今後の事業承継の手段として注目されるのが株式交付制度です。
今回は簡単に解説をさせて頂きました。
【導入の背景】
現行法上、ある株式会社がその株式を対価として別の株式会社を買収しようとする場合、株式交換という制度が利用されていました。
↓しかし
株式交換という制度では、ある会社が別の会社の発行済み株式すべてを取得しなければならないという側面がありました。
↓そのため
別の会社を完全子会社とすることまでを企図していない場合には株式交換を用いることができませんでした。
↓また
会社は、別の会社を現物出資として募集株式の発行を行うことができるものの、原則として、検査役の調査が必要であったり、その手続に一定の時間費用がかかるといった点で障害が多いと指摘されてきました。
↓そこで
完全子会社以外の子会社化のための手続として創設された制度が「株式交付制度」です。
【 具体的な手続】
1 株式交付親会社における手続
株式交付制度を利用するためには、次のような手続が必要となります。
(1) 株式交付計画の作成・承認
まず、株式交付親会社は、効力発生日・譲渡制限・対価・取得株式の下限等を定めた株式交付計画を作成し、株主総会特別決議でこれが承認される必要があります。
(2)譲渡の申込み
また、上記計画で定められた譲渡申込期限までに相手方株主が申し込みを行う必要があります。
(3)申込者への割当て・通知
その上で、申込人への割当て・通知を行うといった手続を行う必要があります。
(4)株式交付の効力の発生
株式交付子会社の株式の譲渡人は株式の交付により直ちに株式交付親会社の株主の株主となるのではなく、上記で定められた効力発生日に、株式の譲受け及び株式の交付の効力が生じます。
(5)事前・事後の備置
株式交付親会社においても、他の組織再編制度と同様、事前の「株式交付計画備置開始日」から効力発生日後6か月を経過する日までの間、株式交付計画の内容その他一定の事項を記載した書面等を本店に備え置く必要があります。
また、事後開示としては、効力発生日後遅滞なく、株式交付によって譲り受けた株式の数等を記載した書面等を、効力発生日から6か月間本店に備え置く必要があります。
(6)株主の救済
「反対株主」は、他の組織再編等と同様、簡易手続による場合を除き、株式買取請求を行うことができます。
(7)債権者異議手続
株式交付親会社の債権者は、株式交付の対価が、株式交付親会社の株式以外の金銭等を含む場合、株式交付親会社に対し、株式交付について異議を述べることができます。その場合、株式交付親会社は、公告や知れている債権者への催告等、他の組織再編で求められる手続と同様の債権者異議手続を行うことが必要になります。
2 株式交付子会社における手続
株式交付制度は、実質的には株式交付親会社と株式交付子会社の株主との間の個別の合意に基づく株式譲渡といえるため、株式交付子会社における手続に関する規律は想定されていません。
【今後に残された問題点】
株式交付制度は、国内の株式会社同士の行為に限定されています。株式交換が国内の株式会社同士に限定される不利益は、株式交付制度においても未だ存続し続けていますので、グローバル化にどのように対応していくのかは今後に残された問題といえます。
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