2000年に導入された成年後見制度は、当初は財産管理の色合いが強く、また主な担い手として家族が想定されていました。
↓もっとも
年々福祉的な需要が増大し、第三者による後見人の比重が大きくなってきており、今の成年後見制度は現状の支援にそぐわないとして、改善を求める声が上がるようになりました。
こうした流れを受け、「成年後見制度の在り方に関する研究会」が発足し、2年弱にわたり法改正の議論がなされています。
2024年2月に報告書が取りまとめられ、公表されていますので、主要なものについて、以下で少し検討してみましょう。
1 適切な時機に必要な範囲・期間で利用する制度の導入
適切な時機に必要な範囲・期間で利用する制度の導入」は、今回の改正の目玉となる論点で、「スポット制」とも呼ばれています。
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現在の法定後見制度では、成年後見人等に広範な権限が与えられ、また実務上は通常本人が亡くなるまで後見の利用が続きます。
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今回の改正は、これを必要最小限の範囲・期間に限って制度を利用させ、必要性がなくなれば利用を終了させるというものです。例えば、遺産分割や不動産売却のために成年後見制度を利用する場合、成年後見人には対応する事務に関してのみ代理権が与えられ、その事務が終われば後見が終了することになります。
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現行法でも「補助」の類型においては、本来このような制度になっており、これを本人の判断能力の程度にかかわらず、必要な範囲・期間で利用させようというものになりました。
↓また
補充性とは、本人が意思能力を喪失している状態でも、何らかの支援によって財産管理等に不安がないときは、法定後見制度は発動されないというものです。
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この「何らかの支援」は、日常生活自立支援事業、任意代理契約、身元保証サービス、親族による事実上の財産管理などが想定されます。法定後見制度の利用は最後の手段(ラストリゾート)であるべき、という思想からきています。
2 取消権のあり方
取消権は、本人が行った契約を後見人が取り消せるというもので、本人の保護のため設けられた制度ですが、本人の法的能力が不当に制限されているとする批判もあります。
↓そこで
取消権を完全廃止する意見こそなかったものの、縮小させる方向が有力となりました。
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どのように取消権を定めるかについては様々な意見が出されており、現行の取消権を縮小・撤廃する代わりに、消費者法等を改正して本人保護を図る案も出ています。
3 制度の利用にかかる本人の同意
成年後見制度の利用にあたっては、本人の同意を要件とするかどうかも問題となりました。
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現行の制度では、後見類型については本人の同意は不要とされています。
↓もっとも
本人保護の必要性が非常に大きい場合に限って同意なしでの利用を認める意見が多数のようです。
4 成年後見人等の交代のあり方
成年後見人を交代させる手段として、現在は解任と辞任の2つがありますが、解任は条件が厳しく、辞任も後見人の自発的な意思に加えて家庭裁判所の許可が必要なため、円滑な交代を難しくさせていました。
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新制度では、この解任と辞任の中間的な制度を設け、必要に応じて家庭裁判所の判断で交代させやすくすることが検討されています。
↓ただし
実際の運用を家庭裁判所だけで行うことには限界があると考えられ、各自治体において事案のモニタリングや受任調整を担う必要が出てくると思われます。
5 任意後見制度の見直し
本研究会では、任意後見人に対する監督のあり方について多く議論が割かれています。現行の制度では任意後見の利用にあたって任意後見監督人の選任申立てが要件となっていますが、任意後見の契約締結後に本人の判断能力が低下しているにもかかわらず申立てがなされない事案が多くあり、問題視されています。
↓また
任意後見制度の利用があまり進んでいない一因として、この任意後見監督人の存在と報酬が挙げられています。このため、「監督」をゆるやかにすべきという意見も一部であります。
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任意後見制度についてはこのほか、代理権の設定のしかた、任意後見と法定後見の関係、代理締結の是非などが論点に挙げられています。
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