「南の島の夜は更けゆく」
マニラから車で1時間30分くらい。
プエルトアズール、マイナーなリゾート地。
日本人の観光客はほとんどいない。
ホテルの部屋はすべて敷地内にあるコテージ。
ヤシの木陰に佇む幾つもの木造りのコテージが林立している。
SEXYでロマンティックな部屋の雰囲気が胸を熱くする。
同伴している彼女の名前は茉莉、知的で感性豊かな大人の魅力が俺を惹きつける。
麻地のアイボリーのサマーワンピースがスレンダーな茉莉を包んでいる。
その燃えるような熱い肢体を隠しながら。
ホテルから徒歩10分、ナウマンビーチがある。
年末年始のこの時期、でもほとんど人影が無い。
ビーチの女達は大胆な水着で海辺の男達を楽しませてくれる。
茉莉も腰のあたりまで切れ込んだモスグリーンの水着で渚を通り過ぎてゆく。
日本人離れした容姿がこのビーチによく似合う。
サマーハウスには恋人たちが何組も愛の語らいをしている。
ホテルの周りには何も無いから、暗闇のミステリアスな夜の帳が、
二人だけのセクシャルな時間を心ゆくまで演出してくれそうだ。
そして、ひたすら恋人達は熱い愛を確かめながら、
夜明けまで甘く蕩けるほど抱き合うに違いない。
程よく冷えたコテージにある籐のダブルベッドが心地よくて、
濃厚なキスを交わすと、それだけで二人の躰が蕩けそうになってしまう。
昼間のビーチで刺激し合った二人の熱い体はすぐに反応して、
お互いの理性は遥か遠くに飛んでいってしまった。
全裸で抱き合う心地よさが二人を更に大胆にして、淫らな愛撫を際限なく繰り返す。
思いのまま反応する茉莉のスレンダーな肢体が弓なりに仰け反る。
最初は小さかった茉莉の喘ぎ声が、溢れるほど濡れるままに大きくなる。
コテージから漏れそうな茉莉の喘ぎ声を気にしつつ、二人は熱い体を深く重ね合った。
この旅が二人にとって最後になる事は、成田空港を飛び立つ時から分かっていた。
3年間、逢瀬を繰り返し、そしてこの夜を迎えた。
最後だから、そう思いながら二人は熱い体をお互いに与え合い、奪い合った。
茉莉は男の耳元で何か囁いた。
男は茉莉の耳たぶをくすぐりながら囁いた。
昇り詰めたお互いの限界を伝え合った。
茉莉はいつものあの悩ましく、淫らな言葉を発しながら深く達した。
男はそれを待って、腰を大きく強く早く動かすと茉莉の中で熱く弾けた。
しばらく重なったまま余韻を楽しんでいる。そして二人の体は離れた。
熱いシャワーを浴びながら茉莉は男と出会った頃の事を思い出していた。
衝撃的な出会いから、逢う度に体を求めあって不毛の愛を確かめ合った。
別れるなんて、そんなこと出来ないかもしれない。
でもこの旅が終われば、きっと、もう逢えない。
バスルームの窓からは南の島の夜景がシルエットになって見えていた。
椰子の木影の遥かな夜空に南十字星が揺れるように輝いていた。
部屋に戻ると全裸の男は軽い寝息を立てていた。
全裸の茉莉は濡れた体のままそっと添い寝した。
男の体を優しく愛撫しながら、茉莉は柔らかい唇と舌先で戯れた。
熱く蘇った男は茉莉を情熱的に何度も抱いた。
陶酔し、耽溺した二人にはもう言葉はいらない。
最後だから、もう最後だから...男は心の中で叫んだ。
ねぇ、私のこと忘れないで...茉莉は心の中で呟いた。
名残り惜しいまま官能の海に身を委ね、法悦の彼方に果てるまで...
南の島の別れの夜は更けてゆく...
(了)