ときめき映画館#冬の映画劇場「居酒屋兆治」 | 春夏秋冬✦浪漫百景

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歌と画像で綴る心ときめく東京千夜一夜物語

居酒屋兆治

『居酒屋兆治』(いざかやちょうじ)は、山口瞳の連作的長編小説。

『兆治』(ちょうじ)と題し『波』1979年10月号から1980年11月号に連載、

改題して新潮社より1982年6月に刊行された。

東京・国立にある広さ5坪の縄のれんのモツ焼き屋「兆治」を舞台に、

店に集う客たちのさまざまな愛憎劇を描く。

1983年に降旗康男監督、高倉健主演により映画化。

また1992年に渡辺謙主演により、2020年に遠藤憲一主演によりテレビドラマ化。

函館で居酒屋「兆治」を営む藤野英治。不器用ながら、

真っ直ぐな人生を歩もうとすればするほど、かつての恋人や学校の先輩、

昔の職場の上司、幼馴染が何故か不幸な目に遭ってしまう。

そんな人生に苦悩しながら、それでも英治は前向きに生きていこうとしていた。

舞台となるモツ焼き屋「兆治」のモデルになったのは、

かつて東京都国立市の南武線谷保駅の近くにあった居酒屋「文蔵」。

山口の近所の行きつけの店で、

山口が『週刊新潮』に連載を続けた名物コラム『男性自身』シリーズの中にも、

たびたび登場した。山口は「家の近くに、赤提灯の店がある。

毎晩、そこへ飲みに行って客の言葉を記録し、

日記ふうの小説が書けないだろうかと、

考えたことがある」と書いていて、

もともと物置だったところを借り受け「滑稽なくらいにちいさい」店だった。

店名のモデルはプロ野球選手でロッテオリオンズのエース投手だった村田兆治。

主人公・藤野英治は高校時代に投手で、

村田兆治への憧れから店の名を「兆治」にしたという設定。

野球ファンの山口瞳が、

村田の全力投球に魅了されていたことが背景にあったといわれる。

あらすじ

函館で居酒屋「兆治」を営む藤野英治。

輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。

かつての恋人で、今は資産家と一緒になった「さよ」の転落を耳にするが、

現在の妻茂子との生活の中で何もできない自分と、

振り払えない思いに挟まれていく。

周囲の人間はそんな彼に同情し苛立ち、さざなみのような波紋が周囲に広がる。

「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」

と学校の先輩の河原に挑発されても、

頭を下げるだけの男。そんな夫を見ながら茂子は、

人が人を思うことは誰にも止められないと呟いていた。

キャスト

藤野英治
演 - 高倉健
主人公。函館で居酒屋「兆治」を営む無口な男。
以前は球児であったが肩を壊して断念し、
その後入社した北洋ドックではオイルショックの際に、
自身の出世と引き換えに同僚をクビにするよう命じられたのに反発して、
退社に至っている。
神谷さよ
演 - 大原麗子
英治の元恋人。かつて自身と神谷との間で縁談が持ち上がった際、
若く貧しい己が身を負い目に思った英治が身を引いたことで、
裕福だが心から愛してもいない神谷と望まぬ結婚をし、
それ故に英治のことを忘れられない。
家に放火し失踪する。
キャバレーで働きながらたびたび英治に電話をかける。
藤野茂子
演 - 加藤登紀子
英治の妻。夫とともに「兆治」を切り盛りし、
何があろうとも夫を支える良妻だが、
夫が不器用さゆえに時に損しているのを特別咎めはせず、半ば諦観している。
岩下義治
演 - 田中邦衛
英治の親友で、球児時代は彼とバッテリーを組んでいた同級生。
「兆治」の常連客。精肉店経営。
河原
演 - 伊丹十三
英治と幼馴染の先輩。三光タクシー副社長。
小さい頃から「ガキ大将気質」だと言われており、
酒が入ると英治に何かと目を付けて暴力をふるい、
英治もそれに耐えていたが、兆治で鈴子の死について、
その顛末を悪口を大いに交えて無神経に言い続けた結果、
我慢できなくなった英治に殴られる。
峰子
演 - ちあきなおみ
「兆治」の向かいにある小料理屋「若草」を営む陽気な女性。
越智
演 - 平田満
英治の元同僚。「兆治」の常連客。
すすきののキャバレーで知り合ったさよに結婚を申し込む。
堀江
演 - 池部良
「兆治」の常連客。生命保険会社社員。
秋本
演 - 小松政夫
「兆治」の常連客。タクシー運転手。
河原から借金をして三光タクシーに移籍。
神谷久太郎
演 - 左とん平
さよの夫。牧場経営。
他。
 

キャスティング

ヒロインには高倉も賛成した大原麗子。

小料理屋「若草」のママにはちあきなおみをキャスティングしたが、

ちあきから「夫と長く一緒にいたいから東京を離れたくない」と渋られた。

しかし夫の郷鍈治が「高倉さんの映画なら思い出になるから出た方がいい」

と薦めてくれ出演を承諾した。

高倉の妻役がなかなか決まらず、

ちあきや細野晴臣と歌手・ミュージシャンが入ってきたことで、

田中プロデューサーが加藤登紀子を思い付き、

降旗は加藤をよく知らなかったが、

加藤の出演した土曜グランド劇場『秋日記』(日本テレビ)

第10、11話を取り寄せて見て、

高倉に伝えたら「昔からファンです」と賛成し、起用が決まった。

 

今夜もやって来るのは~ ちょっと疲れた~男達~ 

風の寒さを~偲ばせた~ 後ろ姿の~男達~

〝居酒屋兆治〟高倉健〝時代おくれの酒場〟

『人が心に思うことは誰にもとめられない』