ときめき映画館#陽春ロードショー「吉原炎上」 | 春夏秋冬✦浪漫百景

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季節の移ろいの中で...
歌と画像で綴る心ときめく東京千夜一夜物語

「吉原炎上」

『吉原炎上』(よしわらえんじょう)は、1987年公開の東映映画。

主演:名取裕子、監督:五社英雄。

吉原遊廓に生きた女たちの生き方を本格的に取り上げた初めての映画といわれる。

花魁5人の悲喜を描く。

テレビでも複数回放映され高視聴率を記録している。

(テレビ朝日の日曜洋画劇場や深夜枠など)。

名取をはじめ、かたせ梨乃、西川峰子、藤真利子ら、

当時の有名女優の大胆なヌードシーン

(特に名取と二宮さよ子のレズビアンシーン)があったことが大きな話題を呼んだ。

1998年には新橋演舞場にて、映画と同じく名取裕子主演で舞台化もされている。

2007年には観月ありさ主演でテレビドラマ化された。

 

明治後期の吉原遊郭を舞台に、女郎たちの生きざまを激しく、

華やかに、そして悲しく描いていく、五社英雄監督お得意の世界です。

主演は名取裕子さん。

置屋に売られて縮こまっていた純情な娘が、

花魁に昇りつめるほどの大人の女性に成長する姿を細やかな演技で魅せていきます。

クライマックスの花魁道中のシーンでは、凛とした表情に色気があって… 

名取さん演じる久乃を中心に、

巡る季節の中でそれぞれにヒロインとしてフィーチャーされる花魁・女郎たちがおり、

彼女らの激動の生き方が久乃に影響を与え、作品に圧巻の迫力を生み出しています。

あらすじ

海難事故を起こした父の借金の肩代わりに吉原遊郭「中梅楼」に売られてきた久乃。

そこには九重・吉里・小花という売れっ子の花魁が三人おり

 “御職” という一番売れている九重が姉女郎として久乃の面倒を見てくれることになった。

まだ勝手がわからない久乃は、

遣り手婆のおちかが睨みを利かせている場所から楼全体を見る。

馴染みの客を待たせて、

もっとお金を持っている客のところに女郎を向かわせるやり方があることや、

男を騙すための液体が作られていることなどを知っていく。

そして久乃は “若汐” と源氏名をつけられ、いよいよ顔見世の日がやってきた。

覚悟はしていたはずなのに、いざその時になると恐怖心が拭えない。

指名した客が若汐を見つめながら舌なめずりするのを見て、

若汐は突発的に逃げ出した。

「足抜け」は決して許されない。

若汐は挟みうちにされるが、堀の向こう側に、

廃娼運動をしている救世軍の古島が若汐を助けようとする。

堀に飛び込んで古島の元に向かおうとし、古島も堀に入るが、

中梅楼以外の店の男たちも若汐捕縛の仲間に加わっていたため、

抵抗虚しく楼に連れ戻されてしまった。

九重は若汐を激しく叱責し、女郎としての心得を身体に覚え込ませる。

ほどなく、九重は年季が明けて吉原を去っていった。

一年後の夏、御職は二番手だった吉里に変わっていた。

吉里とひと悶着起こした菊川が、住み替えを言い渡されて出ていくことになり、

仲の良かった若汐は寂しさを覚える。

そんな頃、若汐の元に古島が現れた。

財閥の後継者だった彼は若汐の太い馴染み客として大盤振る舞いをし、

彼女を引き立ててくれた。

しかし若汐を抱こうとはしなかった。

一方吉里は、惚れている客が金策に困っているのを知り、

若汐に借金をしてその男を助けようとするが、フラれてしまう。

そして刃傷沙汰を起こし、絶望のなか自ら命を絶った。

そこからまた一年後の秋、御職である小花の様子がおかしい。

喀血するようになり花魁の地位を外された。

若汐は御職となり、花魁 “紫” と源氏名を変え、小花の部屋を継承した。

積夜具が皆にお披露目されるなか、小花が現れ夜具をズタズタにして暴れる。

プライドを傷つけられた紫は、

窘める古島に食って掛かり「君は身も心も女郎になってしまった」と言われ、

去られてしまった。

狂気の中で死にゆく小花の姿を見ながら紫は涙を流す。

しかし紫には夢があった。

“花魁道中”  の復活である。

女郎として最高峰に君臨するという覚悟を紫は持っていた。

 

キャスト

上田久乃→若汐→紫太夫
演 - 名取裕子
主人公。
登場時は19歳。岡山県出身。
船乗りだった父が海難事故を起こし、賠償金の工面のため吉原に売られてきた。
花魁として「若汐」の源氏名を名乗り、最初の客と、
いざ事を始める直前に羞恥心から逃げ出し、捕えられて厳しい折檻を受け、
九重から男を喜ばせる方法を教わる。
吉原に入った頃から久乃の成功を予感した者達の期待通り、
徐々に花魁としての自尊心が芽生え、
金持ちの常連が付いた強運もあって御職を目指すようになる。
九重
演 - 二宮さよ子
中梅楼の一番花魁(御職)、春の章ヒロイン。
主人公の姉女郎。年上ということもあり、姉御肌。
本人によると「(久乃から)いい匂いがしている」として妹分として気に入っている。
客から逃げ出した若汐を折檻するものの、身をもって客を喜ばせる方法を教えてくれた。
一番人気で上物のお得意様から声がかかっているが、
本人は学生の宮田に熱を上げている。
自身を「年増女郎」と自覚しており、宮田から叶わぬ結婚を匂わされたことで落胆し、
店への借金を清算して静かに吉原を去って行く。
吉里
演 - 藤真利子
中梅楼の二番花魁、夏の章ヒロイン。
九重のあとの御職を継いだが、客には恵まれておらず、借金が多い。
若汐には妊娠した場合の処置法(堕胎の方法)を教える。
野口に惚れており、株で大損をした金の穴埋めに若汐づてで古島から50円借りるものの、
約束を反故にされて半狂乱になる。
のちに越後屋と懇意になり、冗談で「一緒に死のうか」と言われたことがきっかけで、
剃刀を片手に越後屋を追いかけ回し、表で誤って金魚売りの首を斬ってしまう。
追い詰められた末、「何だい、みんな、あたしの身体を喰いものにしてやがるくせに…
女郎の上まえで喰ってやがるくせに…」と啖呵を切り、自らの首を剃刀で斬って果てた。
藤真利子
 
小花
演 - 西川峰子
中梅楼の三番花魁、秋の章ヒロイン。
周囲には「徳川家の典医の家系だったが、両親が亡くなったため、
帝大の医学部に通う弟のために花魁になった」と吹聴し、
弟の写真を肌身離さず持っている。
年季明けを目指して客を取り過ぎたためか、無理が祟って体調を崩し、
御職の座を紫(若汐)に奪われてしまう。
その上、身の上話が虚構だったこともバレてしまい、
屈辱から半狂乱となり、喀血して壮絶な最期を迎える。
菊川
演 - かたせ梨乃
久乃の先輩女郎、冬の章ヒロイン。口は悪いが気立ては良い。
久乃とは面倒を見るうちに仲良くなり、「菊ちゃん」「久ちゃん」と呼び合うようになる。
貧しい家の娘で、女郎暮らしをしながら「白米が食べられる」と喜び、
自身の古着は実家に送っている。
のちに「要領が悪く、稼ぎが悪いから」との理由で、
女将から言われて品川にある別の遊廓へ住み替えした。
物語中盤、久乃と再会したときには宮大工と所帯を持った様子だった。
物語終盤、夫を寝取られ吉原遊廓では、
最下層の店が並ぶ羅生門河岸の長屋女郎にまで身を落としていた。
そして、古島に会わせてほしいと懇願する紫に啖呵を切って追い返す。
吉原炎上時には近くの川に飛び込んで助かり、燃える吉原を眺めていた。
かたせ梨乃

 

おちか
演 - 園佳也子
遣り手。中梅楼の二階の階段と廊下に隣接した簡単な座敷から、
花魁や女中たちの働きぶりを見ている。
本人は「ここが私が睨みをきかせている中梅楼の司令塔」と称している。
口達者でよく喋る。女将にも色々と自分の注文を伝えている。

楼全体を見渡せる小さな座敷を「司令塔」と呼んで上手く采配しているおちか婆さん。

楼のためとはいえ、面倒見はいい人です。

来て初日の久乃を一緒に座らせて妓楼のことをいろいろ教えてくれます。

特に馴染み客についてもらうためのテクニックはかなり熱を込めて語ります。

久乃が美人なため、まず初めに美人ほど馴染み客がつかない理由から説明します。

最初は興味を持たれるのだけれど、美人はそれを鼻にかけてしまうためです。

美しいけれど、

いつもフフン (ドヤッ) してる女性はたしかに一緒にいて居心地悪いですね。

見てる分にはいいけれど、ってやつです。

では馴染み客がつく女郎はどんな女性でしょうか?

おちかさん曰く「床上手で啼きの上手い子」だそうです。

客にしなだれかかり「寒いから抱いて~♡」という姿を見て、

おちかは「アレだよ、アレ!」と身悶えせんばかりに久乃に注目させます。

だから、身も蓋もないっちゅーの!

まあ場所がね、遊郭ですから。

モテというより常連客を掴む方法としてシモ関係重視になるのは致し方ないことで…

ただ言葉が下品モードに替えられているだけで、

よく考えると「情が深くて甘え上手」がモテの秘訣ということなのだと思います。

澄ましている美人より、男性に素直に「アナタのこと、だぁい好きなのぉ」

と全身で表現できる女性がモテるということなんですよね。

 

 

吉原炎上の結末である火事は本当にあった

吉原炎上のあらすじでは予想できなかった衝撃的な結末。

その大火事については、実は実際に起こっていたことだった。

昼の大火事だったため、死者は8人だけだったが、

花街である吉原が全焼してしまったという驚きの出来事となってしまった。

当時のマスコミは被害総額700万円と報道しているのだが、

明治時代のお金の相場は1円が現代の約3,500〜5,000円と言われており、

その被害の大きさが伺える。

当時のニュースによると、その大火事は明治44年4月9日に起こっている。

江戸の中でも最大級の花街遊郭として栄えていた吉原に、

火が立ち上ってから消化までの時間は10時間にもなり、

6500戸もの家を次々に燃やしていったのだった。

当日はちょうどお花見のシーズンで、観光客も含めて人が多く、

大変賑わっている時間帯であった。

その時、「美華登楼(みかどろう)」から煙がのぼり始める。

花江戸からずっと受け継がれてきた吉原の街は、もう全体が焼けてしまい、

もう二度とその伝統が蘇ることはなかった。