長い時間が過ぎて、九十九一は七十の峠を見据える処まで来ていた。
彼は、ここ数年の間、いつもと言えるほど自分の残りの人生に生きてきた意味が待っているのだろうかという思いに苛まれていた。
小学校に上がる直前のある日、彼はタクシーにはねられている。
幸いに大事には至らなかった。
中学生の時には、まったく原因の解らない高熱が何日も続き、麻疹が全身を覆い尽くし、治癒してからも、原因は解らなかった。
その後の数年間はな健康であるには何事もなく過ぎたと言える。
基本的に彼は健康だった。
健康というよりも頑健だった。
その彼が二十歳を過ぎて直ぐに人生二度目の交通事故に遭遇。
二度目は大事故だった。
彼は生死の境を送る行ったり来たり。
美しいお花畑と、見たこともない色の空も見た。
喉に気管切開の傷も残った。
しかし、医師の診断をことごく覆し、彼は生きて病院を出る。
退院の日、彼を院長室に呼んだ病院長は言った。
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『この病院の中で、君が生きて此処を出て行くと思っていた人間は私を含めて、一人もいなかった。医学の勝利でもなんでもない。これは、奇跡だ。』
その後も、九十九一は、高度六百メーターから墜落して無傷だったり、房総沖で飛び込んだ処にホオジロザメが居たり、死んだとしても不思議ではない場面に何度となく遭遇し、その度に、生還を果たしてきた。
そんな彼の心が、今一番気にかけているのが、自分の使命が何なのか、ということだった。
そして彼は、自分自身の人生に何の意味があるのかを知る。
それは、彼が想像した範疇を飛び越えていた。