こんな雨の名前、聞いたことある?
雨の降る場所限定の名前
私雨:わたくしあめ:下は晴れているのに、山の上の狭い範囲だけに降る雨のこと。
昔から、箱根、鈴鹿、比叡、丹波などが有名どころ。
外待雨:ほまちあめ:局地的な範囲に降る雨。外持とは帆待ちとも書き、
船頭が内密の収入を得ることで、一部だけ潤うことにも通じます。
恵みの雨
翠雨:すいう:青葉に降り注ぐ雨。情景も、漢字もきれいな雨の名前です。
甘雨:かんう:しとしとと降って、草木を潤す雨のこと。
農作業を始める時期にちょうどよく降り、作物を育ててくれる雨。
慈雨:じう:恵みの雨。作物、草木に生気をもたらす雨。
干ばつが続き、待ちに待った雨がふること。
喜雨:きう:ゲリラ豪雨の和名「鬼雨」と同じく、こちらも「きう」と読みます。
日照りの続いた後に降る恵みの雨のこと。意味は反対です。
不思議な雨
虎が雨:とらがあめ:陰暦5月28日に降る雨。曽我十郎の忌日とされ、恋人の遊女、
虎御前の涙が雨となって降ると言われています。
曽我の雨、虎が涙とよばれることも。
旧暦5月28日今頃の雨を「虎御前の涙雨」と言います。
日本三仇討ちの一つ曽我兄弟の仇討ちで、
亡き父の仇を討つも新田忠常に殺された、曾我十郎を偲んで泣く遊女虎女の様です。
「一富士二鷹三なすび」は初夢だけではなく仇討ちにも言われます。
曾我兄弟の仇討ちは富士の裾野でしたので一富士。
広重の作品にずばり「虎が雨」と題した作品があります。
「東海道五十三次 大磯」です。
雨はもちろん、右隅に雨よけの合羽を着た馬上にいる人物も描かれています。
虎御前が十郎から形見にもらった小袖と鞍を思い出させます。
また、宿場境や距離の基準点を示す傍示杭も描かれており、
その手前が化粧(けわい)坂、虎女が化粧に使った井戸も近いようです。
現代人は遊女というと江戸時代の零落した女性が、
行き着く暗くマイナスなイメージを強く持ちますがが、
室町時代以前の遊女はむしろ知識人であり、
歌舞などの技芸を厳しく長者と言われる元締めのような存在の女性から躾けられ、
時には教養も身につけた女性たちで、
神聖な存在として巫女の代わりをするようなこともあったようです。
遊女が自らの性で商売するだけの存在になったは戦国時代以降でしょうか。
そのほか宿場入り口の柵は江戸見付、反対側は上方見付。
松林の向こうは万葉集にも詠まれた小余綾(こゆるぎ)の磯。
怪雨:かいう:異物を含んだり、色がついた雨のこと。
世界中で、魚やカエル、木の実が降るような現象が観測されています。
血雨:けつう:土壌由来の成分を含み、赤い色の付いた雨のこと。
黒雨:こくう:工業地帯の煤煙や化学物質が含まれて、黒く色づいた雨。
日本情緒あふれる、珍しい雨の呼び名を集めました。
雨が降っている様子が目に浮かびそうな、
聞いたことのない名前がほとんど、
日本人の考える知恵?らしい名前がいっぱいでした。