題名をそろそろきめなくてはいけない『小説』 | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。


序〜五

『市長、概略を如何っただけでも素晴らしい話しだと私は思いますが』
防人は率直に、自分の感想を伝えた。
市長は、窓越しに海を眺めながらため息を吐く。
『対応に困るという事って何があるんですか』
市長は黙っている。
『今は躊躇っている時では無いんじゃ無いでしょうか、私はそう思いますが』
防人勇人は自分の気持ちを率直に市長に告げた。

『この海には、君の知らないことがたくさんあるんだよ』それだけ言うと市長は口を閉ざした。
防人は市長の言葉を待ったが織田からは取り立てて新しい話は無かった。
防人はなんだよわざわざ呼び出すような話もないじゃ無いかと口の中で愚痴ってから、これで戻りますがと言った。
市長は言葉を継いだ。
『悪い悪い防人君、話はまだあるんだよ。東京から顧問弁護士が三日後に来ることになっているんだ。この話の決着がつくまで君は私の秘書的な立場でやってもらいたい』
市長の織田は防人の顔を覗き込むように見て、防人の反応を待っているようだった。
『それって正式な辞令ということですか』
織田は、そう思ってくれて構わない自分に任せてくれれば待遇面ももちろん考えている、動きもだいぶ活発になると思うので君専用の車も用意すると言った。
防人は深く礼をし、市長室を後にした。
何かが動きはじめたのを、そのドアが閉まる時に防人は感じていた。

誰が考えてもこの街にとってまたと無い話、それを躊躇する織田市長、理由は解らない、とにかく三日後を待とう。
そう決めてエレベーターに乗った。