皆さんこんにちは。

理学療法士・鍼灸師の李成浩です。

 

12月になり、気温が一気に冷え込みました。

 

この間まで冬が来るのかわからない天気が続きましたが、ようやくらしくなったと言いますか…

 

もうちょっと季節の変化はゆったりとしてほしいものですね?

 

 

さて、今回お話しする疾患ですが、以前ブログで紹介したものの内、同じ俗称を持つものについてお話ししたいと思います。

 

どんな疾患でしょうか。

 

それでは一緒にみていきましょう。

 

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以前のブログで上腕骨内側上顆炎、俗称「野球肘」を掲載したと思います。

 

この「野球肘」ですが、別の疾患でも同じ俗称で呼ばれるものがあります。

 

それが今回紹介する「離断性骨軟骨炎」です。

他にもある野球肘!!

 

 

この疾患は成長期にある10代男性に多く、肘関節を多用するスポーツを行う人に多いとされます。

 

特に投球動作があるピッチャーに多いことから、この疾患も野球肘となるようです。

 

上腕骨小頭の関節軟骨の一部が剥がれ落ちて、その軟骨が疾患の経過とともに関節内で遊離体となります。

 

下図の上腕骨小頭の部分の軟骨が剥がれてしまいます。

そのため別の俗称もあり、関節ねずみとも呼ばれるようです。

 

自覚症状としては肘の外側に痛みが発生し、特に運動中に起こりやすく、安静にしていると軽くなり次第に消失します。

 

しかし、側に気にせず運動を継続した場合、痛みが強くなるばかりか肘関節の運動制限が起きてしまいます。

 

さらに関節面の不整な状態が長期に渡って続いてしまうと、関節の変形が起きてしまい、最終的に動かすことすらままならない状態に陥ってしまいます

 

この上腕骨小頭に起こる障害は初期には無症状で、痛くて受診した時にはすでに進行していることが多いので、投球後に肘関節外側に痛みや腫れが出た場合、早期に治療することが重要です。

 

 

さて、なぜ軟骨の一部が剥がれ落ちるのかというと、投球動作の加速相において肘関節に外反の力が作用して、その部分に圧迫と剪断(すべる)力がかかります。

その動作を繰り返すことで軟骨に亀裂が入り、その亀裂に関節液が流れ込むことで空間が広がり、さらに癒合しにくくなることで剥がれ落ちてしまいます。

 

剥がれ落ちた軟骨片は関節液に栄養されるので、次第に大きくなり遊離体となります。

 

この遊離体が関節の間に挟まると、突然関節に痛みが発生し、肘関節を動かせなくなります。

(下図正面から見て上側が上腕骨、左下が橈骨です)

この疾患の診断時の評価としては、問診時に痛みが発生した契機や期間など必要な情報を聞き取り、実際に肘関節を動かしてみて、動作中に引っかかりがあるかどうかをチェックします。

 

その後は肘周囲の周径や可動域の測定、関節部の圧痛、外反ストレスを与えた際に痛みが起こるかどうか、関節を動かした際に固まってしまうかどうか(locking)、橈骨頭が肥大しているかどうか、遊離体の触知などの検査をします。

 

検査後は疾患の状態に合わせて治療が行われ、初めに保存療法が選択されますが、原因と思われるスポーツの禁止と患部の安静を行わせます。

 

成長期にある10代の男子は無理をして動いてしまう場合が有るので、疾患についてしっかり把握してもらい、安静を徹底して、修復するのを待ちます。

 

安静にしていて痛みが出なくなった時期から関節可動域運動を行いますが、肘の外側の痛みに気を付けながら、肘関節に外反のストレスがかからないように行います。

 

基本的に自力での自動運動を行わせ、痛みが出ない範囲で負荷量を上げ、筋力トレーニングも行います。

 

長期間の運動禁止や安静に対して不安を持つ者や、6~8か月の安静を行っても痛みがおさまらない場合、手術療法が選択されます。

 

X線像で分離している部分や遊離体の大きさなどを確認し評価します。

 

この疾患の進行として、

1)透亮期

2)分離期

3)遊離期

の3期に分かれます。

 

透亮期では軟骨が剥がれかけた部分が薄くなっていることが確認できます。

(手術の様子も載せようと思いましたが、不快に思う方も居られると思いましたので、掲載しませんのでご了承ください)

 

透亮期に対しては骨軟骨片への血流改善を期待して骨穿孔術(ドリリング)を行います。

この方法は非常に小さい傷で手術を行うことができます。

 

分離してはがれかけた骨軟骨片がまだ正常に近い状態で残っている場合(分離期前期)、自分の骨で作った釘(骨釘)や骨に変わる人工のピンなどで固定します。

また、骨軟骨片が変性して癒合しそうもない場合(分離期後期~遊離期)はこれを切除します。

欠損した部分には膝から骨軟骨を円柱状で採取して肘に移植します。

 

術後は2~3週間ギプス固定し、固定中も肘以外の部分を動かし、循環や筋力の向上を図ります。

 

4ヶ月でバッティング、6ヶ月での投球開始を目指す病院があるそうです。

 

先程もありましたが、動作時に痛みが出現している時にはすでに進行している可能性がありますので、身近にスポーツを行っている子供で、肘の外側に痛みがあると聞きましたら、この疾患のことを思い出してください。

 

その後の活動に制限なく生活していくためにも、早期に発見し、早期に治療開始することが何よりも重要です。

 

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いかがでしたでしょうか。

 

肘の痛みと言えど、様々な疾患が有ります。

 

その中でも同じ俗称を持つ疾患もあるという事でした。

 

 

さて、これからのブログの進行ですが、作成者が1人増えたことで4週に一回となりました。

 

整形疾患ブログは今回のお話が今年最後ということになります。

 

本年もありがとうございました。

 

来年からもどうぞよろしくお願いいたします。

ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ