Deguejo (1966)

 

"Degueyo" Deguello" De Guello" などの表記揺れはありますが、1966年イタリア製作の西部劇です。いわゆるマカロニウエスタン。

日本では「荒野のみな殺し」のタイトルで1967年に公開されました。

 

なかなか物騒なタイトルですね。

そもそも "Degueyo" はスペイン語の "deguello" (斬首)が元になっています。

ヨーロッパでは軍隊や狩猟の合図にラッパで合図する習慣があり、おそらく古くは角笛で行われていたのでしょう、Bugle Call (Bugle はラテン語のBuclus=小鹿に由来する、小型の管楽器)と呼ばれております。

このBugle Call の一つが、かのアラモ包囲戦(1836、メキシコ共和国 vs テキサス分離独立派)でメキシコ共和国軍が奏でた「騎馬突撃開始」を意味する "El Deguello" です。

 

1947年に出版されたマーサ・ケラーの "Brady's Bend & Other Ballads" で "Deguelloは絶望の叫び" と著され、またこれを元にしたフォークソング "No quarter, no quarter" によって「虐殺の歌」としての deguello が人々に知れ渡ったそうです。

 

そして映画にも "deguello" が登場します。

巨匠ハワード・ホークス、名優ジョン・ウェインという最強コンビによる「リオ・ブラボー」(1959) でディミトリオ・ティオムキンが作曲した deguello は日本でも「皆殺しの歌」としてシングルリリースされる人気曲となりました。

 

 

そして1964年。セルジオ・レオーネ氏が世に出した「荒野の用心棒」で世界的マカロニウエスタンブームが到来するわけですが、クライマックスのシーンでレオーネ氏が、このティオムキン作曲の "Deguello" を使用したいと言ったところ、サントラ担当のエンニオ・モリコーネ師が「他人の曲を使うくらいならこの映画に関わるの辞める」と言いだしたのは有名な逸話。

そして「代わりにそれっぽい曲を頼むよ」てなわけでできあがったのが「荒野の用心棒」

 

その後に製作された数多くのマカロニウエスタンは、これを基調にしているせいか、劇中で "deguello" 的な楽曲が登場することが多いのです。

 

音楽的にはスペイン音楽の影響がとても強い楽曲ですが、ロケ地がスペインでありスタッフも多くのスペイン人が関与し、また西部劇と言ってもメキシコ国境付近が舞台の物語が多いためか、どの作品においても "deguello" の響きは映像に妙にマッチしています。

というか "deguello" はマカロニウエスタンを象徴する楽曲あるいは西部劇の「決闘シーン」の象徴にまでなった感があります。

 

ところが、「突撃ラッパ」たる "deguello" が、こんな哀愁のメロディなはずはありません。

実際は以下のようなスタイルだったと言われています。

 

2004年に製作された "The Alamo" では、勇壮なマーチで再現しています。

 

そんな "deguello" をタイトルに据えた本作。

 

"El Deguello" が「皆殺しの歌」ですから

邦題「荒野のみな殺し」となったのはごく自然なこと。

 

そして本作の終盤には「みな殺し」のタイトルに違わぬ凄惨な戦いが用意されております。

 

 

監督はジュゼッペ・ヴァリ氏

(ジョセフ・ウォーレンとしてクレジットされてます)

Giuseppe Vari (as Joseph Warren) 1924-1993

ローマ生まれの彼は編集者および脚本家として映画界でのキャリアをスタートさせ、1953年に監督デビュー。以来30本近い作品でメガホンをとりました。

マカロニウエスタンでもその手腕が十分に発揮され、"L'ultimo killer" (1967) や "Prega il Morto e Ammazza il Vivo" (1971) など、いずれも印象的な7本が残されています。

 

また脚本には、かのセルジオ・ガローネ氏が名を連ねております。

Sergio Garrone (1925-2023)

「十字架の長い列」や「ジャンゴ・ザ・バスタード」の監督として有名ですね。

 

主演はジャコモ・ロッシ・スチュアート氏

(ジャック・スチュアートの名でクレジット)

Giacomo Rossi Stuart (as Jack Stuart) 1925-1994

運動神経抜群で数々のスポーツに親しんだ彼は20台半ばで渡米、かのアクターズスタジオで演技を学んだそうです!
イタリアに帰国後30歳で映画初主演、以来アクション系を中心に数多くの映画に出演されました。

マカロニウエスタンに於ても「赤い砂の決闘」や「グランドキャニオンの大虐殺」といった初期から出演しており、本作以外では "Uccidi Django... uccidi per primo!!!" で主演。また「五人の軍隊」や「荒野のドラゴン」「新さすらいの用心棒 ベン&チャーリー」にも名を連ねております(ノンクレジットながら、かの「ゴッドファザー」にも出演)。

 

氏が演ずるのはノーマン・サンデルという男。
郊外でのどかに暮らす彼の元に突如、助けを求める老いた男が…しかしすぐさまやって来た追っ手にその男は銃撃され死亡、同時に父親も撃たれて亡くなってしまいます。

死に際に男が残した「クック大佐」を頼りに、父の仇を討つ旅が始まります。

 

同行する仲間が二人。

一人目はフランク・ドネル。ノーマンの友人。

演ずるはダニエレ・ヴァルガス氏

Daniele Vargas (1922-1981)

ボローニャ出身の彼は高校(なんと、かのピエール・パオロ・パゾリーニ氏と同級生とか)卒業後、名門ボローニャ大学の医学部に進学、卒後一時期医師として働いていたそうですが演技への夢を諦められず、ローマに移住しペプラム映画への出演することからキャリアをスタート。その後1988年まで数え切れないほどの映画で活躍されました。マカロニウエスタンでも主に悪役として印象深い役者さんです。

 

もう一人はローガン。クック大佐を知る男。

演じたのはホセ・トーレス氏

José Torres (1925-)

御歳99歳、ベネズエラ初の俳優で1941年から2016年まで、ヨーロッパや南米各国で無数の映画に出演したレジェンドです。単身渡欧し数々のチャレンジの末にマカロニウエスタンで頭角を現し、母国に凱旋したという、現代日本で言ったら真田広之さんのような素晴らしい役者さんだと思い僕はリスペクトしております。

 

イケメンの主人公と二人の悪役俳優という三人組の旅路。この時点でワクワクが止まりませんが、さらにクセ者が加わります。

盗賊に襲われ一人悲嘆に暮れていたウィスキーの行商人フォーラン。

演じたのはリカルド・ガローネ氏

Riccardo Garrone (1926-2016)

本作で脚本を共同執筆したセルジオ・ガローネ氏の弟。国立芸術アカデミー出身、数多くの映画で多岐にわたる配役をこなし活躍した他、演劇の分野や声優としての評価も高いようです。

 

クック大佐を探して一行が行き着いたのはデンジャー・シティ。しかし町は荒廃しさながらゴースト・タウン。

デンジャー・シティなんて、まず名前からして物騒ですものね…

 

出迎えたのはサルーンのオーナーである謎の美女ジェニー。

ダナ・ギア女史が演じております。

Dana Ghia (1932-2024)

20代で歌手デビュー、1960年代に入って女優業にも精を出し数多くの映画に出演。マカロニウエスタンでは「デスペラード」や "L'ira di Dio" 「風来坊 花と夕日とライフルと」などでお馴染みです。80年代に入ってからはTVでも活躍されました。

 

ジェニー曰く、デンジャーシティは残虐な盗賊ラモンの一味によって略奪の限りを尽くされたのだ、と。男たちは殺されるか誘拐され、女子供しか残っていない、と。

 

そんな中、ラモンの愛人になったはずの女ロージーが逃げ戻ってきます。

演じたのはロージー・ジッケル女史

Rozy Zickel (?-)

1963年から1968年までに6本の映画に出演したことが知られています。マカロニウエスタンでは本作の他 "un buco in fronte" (1968) のアデリータ役。ちなみにこの作品もジュゼッペ・ヴァリ監督作品です。

 

ロージーを探してデンジャーシティに辿り着いたラモン。

凶悪な盗賊のボスを怪演したのはダン・ヴァディス氏

Dan Vadis (1938-1987)

ギリシャ系アメリカ人で中国生まれのボディビルダー、もと米海軍兵士というなかなか情報量の多いプロフィールを持つ彼は、ペプラム映画の黄金時代にイタリアで俳優として大成、その後はマカロニウエスタンの悪役に活路を見いだし(「さいはての用心棒」や「ガンマン渡世」"Dio perdoni la mia pistola" )、さらにハリウッドに凱旋しイーストウッド作品(「荒野のストレンジャー」「ガントレット」「ブロンコビリー」)で活躍しました。

 

ラモンがデンジャーシティを襲撃する間にアジトに潜入したノーマンはクック大佐を救出。

ジュゼッペ・アドバッティ氏が、この初老の南軍大佐を演じております。

Giuseppe Addobbati (1909-1986)

戦前のイタリアの演劇界および映画の分野で大活躍、戦後もマカロニウエスタンやホラー、アクション映画などジャンル問わず相当な数の映画に出演されております。

 

しかいクック大佐救出の際に両手に致命傷を負ったノーマンは、なんとほぼ戦力外になってしまいます(主人公だっていうのに…)

 

 

クック大佐は南軍の軍資金の隠し場所を知る男であり、ゆえにラモンに狙われ拷問されていたという。

町を救うためにやむなく大金をラモンに渡す決意をしたものの、肝心の大金はすでに何者かによって奪われていた…

 

後がないデンジャーシティ。

 

女たちも銃を手に、バリケードを作ってラモン軍団の襲撃に備えます。

町は囲まれ逃げ場は失われてしまいました。

まさにアラモの包囲戦を彷彿とさせる絶望的な状況。

 

最後の酒を酌み交わすフランクとローガン。

 

やって来たラモン軍団。

人質(町の男たち)を返還すると見せかけて、駆け寄った女たちもろとも射殺。

 

そして "Degueyo!" のかけ声と共にラモン軍団の突撃開始。

 

ここからは凄惨な地獄絵巻。

敵も味方も一人死に、また一人死に…

 

ちなみにデンジャーシティの不遇な女達の中には、他のマカロニウエスタンでも活躍するミラ・スタニック女史やエリカ・ブランク女史もいます。

 

まさに deguello 

ラモン一味の屍が積み上がるだけでなく、フランクもローガンもクック大佐も、町の女達も次々に凶弾に倒れる中

実は軍資金の在処を知り隠していたのは…

 

ジェニーだった。

 

そして、実は米軍エージェントだったフォーランが詰め寄るが…

めざといラモンに見つかり射殺。

命乞いするジェニーにも容赦の無いラモン。

 

さらには唯一残ったラモン軍団の腹心まで射殺し

大金独り占め。

 

なんとか一命を取り留めていたロージーも、とどめを刺されてしまう…

 

ロージーに心寄せていたノーマンが怪我も厭わぬまま、思わず飛び出したものの、百戦錬磨のラモンの前に風前の灯火

 

万事休すと思われたとき

ノーマンを救ったのはラモンに母親を殺害された幼い男の子でした。

そう、ロリス・ロッディ君ここでも大活躍。

Loris Loddi (1957-)

4歳で銀幕デビューの天才子役。映画、演劇、TVに吹き替えと全方向で未だに活躍し続けております。

「荒野の10万ドル」の、「帰ってきたガンマン」の、あの子です!

 

彼の機転でついにラモンを倒したノーマン。

 

身寄りを失った二人は、寄り添うように町を出て行くのでした…めでたしめでたし。

 

いやはや壮絶なクライマックス。

 

ドラマチックな物語をさらにドラマチックに盛り上げるのがもの悲しくも力強い響きのサントラ。

メインタイトルは、まさしく deguello、そして劇中曲はかのドヴォルザークの交響曲「新世界より」の第三楽章の印象的なジングルを引用して緊張感のある空気を生み出しております。

(おなじみ僕の師匠 Yass氏のチャンネルより)

 

音楽担当はアレッサンドロ・デレヴィツキー氏

Alessandro Derevitzky (1909-1974)

1930年代後半から映画音楽の分野で活躍、1960年代以降は実験音楽をメインに活動。

マカロニウエスタンを担当したのは本作のみのようです。

 

メインタイトルの素晴らしいトランペットは、そうマカロニ金管楽器請負人のミケーレ・ラチェレンザ氏が吹いております。

Michele Lacerenza (1922-1989)

音楽一家に生まれ育ち、エンニオ・モリコーネ師の右腕として数々の名演を残しつつ自らも作曲者として映画音楽に寄与したレジェンドです。かつてセルジオ・レオーネからニニ・ロッソ「じゃない方」扱いを受け、涙ながらに鳴らした「荒野の用心棒」のトランペットが、未だ我々の涙腺を刺激し続けているのです!

 

さて、こんな「荒野のみな殺し」

日本版DVDもリリースされております、気になる方は是非ご鑑賞くださいませ。

 

そしてわたくしも、この素晴らしい作品の音楽を

自分ありにカバーしてみました。

トランペットは吹けないのでギターで代用してあります。

ぜひお楽しみいただけたら幸いです。

 

いよいよ寒さも本格化してきました。

ご自愛のほどを。

 

アディオス、アミーゴ!

(^-^)

 

 

 

 

 

Quel caldo maledetto giorno di fuoco (1968)

”あの燃えるような暑い日"

イタリア製西部劇いわゆるマカロニウエスタンです。

 

英語圏では "The Gatling Gun" と題されております。

 

スペイン版は "La ametralladora" (機関銃の意)

 

そうです、この映画は西部劇に幾度となく登場し猛威を振るった19世紀の最強殺戮兵器、ガトリング銃にまつわるお話。

 

南北戦争当時、北軍が秘密裏に開発した新型兵器ガトリング銃。これが完成した夜に関係者三人が何門下によって殺害され、開発者リチャード・ガトリングが誘拐されるよいう事件が起こります。

 

ガトリング氏を演じたのはエンニオ・バルボ氏

Ennnio Balbo (1922-1989)

舞台俳優としてキャリアをスタート、その後映画やTVで主に悪役俳優として活躍されました50本ほどの作品に名を連ねました。マカロニウエスタンでもお馴染みの顔。

 

もちろんリチャード・ガトリング氏は実在の人物。

(劇中のガトリング氏にちょっとは似てますね)

Richard Jordan Gatling (1818-1903)

発明家だった父親(本業は農夫)の影響もあって若い頃から自身も発明に精を出し、漁師や書記官、教師などの職を転々としながら発明を続けたそうです(医学博士号を獲得しましたが、医師として活動したことは無かったそうです)。

南北戦争当時「戦争の早期終結」を願って「1人で100人分」の兵力を、というコンセプトで機関砲の開発に着手、1861年に試作品を完成させ、翌年 "Gatliong Gun Company" を立ち上げ北軍に個人的に納入。実際の戦場でセールスマンが南軍兵に向けて発砲し威力をアピールしたという逸話も残っております。1866年以降は正式に軍に納入をはじめましたが1870年に特許をコルト社に売却。1897年にコルト社に完全吸収されるまで同カンパニーで機関砲施策を続けたそうです。その後もトイレや農機具、羊毛洗浄機、蒸気トラクターなど発明を続け、アメリカ発明家協会の会長を務めたそうです。

 

1862年型のガトリング銃

 

話を物語に戻します。

事件の唯一の生還者はクリス・ターナー大尉。

主人公である彼は、事件の関係者と見なされ反逆罪で収監され絞首刑を言い渡されてしまいます。

演じたのはロバート・ウッズ氏

Robert Woods (1936-)

アメリカ生まれの俳優さんですが、比較的早期に渡欧しマカロニウエスタンをはじめ数々のヨーロッパ映画で活躍されました。なんと主演作は42本とのこと。「復讐の用心棒」のペコス役が印象深いです。

ちなみに本作では過酷なスタントが随所に出てきますが、すべてご本人がこなしたとのことです。凄い!

 

彼の無実を知り、事件の調査を依頼したのがピンカートン氏

演じたのはトム・フェレギー氏

Tom Felleghy (1921-2005)

ハンガリー出身。母国で舞台演劇を学び1956のソ連侵攻を機にオーストリアからイタリアに移住しペプラム映画にデビュー。その後性格俳優として何と200本を超える映画に出演されたそうです。

 

ちなみにピンカートン氏も実在の人物。

(こちらはあまり似ていませんね)

Allan Pinkarton (1819-1884)

スコットランド生まれ。23歳でアメリカに移住し、たまたま犯罪者集団を保安官に通報したのをきっかけに探偵としてシカゴ警察に雇われ、1950年には北西部警察局を設立、同社はのちにピンカートン商会を経て国立ピンカートン探偵社に成長。リンカーン大統領の暗殺を阻止するなどの実績で名を上げました。

リンカーン大統領(中央)とアラン・ピンカートン氏(左)

 

再び話を物語に戻します。

ピンカートン氏の密命によりクリス・タナーの身代わりとしてジェレマイア・グラントが入獄。

演じたのはフリオ・メニコーニ氏

Furio Meniconi (1924-1981)

ローマ生まれの。1950年から1976年までの間に、ペプラム、マカロニウエスタン、ユーロクライムなどの娯楽映画の分野で数多くの出演を果たしました。

 

クリス・タナー本人はジェレマイア・グラントと自らを偽って脱獄し現地入り。

彼に協力するのは表向きは町医者を営む北軍スパイのドクター・カーティス。

演じたのはロベルト・カマルディエル氏

Roberto Camardiel Escudero (1917-1989)

スペイン出身。1952年から娯楽映画など幾多の映画やTVでバイプレイヤーとして活躍。マカロニウエスタンでもお馴染みの顔で「南から来た用心棒」や「情無用のジャンゴ」などで印象的なキャラクターを好演しております。

 

しかし、クリス・タナーは表向き脱獄囚。生真面目な北軍将校ジョナサン・ウォレスが刺客として追ってきます。

演じたのはティツァーノ・コルティーニ氏

Tiziano Cortini (1928-1996)

イタリア生まれの俳優さんで、主に娯楽映画の分野への出演が多く、また様々な作品で助監督としてもクレジットされております。本作では「ルイス・ジョーダン」の名でクレジットされております。

 

事件の首謀者は混血のならず者タルパス。

ジョン・アイアランド氏が演じております。

John Ireland (1914-1992)

カナダ生まれ、幼少期にNYに移り住み19歳で水泳パフォーマンスで芸歴デビュー。その後映画俳優としての実力がハリウッドで開花。西部劇をはじめとするヒット作に次々出演しオスカー助演男優賞にノミネートされるほどに。1960年代後半からは活動拠点をイタリアに移し、こちらでも数多くの作品に出演されました。

 

北軍に対してはガトリング氏誘拐の身代金を要求し、南軍には高値でガトリング銃を売りつけようという目論み。

さらに南軍側から資産家のベリンダ・ボイド女史が絡んできます。

演じたのはご存じイダ・ガリ嬢

Ida Galli (1939-)

エヴリン・スチュワートの別名でも知られるイタリアの女優さん。もとは教師志望だったものの偶然銀幕デビューし、マカロニウエスタンはじめ60本以上の映画に出演されました。

 

実際はベリンダ女史の側近のクセ者ビショップ氏が暗躍。クリス・タナー大尉を執拗に狙っています。

演じたのはクセ者を演じさせたら一級品、こちらもお馴染みジェラルド・ハーター氏

Gérard_Herter (1920-2007)

ドイツ出身の俳優さんでお兄さんはファッション写真家さんだそうです。演劇出身で強い個性を持ち、とくにマカロニウエスタンでは強烈な印象を残す役割を多く演じております。

 

しかし、実は本当の黒幕は事件で死んだはずのライカート。

ライカート氏を演じたのはジョルジュ・リゴー氏

George Rigaud (1905-1984)

アルゼンチン出身。幼少期に渡仏、フランス映画界でキャリアをスタートさせ、1930年代のフランスでは大スターとして数多くの映画で活躍。その後もアルゼンチンとヨーロッパを行き来しつつ数多くの映画に出演を果たしました。

 

これだけアクの強いメンツが、当時最強の兵器であるガトリング銃と大金をめぐって各々の権謀術数がぶつかり合う、というなかなか凝ったストーリー。

 

そして女性出演陣も豪華。前述のイダ・ガリ嬢以外にも綺麗どころが美を競います。

冒頭で犠牲になってしまうのが残念なトレブル女史を演じたのはラーダ・ラシモフ嬢

Rada Rassimov (1938-)

セルビア系イタリア人の彼女、お兄さんもマカロニウエスタンではお馴染みの俳優さん(イヴァン・ラシモフ氏)。彼女も1960年代から1970年代にかけて多くの作品で活躍されました。

 

タルパスの元情婦であり、物語の進展のカギを握る存在となったサルーンの女主人マーサ・シンプソンを演じたのはクローディ・ラング嬢

Claudie Lange (1944-)

ベルギー生まれの女優さん。21歳時にイタリアでキャリアをスタート。イタリアの娯楽映画に数多く名を連ねております。

 

実在の人物をうまく取り入れ、ところどころユーモアを交えつつも凝ったストーリー。

主役のロバート・ウッズ氏、自ら体当たりの激しいアクション。友情や愛憎、ちょっとした差別問題(タルパスは混血だから…のくだり)も交えながら、ダイナミックに展開する本作。

監督はパオロ・ビアンチーニ氏

Paolo Bianchini (1933-)

助監督および脚本家としてキャリアをスタートさせ、その後監督として活躍、さらに広告業界に身を置いて大活躍した後再び映画業界で手腕を発揮されました。

マカロニウエスタンでは「西部の無頼人」「嵐を呼ぶ男スリム」が知られております。

 

豪華キャストのダイナミックな映画をセンスよく盛り上げるグルーヴィなジャズ風の劇伴を担当したのは、ご存じピエロ・ピッチオーニ氏

Piero Piccioni (1921-2004)

幼少期からジャズに親しみ、独学でピアノと作曲を身につけて16歳からラジオの世界でプロとして活躍。20代後半には1年半のNY生活の中でかのチャーリー・パーカーやケニー・ドーハム、マックス・ローチらと共演し演奏活動を行っていたと言うからガチもんのジャズメンですね。そして音楽家としての仕事と平行して弁護士としても活躍していたというから何とも凄い方です。

イタリアに戻ってからは映画およびTVサントラの世界で幾多の素晴らしい仕事を残しました。マカロニウエスタンのサントラもいくつか担当していますが、彼らしいジャズと変拍子のスコアが大変印象的です。

 

氏のサントラは、パッと聴きクールで涼しげなのですが

内容はどうしてなかなか複雑怪奇。

モリコーネ師とならんでコピー(カバー)に難儀する音楽であります。

本作のサントラもグルーヴ感にあふれる素敵な音楽でいっぱいですが、隠し味の仕掛けがたっぷり。

 

耳コピに苦労しましたが、今回もカバーしてみました。

 

 

Youtubeでは動画が著作権にひっかるらしく、静止画スライドショーバージョンで公開しております。

 

 

いよいよ寒波も本格的になってきました。

みなさま体調を崩されぬよう、ご自愛くださいませ。

アディオス、アミーゴ!

(^-^)

 

 

「荒野のプロ・ファイター」日本公開は1967年3月11日

アンソニー・ステファン氏の「プロなんちゃらシリーズ」の一番手でございます。

(「無宿のプロガンマン」が1967年7月26日、「嵐を呼ぶプロ・ファイター」が1967年9月16日、「地獄から来たプロガンマン」1967年10月7日。この年はステファン兄い推せ推せだったのですね…ちなみに「プロ・ファイター」シリーズと「プロガンマン」シリーズは配給会社が別です、東京第一フィルムとNCC)

 

イタリアでは1966年に公開されました。

タイトルは Ringo, il volto della vendetta


英語圏ではこの直訳 "Ringo, the Face of Revenge"

となっております。

 

ほう、これがオリジナルタイトルか…と思いきや。

本編を鑑賞すると、復讐要素が全然ナイのであります汗

 

本作はイタリア=スペイン合作の映画でありまして

スペイン版では "Los cuatro salvajes" ~四人の野蛮人~でありまして、実はこれがオリジナルではないかと思っております。

 

当時のユーロウエスタンといえば「復讐もの」が定番ですから、イタリアの関係者たちも「それっぽいタイトルにしちゃえ」てな感じだったのかな、などと思いを巡らせてニヤニヤしております。

 

そんな本作は、マカロニウエスタン最多主演を誇る(一説には本27本とか)アンソニー・ステファン氏の軽妙かつダイナミックな演技が冴える傑作のひとつです。

 

まあ、いつも言うことですが

アンソニー・ステファン氏というと必ず小バカにしたような発言をする方が多くて閉口してしまいます。

「アクションが下手」とか「演技がイモ」とか「拳銃捌きがなってない」とか、まあ言いたい放題の御仁もいらっしゃいますが、一体彼らは人前で、ステージで、演技なり何らかのショウをやったことがある人間たちなのでしょうか?そもそもちゃんと映画観てる?と訊きたくなります。

僕の個人的な感想としては、ステファン氏が画面に現れたときのパッとした華やかさや、時に安心感さえ抱かせる人柄は特筆に値すべきものではないかと。そして決して我を通さずに共演者をしっかり立てながらストーリーを紡いでゆく演技にいつも感心させられます。特に本作のように共演者たちのキャラが濃い場合は、彼の清涼感が効いてくるのではないかと。現代で言ったらヒュー・ジャックマンのような素晴らしい演技者だと確信しております。

また本作は氏に批判的な方々でさえ。中間部のアクションシーンでの馬上のライフル射撃については諸手を挙げて絶賛するほど小銃の扱いには長けておりますし、これだけたくさんの映画の主演として声が掛かり、それらをきっちりこなして世に残したという事実が、何より彼の偉大さを物語っているのではないでしょうか。

 


ステファン氏が演じるのはリンゴと名乗る気楽な旅人。

Anthony Steffen (1930-2004)
イタリア伯爵でF1パイロットであり外交官(ブラジル大使)であるマヌエル・デ・テフェ氏を父に持つ彼。20歳で映画界に入りスターとなって60本もの映画に出演。晩年は生まれ故郷のブラジルで静かに暮らしたとか。

 

そのリンゴが気まぐれに助けた男が、金塊の在処を示す地図の半分を持っていることから物語が始まります。

ゴールドの匂いに引き寄せられて集まってきたハイエナのようなクセ強なキャラクターたち。

 

まずはリンゴの親友ティム。

演ずるはエデュアルド・ファヤルド氏

Eduardo Fajardo (1924-2019)

23歳で映画初出演、そのご2002年までに約180本もの映画に出演したスペインの名バイプレイヤー。「続・荒野の用心棒」のジャクソン少佐役があまりに有名で、その他「豹/ジャガー」や「荒野の棺桶」の憎たらしい悪役っぷりが印象深いですが、ここでは実に気の良い相棒を好演しております。

お人好しを絵に描いたような男ティム。リンゴとの深い友情に裏付けられた信頼は絶対永遠のものに思われましたが…

 

背中に宝の地図を入れ墨するという、最近ではゴールデンカムイやプリズン・ブレイク、ルパン三世やコブラにも出てきた映画あるあるな設定の男はフィデルと名乗ります。

(こういう宝の地図を入れ墨にして隠し持つというプロットの元祖は何なんだろう…ご存じの方がいたらご教示くださいませ)

演じたのはアルマンド・カルボ氏

Armando Calvo (1919-1996)

父フアン・カルボ・ドメニク氏もスペインの有名な俳優さん。彼自身もスペイン人俳優としては大変に成功した方として知られており、マカロニウエスタンでは本作の他「荒野の棺桶」や「デンジャーパスの二つの十字架」なのでお馴染みです。メキシコでも俳優として活躍されたとのこと。

 

フィデルが獄中で瀕死の大物ギャングから託されたゴールドの地図を、密かに友人と二人でそれぞれ背中に入れ墨として残したという。

 

見つけちゃったリンゴとティム。命の恩人としてはこれをいただかない訳にはいかない。

 

そこへ現れたのは、やたら鼻が利くギャンブラー。

フランク・ウォルフ演ずる "トリッキー" ファーガソン。

怪しさ満点。

Frank Wolff (1928-1971)

なんとサンフランシスコ生まれで元・医学生。スタンフォード大学(米国ではオックスフォードに次ぐ秀才校!)の医学部在籍中に演劇に目覚め、イタリアに渡って本格的に俳優となりました。数多くの映画で印象的な役割を演じ、マカロニウエスタンでも個性的なキャラクターの担い手として素晴らしい演技をたくさん残しておりますが、若くして非業の死を遂げられました、RIP

 

そんな怪しげな四人(まさにLos cuatro salvajes)

実にいかがわしげな、素敵な四人組ですね。

彼らが向かう先はもちろん、地図の残り半分を知る男。

今ではとある町の保安官になっているというサム・デリンジャー。

投獄されるような男がどうやって保安官に…フィデルもその経緯は知らないという。まあ当時らしいというか。

演じたのはアルフォンソ・ゴーダ氏

Alfonso Godá (1912-2003)

スペインでミュージカル俳優として頭角を現しバリトンとして名を馳せ、同国のスター女優と結婚、夫婦で出演し1940年代にはスペインで成功を収め、その後コメディや映画の世界にも進出、様々なジャンルで活躍されました。

 

案の定、汚職に手を染めたりしてます。

そこにつけ込んだトリッキー。

 

さてクセ者四人に、さらに加わった悪徳保安官。

騙し合い、裏切りの連続が観る者を飽きさせません。

 

 

ゴールドの独り占めを目論んだ保安官サム・デリンジャーはリンゴに葬られてしまいます。

墓を暴くが地図が記された屍はそこに無く…

 

自身の暗線を担保するために地図を頭に入れて屍を遺棄したのはトリッキー。

 

トリッキーは次第に強欲さを前面に出し、仲間割れ工作を始めます。

まずは焚き付けられたフィデルが…

 

いちはやく気づいたリンゴの機転で目論みは失敗に終わりますが、結局フィデルは抜け駆けして自身が属するギャング団とともに、一行を襲撃。

この馬上の銃撃戦は大迫力!

さすがお三方、乗馬も射撃も実に素晴らしいスキルを持っていらっしゃる。

 

特にステファン氏の馬上ライフル捌きはお見事。

ちなみにこのシーンで流れる勇壮な音楽は、おそらく「荒野の棺桶」からの流用曲ではないかと思われます。

 

ギャング団を撃退した彼らが行き着いた小さな農村では

村を苦しめる強盗たちを一掃した英雄として歓待を受けたりします。

ティムおじさんの優しさに心温まります。

 

ここへ逃げ込んできたのはギャング団の娘マヌエラ。

正義の名の下にギャングの血を引く者を殺害しようとする一般市民たちの群れ…現代でもこういうの、ありますね

 

リンゴが身を挺して彼女を救います。

 

そして爽やかなラブストーリーがサブプロットとして付け加えられます。

このあたりの展開や演出もお見事ですね。

 

マヌエラを演じたのはアレハンドラ・ニーロ嬢

Alejandra Nilo (1946-)

スペインの女優さん。1965年から5年間しか活動期間はありませんが、4本のマカロニウエスタンを含む11本の映画に出演されております。

 

この四人で宝探しも佳境に…と思われましたが

 

またもトリッキーの分断工作。

酒に混ぜた違法薬物とデマに我を失ってしまったティムは、マヌエラを巡ってリンゴとの友情を永遠に失ってしまいました。

 

しかしトリッキーが持ち逃げした地図は偽物であり

ティムは、この世の去り際に本物の地図をリンゴに託します。

かくしてリンゴとマヌエラは宝の在処へと向かいます。

 

しかしまだまだ事は安泰ではありません。

 

彼らの後を追って(?)宝の在処である洞穴に辿り着いたのは行方をくらましていたフィデル。

リンゴと決死の肉弾戦。

双方死力を尽くした末、リンゴが辛勝という結果に。

 

疲弊しきったリンゴが、ゴールドの詰まった袋2つを手に外に出ると…

マヌエラを人質にとったトリッキー。

 

そして通りすがりのならず者たちがリンゴを叩きのめす

 

カネに気を取られたトリッキー、脱出したマヌエラの機転。

 

ならず者たちを一掃したリンゴ。

 

逃げるトリッキーを追撃。

 

断崖絶壁に追い込まれたトリッキー

最後はゴールドの袋もろとも転落して絶命。

 

一つだけ残ったお宝の袋。

 

リンゴはそれを貧しい村に進呈

 

何事も無かったかのように

マヌエラと二人で去って行きました。

 

 

なんて完成された筋書き。

欺し騙されの緊張感の連続、豪快なアクション、友情と恋心など適度に散りばめられたサブプロット。

実に爽快な気分でエンディングを迎えることが出来ます。

 

こんな素敵な作品を撮ったのは

マリオ・カイアーノ監督。

Mario Caiano (1933-2015)

実は当初は考古学者だったそうです。映画監督だった父親の影響もあり映画ビジネスへの夢を捨てきれず、1962年にペプラム映画 "Ulisse contro Ercole" で監督デビュー。

3作目にしてなんと、その筋で「イタリア製西部劇第一号」とささやかれる "Il segno del Coyote" を撮っております。一部では「マカロニウエスタン第一号」は1963年の「赤い砂の決闘」ではないかとも言われておりますが、実はこちらもリカルド・ブラスコ氏との共同という形でマリオ・カイアーノ氏がメガホンをとっております。その後も数多くのマカロニウエスタンやユーロクライムを監督し、TVでも活躍し2002年まで監督作を世に残しました。ちなみに本作「荒野のプロ・ファイター」には彼が映画を志すきっかけとなった父カルロ・カイアーノ氏がプロデュサーとして名を連ねております。

 

 

そして随所でフックのある楽曲で映画を盛り上げるサントラを担当したのはご存じ巨匠フランチェスコ・デ・マージ氏

Francesco De Masi (1930-2005)

ローマ生まれの偉大な作曲家であるデ・マージ氏は、イタリア映画音楽における最重要人物であり、マカロニウエスタンの音楽を作り上げた功労者の一人。

本作では得意の(なんといっても元々優れたホルン奏者です)ホルンはあまり聴かれず、ギターを中心とした作りになっていますが、それでもしっかりデ・マージ氏らしさが堪能できる素晴らしいサントラです。

 

本作の哀愁漂うメロディにあふれたサントラはCDもリリースされております。

 

 

僕も自分なりの解釈で主題曲や劇中曲のカバーに挑んでみました。

お聴きいただけたら幸いですm(_ _)m

 

 

いよいよ冬らしくなってきました。

みなさま体調を崩されることのないようご自愛くださいませ

 

アディオス、アミーゴ!

(^-^)