高田龍の《夢の途中》 -8ページ目

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。






    宿命〜壱


 雲巌寺の老住職に教えられた、不思議な人の繋がり

それは、一概に信じられないことかも知れないが、別の視点で捉えると、なるほどという事にもなることを

由理恵も浩一も感じていた

雲巌寺に待たせていたタクシーで由理恵の実家に帰った二人は、家人に挨拶を済ませて、今日迄の事を思い返してみた。


二人に縁のある人間達を思い浮かべてみると、不思議な事に気がつくのだった。


たとえば、馬淵幸四郎の遠い親戚に飲食店の経営者がいるが、この人は自分の経営する店のひとつでホステスに横恋慕した客が刃物を振り回したのを止める為に争い結局、正当防衛が認められたが、相手を殺している。

それ以外にも、馬淵創業の人間達の行動などが、明らかに江戸末期の出来事に酷似しているとは思えないだろうか。

城所浩一は、心の中で不可思議な類似を、そして人間の持つ《業》というものの

恐ろしさを感じていた。


この先に何が待っているのだろうと思えば思うほど、胸に広がる緊張感が抑えられないでいる自分になんとも言えない高揚感に包まれていた。



         続く。