不動産の購入を検討している人から、最近よく同じ質問を受ける。
「今、家を買っても大丈夫でしょうか」。
背景にあるのは、住宅ローン金利の上昇である。
結論:見るべきは「借りられる額」ではない
結論から述べる。
見るべき数字は「いくら借りられるか」ではない。
「金利が上がっても、無理なく払い続けられる金額はいくらか」である。
この二つは、似ているようでまったく違う。審査に通ることと、暮らしが成り立つことは別の話である。
データで見る金利上昇
2026年6月、日本銀行は政策金利を0.75%から1.0%に引き上げた。1995年以来、31年ぶりの水準である。
これを受け、主要行の多くが2026年10月をめどに、変動金利の基準金利を0.25%程度引き上げる見通しである。
現時点で、変動金利は主要行で年0.9〜1.1%台まで上昇している。
フラット35など全期間固定金利も、長期金利の上昇を背景に年3%前後まで上がってきた。
住宅金融支援機構の調査(2026年1月)では、住宅ローン利用者の75%が変動金利を選んでいる。
多くの銀行には、金利が上がってもすぐには返済額に反映されない「5年ルール」がある。
ただし、返済額が変わらないだけで、利息の負担そのものは増えている。元本の減りが遅くなり、完済までの総支払額は確実に膨らむ。
具体例:返済額はどう変わるか
数字で確認する。借入3,500万円、35年、元利均等返済というモデルケースで試算する。
金利1.0%の場合、毎月の返済額は約98,800円である。
これが1.5%に上がると、毎月約107,200円。差額は月8,400円、年間で約10万円の増加になる。
2.0%まで上がると、毎月約115,900円。差額は月17,100円、年間で約21万円の増加になる。
これは、元本を1円も増やしていない。金利の上昇だけで生じる増加額である。
例えば、Aさん夫婦(40代・共働き)が3,500万円を変動金利1.0%で借りたとする。
審査には問題なく通る。しかし、10年以内に金利が2.0%まで上がった場合、年間約21万円の負担増を、教育費や修繕費と同時に受け止めることになる。
借入時点で、この増加分を吸収できる家計かどうかを、確認しておく必要がある。
周辺費用も同時に上がっている
返済額だけを見ていても、実際の負担は測れない。物価高は、住宅にまつわる周辺費用にも及んでいる。
マンションであれば、管理費・修繕積立金は築年数とともに見直されるのが通常である。
資材費・人件費の高騰を受け、大規模修繕そのものの費用も上昇傾向にある。
戸建て・マンションを問わず、固定資産税は評価替えのたびに見直される。
火災保険料も、自然災害の増加を背景に、更新のたびに上がる傾向にある。
これらは金利とは別に、確実に増えていく費用である。返済額の試算に含めずに購入を判断すると、後で誤差が生じる。
注意点
ここで誤解してはいけないことがある。
住宅ローンの審査に通ることと、その後の生活が無理なく成り立つことは、別の話である。
審査は「今の金利」で行われる。返済計画は「この先の金利」で立てるべきである。
「5年ルール」「125%ルール」があるから安心、と考えるのも早計である。返済額が抑えられている間も、利息は着実に積み上がっている。
まとめ:購入者が取るべき行動
購入を検討する際は、次の3つの試算を必ず行うべきである。
一つ、現在の金利での毎月の返済額。
二つ、金利が0.5%上がった場合の返済額。
三つ、金利が1.0%上がった場合の返済額。
この3つを並べ、それでも無理なく払えるかどうかを判断する。
借りられる金額で家を選ぶのではなく、この先の金利でも払える金額で家を選ぶ。
それが、金利のある時代における、購入者の基本姿勢である。
出典:日本銀行 金融政策決定会合資料/住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)」/金融庁 住宅ローン利用者向け情報
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