ネットでたびたび話題になるのが、女子アスリートのユニフォームはなぜ露出が多いのかという問題です。たしかに、陸上などの場合は男子と同じ競技であるにもかかわらず、女子の場合はセパレート(ビキニ)タイプで肌の露出が多いケースがほとんどです。そのため、小中高生からプロにいたるまで、女子アスリートを性的な眼差しで撮影する行動がたびたび問題になっています。

 

 

また露出以外にもテニスやアイススケートやゴルフなどでは、女子はスカートを履くことが求められたりします。一体どうして、男女という違いだけで同じ競技であるにもかかわらず、こんなにもユニフォームに違いがあるのでしょうか。

 

 

 

 

 

男性学からみたスポーツをめぐる「女性の商品化」問題

なぜ女子アスリートのユニフォームは肌の露出が多いのかについて、考えるヒントになりそうなのが、高峰修のいくつかの論考(「女性アスリートのユニフォームと『性の商品化』問題」 「男性学からみたスポーツをめぐる『女性の商品化』問題 」)です。逆にいえば、調べてみた限り、なぜ女子アスリートのユニフォームは肌の露出が多いのかについて調べた研究は見つけられませんでした。

 

高峰修は「セクシーラグビールール動画」「女子プロ野球の美女9総選挙」「プロ野球における女性の始球式」などを分析し、「ワールドカップやプロリーグというホモソーシャルな場において、女性という存在はそもそも馴染まないか異質な存在である。そうした場に女性は受け入れられたが、その場に生じる違和感を緩和するために、女性はパロディ化されていた。さらに3つの事例における女性の表象には、異性愛主義を前提とする、女性に対する男性からの性的欲求、そして女性嫌悪が描かれていた。」と結論づけています。

 

 

 

 

さらに「現代の男たちはスポーツを通じて、 異性への性的欲求を自覚し、再確認し、あるいは実現しようとしていることになる。男たちがスポーツを通じて異性への性的欲求を実現しようとしている例として、始球式に登場した女性タレントが 男子中学生たちに取り囲まれている」とも指摘しています。たしかに、女性のアイドルやタレントが始球式に登場する場合、極端に短いスカートをはいていたり、大きく胸をはだけるスタイルでユニフォームを羽織っていたりしますよね。

 

服飾史的にどのような歴史的な流れで今の露出が多い女子アスリートのユニフォームが登場したのかは、わかりません。ただ、高峰修の論考にもとづけば、女子アスリートのユニフォームは、性の商品として女子アスリート自身と一体となって存在しているというふうにいえるわけです。

20世紀初頭のイギリスの女子スポーツファッション

好田由佳が「20世紀初頭のイギリススポーツファッション」(日本家政学会研究発表要旨集、2017)という研究をおこなっています。そこで好田由佳は、「19世紀末にローンテニスを楽しみだした女性たちは、当初は華やかなデイドレスを装いスポーツを楽しんだ。しかし、20世紀初頭になるとシンプルなデイドレスを装うようになり、テニスのためのドレスも登場する。オリンピックで女子の参加が認められたスポーツもテニスであり、その装いは白のドレスであった。」と指摘します。

 

好田由佳に従えば、同じテニスという競技であるにもかかわらず、なぜ女子はハーフパンツや短パンではなくスカート(スコート)を履かないといけない理由は、服飾史的にはドレス姿でテニスを楽しんだからということになります。とはいえ、だからといって「じゃあ女子テニスのユニフォームがスカートなのは仕方ないね」とは思えませんよね。

 

 

ユニフォームと身体意識と成績

University of TorontoのElizabeth Coxらが「The impact of athletic clothing style and body awareness on motor performance in women」という研究をおこなっています。そこでは、18歳から35歳の女性を対象にタイトで露出の高いスポーツウエアと緩くてカラダのラインなどが隠れるスポーツウエアを着た場合での、身体意識と競技成績について調べられました。

 

その結果、タイトで露出の高いスポーツウエアを着ていると成績が悪くなることがあきらかになったんです。その理由については、露出度の高いスポーツウエアを着ることで他者の視線が気になってしまい、競技に集中できないからではないかとされています。

まとめ

概観しただけですが、女子アスリートが露出の多いユニフォームで競技をしないといけない積極的な理由は見あたりません。むしろ、Elizabeth Coxらがあきらかにしたように成績が悪くなるわけですから、女子アスリートも男子アスリートと同様なユニフォームで競技をした方がいいということになります。
 
高峰修が指摘したように、女子アスリートのユニフォームが肌の露出が多いのは、男性が性的に楽しむ以外には理由はなさそうです。ダイバシティやLGBTQについて考えていけない今の時代、女子アスリートのユニフォームついても見直すときに来ているのでしょうね。