熊谷の夜。
駅の階段を降りきった辺りの所に佇む、初老のサラリーマン。
マフラーで首の周りを保護し、それでも物足りないのか、コートの襟を立て寒そうにして、家族の迎えでも待っている様子。
その手には、花束が…。
忘年会のシーズン、花束には何の意味が有るのだろうか、奥方へのプレゼントか、それとも娘?
あれこれと思いを巡らせていたとき、私の脳裏に浮かんだシチュエーション。
そうか!
彼は、永く勤めた職場を年内で退くのだ、そして今夜が、彼にとって最後の忘年会。
職場の部下や同僚から永年の労を労われ、真心の花束を渡された、きっとそうだ。
勝手な妄想の中で、私は、見知らぬサラリーマンの前を通り過ぎ、10m程も離れたろうか、歩みを止めて振り返り、胸の中で声をかけました。
『長い間、ご苦労様でした…』
