長く続く事はそれだけで価値があり大切なもの・・・
56年の歴史のローリング・ストーンズ
ザ・ローリング・ストーンズは今年で結成から56年を迎えるスーパーロック・バンドです。
今年もヨーロッパでのツアーが発表されるやいなやチケットはあっという間に売り切れました。
あらためて言うまでもなく56年という月日はとてつもなく長いものです。
ザ・ローリング・ストーンズのボーカリストのミック・ジャガーは雑誌のインタビューにこう答えていました。
Q: なぜザ・ローリング・ストーンズというバンドはこんなにも長く続いているのでしょう?
ミック・ジャガー: ザ・ローリング・ストーンズはずっとうまくやってきたバンドだってことだろうね。もちろん浮き沈みはそれなりにあったけれども、大きな成功を収めているし、とても人気がある。アンチもいない。もしもザ・ローリング・ストーンズが皆から支持されていないバンドだったら、間違いなくとっくに消滅していたと思うよ。
「アンチがおらずに長く活躍する」
ミック・ジャガーはさらっと言ってのけていますがそれは普通に出来る事ではありません。人は好き嫌いがあり特に音楽においてはその好みが如実に出るからです。
日本には安室奈美恵がいる
ザ・ローリング・ストーンズほど長期ではないですが日本でも「アンチがおらずに長く活躍する」アーティストがいます。2018年9月16日にデビューから26周年をもって引退を発表している安室奈美恵さんです。
安室奈美恵さんの曲はどんな世代でも1曲くらいは必ず知っているという類まれな存在感のアーティストです。おそらく彼女のような女性アーティストは今後二度と出ないだろうとすら言われています。
是非一度、安室奈美恵さんの曲をyoutubeで検索してみて下さい。
動画の下にはコメント欄があるのですがどの曲も延々とコメントが続きます。
そのコメントにはアンチは見当たらず、興味深いのは特にファンでない人からも絶賛のコメントが寄せられているのです。
他のアーティストのコメント欄と比較すると一発で分かります。
どんなアーティストにも必ずアンチがいて手厳しいコメントがたくさんあります。
そんな安室奈美恵さんの魅力は色々ありますが何と言ってもライブです。
MC無しで20曲以上を踊り、歌います。クチパクなんて一切なし。さらに歌唱力もダンスも若い頃より良くなっているという進化は驚異的です。
プロ中のプロでありアーティストの中のアーティストである彼女ですが出身地である沖繩への想いは人一倍強いです。
引退する安室奈美恵に贈られたもの
そんな彼女は2018年9月16日に引退します。そして、四半世紀に渡りトップアーティストとして活躍した彼女に沖縄県は県民名誉賞を贈りました。
その時、表彰状とともに記念品として贈られたのは沖縄の工芸品の金細工による「房指輪」と「ジーファー(かんざし)」でした。
ご存知無い方のために今回は房指輪を採り上げていきます。
房指輪とは?
写真引用:M.A.P.after5様
房指輪とは?
調べてみると大変歴史のあるものでした。
元々は中国から伝わった習慣であるようです。
現在の結婚指輪と違い、房指輪を贈るのは、新郎ではなく両親で、
指輪はペアであり、中指に嵌めていたそうです。
この房指輪は元々は首里の王族や士族などごく一部の高貴な家の結婚式の際に親から子に贈られていたものだそうです。
縁起のいい7つのモチーフに嫁ぐ我が娘が幸の幸せを託して贈られた房指輪。素敵ですよね!
その7つのモチーフの意味ですが
魚:食べ物に困らないように
ざくろ:子孫繁栄
桃:不老長寿
扇:末広がりの福
花:生活の彩り
蝶:天国の使者
葉:着る物に困らないように
という意味があるそうです。
見ていただければ分かる通りこの房指輪はたいへん美しい
ものですが普段使いするのは難しいです。
婚礼の時に贈っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
現在、房指輪は琉球舞踊でよく使用される
実はこの房指輪をよく見る事が出来るのは琉球舞踊です。
琉球舞踊の有名な「諸屯(しゅどぅん)「かせかけ」や「作田(ちくてん)」など他にも色んな曲でこの房指輪は使われています。
なぜ、琉球舞踊にこの房指輪が使われるか?という疑問があり調べてみました。
婚礼の時に親から贈られたというのは先に書きましたが同時に房指輪は女性の正装の際の装飾品でもあったそうです。
琉球舞踊は元々多彩な芸能のある島である沖繩で育まれた素晴らしい文化遺産です。
15世紀頃、冊封(中国がその属領の主を認証する儀式)で琉球を訪れる中国使者を歓迎する大事な外交的な側面も担っていました。
そのために首里王府は「踊奉行(おどりぶぎょう)」という大変めずらしい役職を準備したほどです。
ですから琉球舞踊の際の衣装は正装しているものが多いため房指輪も必然的に使われたのでしょう。
静かな踊りの中でスッと手を動かした際にサラサラという何とも言えない美しい音を出すこの房指輪は視覚的には目立たなくても存在感は素晴らしいものがあります。
きっと、中国から来た冊封使も房指輪美しさに魅了されていたに違いないでしょうね。
絶滅危惧種の金細工職人
ちなみに琉球王朝の時代から首里城の周りには房指輪やジーファーなどを作る「金細工(くがにぜーく・かんぜーく)」という工房が多くあったそうです。
琉球王朝時代、王府の命を受け、鉄以外のすべての金物細工を作っていたという歴史ある職業だそうです。しかし沖縄戦などにより道具や作品が失われ、金細工は一時絶滅してしまいました。
しかし現在、首里石嶺に工房をもつ「金細工またよし」の7代目・又吉健次郎さん(83)は沖縄で唯一、金細工職人として、ジーファー(かんざし)や房指輪(ふさゆびわ)などを作り続けています。
写真引用:那覇まちまーい
写真引用:misaki_okinawajazzfrulute
安室奈美恵さんに沖縄県から贈られた房指輪とジーファーはこの又吉健次郎さんの作品です。
又吉さんの家は代々この金細工職人(くがにぜーく)でしたが健次郎さんの父にあたる6代目の金細工を復元したのは、健次郎さんの父で6代目の誠睦さんでした。
誠睦さんは戦火が激しさを増す中、幾つかの道具を抱えながら山原まで避難し命からがら難を逃れました。先祖代々受け継がれてきた道具を守り抜き、息子の健次郎さんがそれを受け継ぎ現在、父と同じ金細工を作り続けています。
私も又吉さんの作品を所有しているのですが純銀に繊細な模様が施してあり、比較するのは失礼ですがプレスで出来た廉価品とは風格がまるで違うものでした!
写真引用:那覇まちまーい
又吉さんは今でも先代と同じ道具と方法で頑なに昔ながらの作品を作り続けています。
私が又吉さんに作っていただいた房指輪です。
美しい中に、沖繩の栄華と苦しみが入り混じった味わい深い作品だと思います。
沖繩でだからこそ生まれた作品といえると思います。
安室奈美恵さんの「Baby Don't Cry」
という曲にこのような歌詞があります。
だってそうして人は何度でも
闇に立ち向かう強さあるはず
与えられて選ぶんじゃなくて
その足で 踏み出して
(今でも)歴史に翻弄されていますが
私達は自分たちで選択し歩み続ける事が
一番大事なんだなぁと思います。
房指輪を見ているとそんな風にささやかれている気がします。
最後に安室奈美恵さんではなく(笑)
coccoさんと「金細工またよし」の又吉健次郎さんとの対談をご覧下さい。
琉球の金細工がきっと大好きになると思いますよ!
それではまた!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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