髪の黒染め義務、ツーブロック禁止、髪が肩に着いたら切るか結ぶ、スカート丈は膝下、カーディガンの着用禁止、体操服の下に下着の着用禁止、下着の色は白のみ・・・。

 

お気づきだろう。いわゆる「ブラック校則」だ。一般的にみれば生徒の人権や健康を害する恐れがあると考えられる不合理な校則を、そうよんでいる。

 

「ブラック校則をなくそう!」プロジェクトには、ほかにも多くの「ブラック校則」が載せられている。

 

  • パーマ禁止。「くせ毛届け」提出。承認のサインを生徒手帳に
  • ピアスは良いけど茶髪はダメ
  • 眉毛と髪の毛をいじってはいけない
  • 髪が肩に着いたら、二つ結び
  • 男子は丸刈り、女子は肩に髪がついてはいけない
  • スカートから膝が見えたらダメ
  • カーディガン禁止
  • 運動部でも平日はジャージでの登下校禁止
  • 夏服にリボンをつけてはいけない
  • リボンは結び目から8センチ以上の長さでなければならない
  • 自転車利用時の反射材付きタスキの着用義務化
  • ヘルメットをかぶらずに自転車通学したら自転車没収
  • 帰宅時、文房具店と図書館以外は立ち寄り禁止
  • カップルは一緒に帰ってはいけない
  • 通学は片道40分以上かかるのに、徒歩以外許されず、水分補給もダメ
  • 髪が濡れても拭いてはダメ
  • 遅刻者の給食は残飯
  • 暑くても顔や体をあおいではダメ
  • 給食の準備時間と最後の10分は、声を発してはいけない
  • 部活に強制入部
  • 眉毛の手入れ禁止
  • 自転車通学用ヘルメットは、事故で割れても卒業まで替えはない

法的根拠はない

校則の原型は、1873年の文部省正定「小学生徒心得」だといわれている。心得=道徳的規範ではあるものの、「参校は受業時限10分前たるべし」などと、学校の規則も同時に示していた。よそおいに関しては、「毎日よく顔手衣服等を清潔にして参校すべし」とある。学校教育に取り入れられた武士のよそおい観の影響か、この頃から授業を受けるときは衣服はきちんとするべきだと考えられていた。

 

その後、県や学校単位で独自の心得が作成されていく。しかしながら明治期から今日にいたるまで、学校が校則を定めないといけない法的根拠は存在しない。あくまで、各学校で定めた生徒に対する生活指導上の規律でしかない。 そのため、「ブラック校則」における裁判において却下もしくは請求棄却となる理由には概して、教育は人格の完成を目指すため、生徒を規律する校則は是認されるというものが多い。

 

なお、学説的には、「保険契約のように学校(保険)に入るためには生徒(加入者)は、学校(保険)が決めた契約内容(校則)を無条件で従わないといけない」という附合契約説、「学校が提供するサービスや施設を利用するための校則(利用規則)は学校(設置者)が定め、生徒(利用者)とのあいだには特別な権力関係が存在する」という特別権力説、「在学関係は学校と生徒との間の契約によって成立する」という在学契約説などがある。

 

ちなみに、フランスでは校則は学校と生徒の契約である。校則は生徒手帳に記載され、入学当初に説明がされたあと、本人と保護者の署名が求められる。校則の改廃は教職員、父母、生徒の各代表による評議会で行うと法令で定められている。

時代にあわない

校則の不合理さは、時代や地域によって変化する。例えば、明治期では「稗史小説等の書を読むべからず」とある。読書を奨励する今とは真逆だ。

 

一般的には、「ブラック校則」は1970年代後半の「管理教育」で生まれたと考えられている。だが、子どもの自主性・自発性・主体性の意義を称揚した新教育下の大正期においても髪型や服装は決められ、服装検査が行われていた。

 

外見が内面を規定するため、教育的によそおいは大事だといえなくもない。だが、誰もそれは指摘しない。2020年の東京都議会で教育長は、外見が原因で事件や事故に遭うケースがあり、生徒を守るために髪型を決めていると発言した。ある大阪の高校は、茶髪の生徒が多いと学校の評判が下がると心配し、評判を守るために黒染めさせていると吐露したこともある。

 

 

そういえば、「校則でポニーテールが禁止されているのはなぜだろう」と、鹿児島市の高校に通う女子生徒が問題提起したことが以前に話題となった。女子生徒は中学時代の担任の女性教員に尋ねたところ、返ってきた答えは「男子がうなじに興奮するから」だった。

 

 

校則とは一体なんなのか、誰のためにあるのか、なぜそれが禁止されているのか。改めて問いたい。

 

(繊研新聞、2023年5月16日)