしか接地していません。
ココからも分かる通り足趾に力を入れて、飛び出すように走っていくのです。
この時足首が曲がってしまうと、せっかく足趾に伝えた力が逃げてしまうので、足関節を固定した状態で接地するといわれています。
他にも腕の振りや下肢・身体全体の使い方で違う所が有るけどそこは?と思われる方もいらっしゃると思いますが。
今回は足趾~足関節の使い方を説明したかったので、他の部位に関しては専門に取り扱っているところが有ります(ミズノなどスポーツ用品のHP)ので、そちらを参照してください。
きりが良いところになりましたので、また次回の整形疾患ブログでお会いしましょう。
(o´・ω・`o)ノシ