雨の物語
「雨の物語」 イルカ
(吉高由里子)
1977年3月25日発売
落ち着いた声で別れを歌う。
1975年の大ヒット『なごり雪』も別れの歌だった。
別れの似合う声というより、別れを歌っても、次があることを思わせる声。
物語の1ページ目はドアの前に立つ君の姿から始まる。
僕の部屋を訪ねてきた君、
その時から幸せな結末には決して終わらない物語が展開していく。
ドアに書かれた、「とても悲しい物語」。
この物語の主人公は僕だったんだね。
新しい出会い(物語の1ページ目)には、この先どんなに楽しいことがあるだろうと、
期待するものだけど、僕との場合は違ったんだよと、言っている。
そもそも出会った時から今日の別れが決まっていたのだと。
それを伊勢正三が表現するとこうなるわけだ。
ぼくの部屋のドアに 書かれていたはずさ ”とても悲しい物語”だと 、
なんて文学的な比喩だろうか。
そもそも雨から始まって雨に終わる、二人の関係。
化粧している彼女は涙を流してはいないけれど、きっと心の中で泣いているだろう……。
という短編小説のような『雨の物語』。
どうして別れることになったのか、
それは聞き手が好きなように想像すればいいのだが、
どのようにも膨らませることができる、素敵な詩だと思う。
化粧する君の その背中がとても小さく見えて しかたないから
僕はまだ君を 愛しているんだろうそんなことふと思いながら
窓の外は雨 雨が降ってる物語の終りにこんな雨の ...