大江戸物語#江戸の鍋料理 | 春夏秋冬✦浪漫百景

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江戸の鍋料理

江戸時代の鍋料理は小鍋で作る「ひとり鍋」

「あさりと小松菜の煮物」「いわしの生姜煮」などを、

七輪や長火鉢の火にかけて、煮ながら食べていたようです。 

このほか、江戸時代の料理書には「鍋焼」や「湯やっこ(湯豆腐)」など。

 

『青楼十二時 夜 子の刻』菊川英山 画 

 

都市部では小鍋を七輪の火にかけて煮込みながら味わう

「小鍋仕立て」の料理が登場し、1人鍋をつつく習慣が始まりました。
さらに人口の増加により外食産業も発達し、

鍋料理を扱う専門店もあらわれるようになりました。

当時は肉食が禁止されていましたが、

「薬食い」として

「ぼたん(イノシシ)鍋」「もみじ(シカ)鍋」を提供する獣肉店や、

湯豆腐、ドジョウ鍋、アサリ鍋、ねぎま鍋など、

特定の鍋料理の看板を掲げる店もあり、

美味しいもの好きの江戸っ子たちに愛されていたようです。

 

美女を侍らしての夕食。画像中央、男性客の前には鍋料理が見えます。

(『両国夕景一ツ目千金』三代歌川豊国 画)

 

 

そして、江戸時代中頃、鍋料理スタイルに大変革が訪れます。
それは、どこでも鍋。
これには場所固定の囲炉裏とは違い熱源持ち運びが必要なわけですが、

それを可能にしたのが、七輪や火鉢の普及だったわけであります。


これにより、

囲炉裏なんてとてもじゃないけど設置できないという

江戸の裏長屋の狭い室内でも鍋料理OK!
料理屋の座敷でも鍋料理OK! となり鍋料理の普及と発展につながります。

 

(『名所江戸百景』「びくにはし雪中」歌川広重 画)

山くじらは猪です。

牡丹鍋を食べさせるお店ですね。

 

冬の江戸です。雪がすごいですねぇ。
さて、画像左に「山くじら」と書かれた看板があります。

この「山くじら」とはイノシシのこと。

「山くじら」という隠語を使って肉食をカモフラージュしていたわけです。
イノシシ肉を使った鍋を「牡丹鍋」と呼びますが、

「牡丹」も江戸時代に誕生したイノシシの隠語です。


「薬喰いして人に嫌われ」と川柳にあるように、

肉食に対する世間の風当たりは厳しかったようですが、やっぱり肉はおいしい。

肉、食べたい。そこで人々は知恵を絞っていろんな隠語をつくりだし、

こっそり肉料理を堪能したのです。
鹿肉を使った「紅葉鍋」も江戸時代からあり、

ネギと鹿肉を味噌味のつゆで煮込みました。

 

 

ちなみに享和元年(1801年)にはドジョウ鍋で有名な「駒形どぜう」が、

天保元年(1830年)にはアンコウ鍋の「いせ源」が開店するなど、

現在に残る名店が誕生しています。

どぜうは江戸を代表する味覚の一つ。

骨まで柔らかくなったものを食するのが庶民に好まれ、現在に至るという。
「駒形どぜう」の創業は1801年で、徳川11代将軍、家斉公の時代。

店名の由来は、「どぢゃう」と書いたところ文化3年の火災に遭ってしまい、

初代の越後屋助七氏がえんぎを担いで三文字の『どぜう』と、

当時有名な看板屋に書かせたことから。

昔から庶民に親しまれてきたドジョウだが、

店独自のタレをかけて煮る「どぜうなべ」が江戸庶民の嗜好を今に伝えている。

 

江戸時代後期の風俗百科事典『守貞謾稿』によれば、

骨抜きしたどじょうに笹がきごぼうを加え卵でとじた「柳川鍋」が登場したのは、

天保年間(1830〜44年)の初め頃だそうで、

横山同朋町(現・東京都中央区日本橋)にあった柳川屋が売り出して

人気グルメになったんだとか。

なお、柳川鍋の料金は1人前で48文(約960円)くらいだったそうです(幕末)。

 

 

スッポン。
漢字では「鼈」と書きます。
スッポンは江戸より京や大坂など上方で人気があり、

スッポンの鍋は「まる鍋」と呼ばれています。「まる鍋」の老舗、

京都の大市は元禄年間の創業で現在17代目なのだとか。

上方では重宝されたスッポンですが、

江戸では調理法の残酷さからか「下品な食べ物」と思われていたらしい。

でも、食べたらおいしかったらしい。

 

池波正太郎の人気時代小説『鬼平犯科帳』の主人公・鬼平が、

なじみにしているのが軍鶏(しゃも)鍋屋「五鉄」。

この「五鉄」のモデルとなったといわれるのが軍鶏鍋専門店「かど屋」で、

幕末の文久2年(1862年)創業といいますから、

幕末の志士たちも軍鶏鍋を味わったかもしれません。

幕末のヒーロー、

坂本龍馬が死の直前に盟友・中岡慎太郎と食べようとしていたのも軍鶏鍋です。

慶応3年11月、龍馬と慎太郎はシャモ鍋を食べるはずだったが、

事件は起き、二人は刺客の刃に倒れてしまう。

 

 

他にも江戸の鍋料理はたくさんありますが、今回はこれぐらいで...

 

「ごっちゃんです」